リラックマは、2003年に誕生してから15年にわたってこどもから大人まで多くの人に親しまれてきたキャラクター。

1話約10分、13話という短いアニメだが、ストップモーションアニメの繊細な動きと、カオルさんたちが暮らす家や街の四季折々の風景が贅沢な時間をつむいでいく。その美しい風景の中で生きるカオルさんの声を担当した女優・多部未華子と、リラックマたちの日常を描いた脚本家・荻上直子に話を聞いた。
多部未華子、同僚に辛辣な一言を言われてしまうカオルさんに共感
───『リラックマとカオルさん』への参加が決まる前は、リラックマはどんなイメージのキャラクターでしたか。
多部未華子さん(以下、多部) リラックマを好きな友だちが多く、馴染みのあるキャラクターでした。
荻上直子さん(以下、荻上) 自分でグッズを持つということはなかったのですが、脚本を担当することが決まってから背中にファスナーがついているとか、内側の布は水玉模様なんだとかを知りました。可愛いだけじゃない、おかしな部分があるキャラクターなんだって。脚本も、そのおかしさと可愛さのどちらも感じてもらえるようにと考えました。
───荻上さんが書いた脚本を、多部さんが演じているのを見ていかがでしたか。
荻上 もうすごくぴったりで! 本当にぴったりだったので、多部さんが演じてくださったことで、さらにアニメーションの質が上がったと感じました。
───カオルさんのお洋服がとても素敵だなと思ったんですが、プロの衣装スタイリストがついているそうですね。
多部 そうだったのですね! カオルさんがbeautiful peopleという実在のブランドの洋服が好きで着ていることは、私も知っていました。今日の私の衣装も、beautiful peopleさんで揃えていただいています。
荻上 すごいこだわりですね。
多部 本当にそうですね。beautiful peopleさんは高級なイメージがあって。カオルさんは普通のOLだけど結構良い服を着ているねって、少し現場で盛り上がったことがありました。
荻上 カオルさんは、ネットショッピングをしすぎてかなり高額のクレジットカードの請求が来ていたこともあるし、お金にルーズなところがありますね(笑)。
───アニメを見る女性が共感できるような短所も持っているカオルさんですが、多部さんが共感できたのはどんな時でしたか。
多部 カオルさんが、同僚に辛辣な一言を言われてしまった時です。その言葉がグサッと刺さり、少し間をおきつつ平静を取り繕うところに「ああ、分かる、分かる」と思いました。
荻上 多部さんでも、誰かに辛辣なことを言われるときがあるんですね。意外!
ふたりにとっての「リラックマ」はペットの犬や猫たち!?

───ほんわかしたリラックマとの暮らしと、カオルさんの会社でのちょっと心折れそうになる場面とのコントラストがあって、働く女性は胸にグッとくるものがある作品だと思います。
荻上 会社での辛辣な言葉とか、女性が落ち込む場面って、世代が違っても誰もが経験することだと思うんです。落ち込んだときにリラックマがいたらどうだろう? と想像しながら書きました。
───リラックマたちは、作中ではしゃべりません。会話を描くときにどんなことに気を配りましたか。
荻上 最初にプロデューサーと相談して「しゃべらない設定にしよう」と決めました。声を出さない相手との会話を描くのは初めてだったので戸惑いましたが、回を重ねるごとになんとなくわかってきた感じです。「あ、自分も猫に対してこんな風に話しかけることがあるな」と気づいたりして。
多部 目が三角になったりタレ目になったりと表情豊かなので、私も演じていて困るということはありませんでした。「話さない相手との対話」という認識すらなかったくらい、表情で伝わるって良いですよね。

───表情も、指先やスカートの裾、風景などの動きも繊細なストップモーションアニメですが、その魅力は何だと思いましたか。
多部 最初に見た時は、これだけ緻密に細かい動きや表情を作れるんだという驚きがありました。実写でもなく、アニメですとも言い切れないとても絶妙なバランスが、カオルさんというOLの日常をリアルにしているのだと思います。この作品を見ること自体が、とても贅沢な体験になるのではないでしょうか。
荻上 コンピューターではなく人が手で動かしているぶんだけ、すごく愛情を感じて味のある作品になっていると思います。多部さんの言うように緻密で繊細な動きのひとつひとつに、作った人の愛情みたいなものが写っている気がしますね。
───リラックマは15年という長い年月をたくさんの人に愛されて生きてきたキャラクターです。もしこのアニメも続編があって、続きが見られることになったら、どんなことをやってみたいですか。
多部 他にもキャラクターが増えたら良いなと思います。
荻上 言ってくれれば作りますよ(笑)。
多部 私は、カオルさんが失恋だったり何かでどん底まで落ち込んでしまったりした時の、リラックマ達の寄り添い方を見たいなと思います。話すことも、出来ることも限られている中で、どんな風に励ましてくれるんだろうと。
荻上 カオルさんに彼氏ができたら、この子たち邪魔になっちゃうのかな。
多部 そういう状況も気になります! もっと色々な行動の引き出しがありそうですね。

───おふたりには、カオルさんにとってのリラックマのような存在って何かありますか。
荻上 私は、もう猫を3匹飼っているのでだいたいカオルさんと同じ。
多部 私も犬を飼っています。2kgくらいの小さい子です。独身女性はペットを飼ってはいけないという噂を聞いていたけれど、飼ってしまいました。
荻上 落ち込んだときはペットが寄り添ってくれますよね。
多部 はい。もう6〜7年一緒にいる大事な家族です。
───最後に、リラックマのファンや、この作品を見てファンになるかもしれない方へメッセージをお願いします。
荻上 カオルさん世代の女性に限らず、誰もが共感できる作品になっていると思います。楽しんで見ていただけたら嬉しいです。
多部 カオルさんが初めて登場することで驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、リラックマファンの方を絶対に裏切らない世界になっていると思います。大人もこどもも見て楽しい作品になりました。ぜひ、『リラックマとカオルさん』を見て楽しい時間を過ごしていただきたいです。
(インタビュー・構成:むらたえりか)

【多部未華子】
ヘアメイク:赤松絵利(ESPER)
スタイリスト:轟木節子
【荻上直子】
ヘアメイク:笹浦麻記(emu)
作品情報:『リラックマとカオルさん』(13話・各11分/4K対応)
【配信】 2019年4月19日(金)より全世界独占配信
【キャスト】
多部未華子、山田孝之、ほか
【スタッフ】
監督:小林雅仁
脚本:荻上直子
音楽:岸田繁
主題歌:くるり「SAMPO」
クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ
製作著作:サンエックス株式会社
監修:サンエックス“リラックマチーム”
アニメーション制作:ドワーフ
【Netflix作品ページ】http://www.netflix.com/rilakkumaandkaoru
【リラックマごゆるりサイト】 http://www.san-x.co.jp/rilakkuma/
【リラックマとカオルさん特設サイト】http://www.san-x.co.jp/rilakkuma/rilakkuma_and_kaoru/