のん、元GO!GO!7188アッコ&ユウと憧れ対談 「疎まれても自慢したい(笑)」

女優、そして“創作あーちすと”として活躍する「のん」が、6月12日に自身の音楽レーベル「KAIWA(RE)CORD」よりミニアルバム 『ベビーフェイス』をリリースする。

収録される「やまない ガール」「涙の味、苦い味」の2曲は、のんが学生時代にバンドでコピーし、思春期に多大な影響を受けたGO!GO!7188(2012年2月に解散)のアッコ(Ba,Vo)とユウ(Gt,Vo)が楽曲を提供し、レコーディングにも参加。

その状況を、のんは「心臓が暴れだしそうなくらい嬉しかった...! 夢のようなレコーディングでした」と明かしている。

今回、のんが憧れてやまないアッコ、ユウとの対談が実現、2回に渡ってお届けする。
対談中ののんをふと見ると、「ふふふ」という心の喜びの声が漏れ聞こえてくるような、ピュアな少女の表情をしていた。
(取材・文/今井智子、リード/編集部、撮影/南賢太郎、ヘアメイク/菅野史絵[クララシステム])

もともと、彼女が選ぶ言葉のセンスが面白いなぁと思っていたんです(アッコ)


――お二人は以前にもお会いになっているんですか?


アッコ
:2回目ですね。昨年、のんちゃんが福岡でライブをやった時に見せてもらって。

のん:はい、そうなんです。私、中学生の時、GO!GO!7188のコピーバンドをしていたので、アッコさんに会えて嬉しくて。

アッコ:どんな曲をコピーしてたの?

のん:「ジェットにんじん」とか「C7」とか。あと、(持参したCDの山をひっくり返しながら)「雨上がりアスファルト新しい靴で」とかやってましたね。

アッコ:嬉しいな。自分がGO!GO!をやっていた時、「GO!GO!聴いてバンド始めました」とか「楽器買いました」とか言われるのが一番嬉しかったから、のんちゃんもそうだったら嬉しい。

のん:ホントにそうです。バンドを始めて、一緒にやっていたベース&ヴォーカルの子がGO!GO!を教えてくれて、「うわーっカッコいい~」ってなって、そこからです。
だから、今その子に教えたい、アッコさんに会いましたよって。

アッコ:(笑)。のんちゃんが歌ってたの?

のん:私は2曲ぐらい歌ってたんですけど、メインはベースの人でした。

アッコ:バンドで演奏したのは学園祭とか?

のん:じゃなくて。部活でやっていたわけじゃないんです。私はわりと田舎の出身なんですけど、そこの地域のお祭りとか、イベントとかでやってました。今、当時の写真見ると恥ずかしいですねー。(持参したアルバムを見る)

アッコ:見たいー。

のん、元GO!GO!7188アッコ&ユウと憧れ対談 「疎まれても自慢したい(笑)」


のん:この人が、マサヤンていうんですけど、めちゃめちゃお世話になったおじさんで、町のホールの倉庫に楽器をいっぱい保管していて、子供達に無料で貸し出してくれたんです。それで私もバンドをやっていて。そのホールで、まさやんが『あっとほうむこんさあと』というのを開いたりしていて、そこで演奏したりしてました。

アッコ:(写真を見て)これ? かわいい~。


のん:この頃、ポチャポチャなんです(笑)。『少年の主張』っていう、会議室でやる弁論大会みたいなところで、私たちバンドで出てGO!GO!の曲をジャカジャカやったり。その時「ジェットにんじん」とか「C7」とかも。

アッコ:バンドも少年の主張だもんねえ。そんな風にGO!GO!のことを好きでいてくれたなら嬉しいですね。私は『あまちゃん』を家族で観ていて、紅白はホントに号泣しながら観て。『あまちゃん』が終わったらホントに“あまちゃんロス”でぼんやり、というぐらい大好きで。そのあとに、テレビでのんちゃんがギターでGO!GO!弾いてたよって、友達からすごくいっぱい連絡がきて。私もテレビで観て。たぶん私が観たのは「ジェットにんじん」のソロを弾いていたと思うんだけど。

のん:あ、そうです。

アッコ:それ、本人と私とユウちゃんとターキーしかわからないよねっていうぐらい(笑)、ヘロヘロなソロを弾いているのを観て、めっちゃ感動して。


のん:あの時は練習を怠っていたから、めちゃ下手くそでした……悔しい!

アッコ:でもよかったよ、あれは。

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――今回、のんさんのニューアルバムにアッコさんとユウさんで曲を提供されているんですが、のんさんからのリクエストで?


のん
:いえ、サプライズでした。

アッコ:サプライズだったの?

のん:お願いしたいとかじゃなくて、そんなことがあったら絶対にいい……みたいな、夢を語っているみたいな話の中で。スタッフの、サンタさんが(笑)。

アッコ:なるほど~。両方のサンタさんが話を繋いでくれたんだ。

のん:それで、曲を書いていただけることになって、福岡でお会いした時にお話ししたのが、「涙の味、苦い味」になって。

アッコ:のんちゃんがイメージを書いたメモというか、わーっと書いた文章をもらって、お話も聞いて。それがこの曲の歌詞に。

のん:自分が、GO!GO!さんをコピーしていて、毎日学校とか、おうちのお手伝いとかそっちのけでバンド漬けって感じだったので。バンドは私の青春そのものみたいな存在だったので、その時のことが残ったらいいなと思って、お願いしました。そしたら、めちゃめちゃ素敵な詞で、嬉しかったです。
「こういう風になるんだ!」って。

アッコ:みんなそれぞれ青春のヒーローっているでしょ。のんちゃんの書いたメモからそんなことを感じたので、自分がGO!GO!をやっていた頃のことを思い出しながら、いろいろ繋がってるんだなと思いながら書いたの。

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――どんなメモが、のんさんからアッコさんに渡ったんでしょう。


のん
:それはちょっと(笑)。

アッコ:見せて大丈夫なの?(笑) もともと、彼女が選ぶ言葉のセンスが面白いなぁと思っていたんです。昔のオフィシャルサイトのタイトルが「くるぶし」で、それを知った時に「あれ?」って思った。「あれ? 知ってるぞ、この感じ」って。自分の中にもある感じだなと。それがすごく印象に残っていて。レーベル名の「カイワ・レコード」とかも。そういうところ、世界観とか、勝手に親近感を抱いていたので、イメージが湧きやすかった。
それに、もらったメモの影響もあったから、この詞は共作だと思ってます。

のん:うわー、もう嬉しくて心臓が暴れまわってます(笑)。アッコさんの歌詞は、カッコよくて、胸の奥にしみ入る痛みもこもってるけど、なんていうか、おとぼけるところがあったりとか、そういうところがすごく好きです。

アッコ:あと、話した時に印象的だったのが、最後のライブで力を出し切って、終わった後にアンコールが来て、やったんだけど力尽きていてボロボロだったとか。

のん:そうなんです、演奏がひどかった。

アッコ:その悔しさって、今の自分がその時の自分に、大丈夫だよって言ってあげたい、みたいなことかなと私は受け取って。それがすごく印象的だった。自分の中にもそういうのあるから、すごくわかる部分でもあるし。「17歳」とか、この年齢になってこのワードを書くと思わなかったけど(笑)。

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のん、元GO!GO!7188アッコ&ユウと憧れ対談 「疎まれても自慢したい(笑)」


学校が終わったらすぐに逃げて行って、GO!GO!さんの曲を練習していた(のん)


のん:もう1曲の「やまないガール」は、「ベビーフェイス」って言葉にハッとして、すごいグッときました。アルバム・タイトルはここから取りました。「ベビーフェイス」って入ってるのに、トゲがあるっていうか、攻撃的なのが面白いなと思って。
ふふふっ。好きです。

アッコ:「ベビーフェイス」というのは、真っ先に入れたかった言葉。こうあってほしい、みたいな感じだけど、それが喜んでもらえてよかった。曲のタイトルになった「やまないガール」は最後の最後に絞り出たんだけど、鳴り止まないとかの「やまない」と「病まない」の意味で。

のん:曲の奥が深いので、カッコよく歌いたいなと思って、研究しました。

アッコ:そう? 良い感じで歌ってると思ったけどな。ユウちゃんのメロディは難しそうだから、よく歌ってるなと思った。私も昔、GO!GO!の曲をカラオケで歌ったことがあって、めちゃくちゃ難しいなと思って(笑)。

のん:やった! 「変わることを恐れない」というところもすごく好きなんです。でも、好きって言い出したら、全部言っちゃいそう(笑)。「涙の味、苦い味」でも「電源入れる私がやっとONになる」ってところが、めちゃめちゃ好きです。中学の頃、両親が共働きで、家のご飯当番だったんですけど、毎日作らないといけないのが本当に嫌で、ギターを弾きに行って、そこに逃げ込むのが毎日、みたいな感じになっていて。その時を思い出す。ご飯作るよりこっちの方が、私のスイッチがONって。その時の時間がなかったら、今はスッカラカンだなっていうぐらい、バンドをやるので詰まっていたので。その時の熱とか楽しさとか、あってよかったなって。学校終わったらすぐに逃げて行って、GO!GO!さんの練習してたので。

アッコ:(笑)。

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のん:今は、そんな気分に帰らないように(笑)。ファン目線になっちゃうから。

アッコ:スタジオでは、そんな感じ全然なかったよね。

のん:もう、アッコさんが「おはようございます」って入ってこられた瞬間から「うわーっ」てなってました(笑)。

アッコ:そうなの? レコーディング中は、音を出したら、もうスッと、見ているところは一緒なんだなって感じがしたけどね。それまではみんなソワソワしていたと思うんだけど、初めてだし、リハもなかったから。でも、せーので音を出したら……ねえ?

のん:よかったです。私は、アッコさんの一挙手一投足を遠くから眺めていました。一緒にレコーディングさせていただいた時も、アッコさんのベースめっちゃカッコよくて。リズムとってる姿も「あ、アッコさんだ!」って。あんまりじっと見ちゃいけないかと思って、見ていないふりして視界の端に集中させて見て。ストーカーみたいなんですけど(笑)。

アッコ:(笑)のんちゃん、私とユウちゃんの間に挟まれてたからね。

のん:自分のことも怠っちゃいけないから、ファン目線を押さえ込んで、ギターを弾くのに集中しながら、見ていないふりをしながら、「これこれ、アッコさんだ!」と興奮してました。近くで弾く姿を見れた満足感で、わけがわからないぐらい嬉しかったです。

アッコ:(笑)。

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のん:自分がGO!GO!の二人と一緒にギター弾いているなんて、ファンのみなさまに申し訳ないって思うぐらい、貴重な体験をしました。疎まれても自慢したいです(笑)。

アッコ:のんちゃん、音楽活動をすることで、何か変化があった?

のん:女優1本でやっている時は、セリフがあったりして、役を通して表現するということだったんですけど、音楽は自分から直で出さないといけないので。中学生の頃は楽しいというだけで突っ走っていたんですけど、今は音楽でしか言えないことを言えて清々しいというか、気持ちのいいことなんだなと改めて実感しています。役を介して自分の解釈を込めるのは、楽しい作業なんですけど、それとはまた違った開放感があって。音楽でしか感じられない感覚だなと思いました。前より、五感が解放されている気がします。そうですね、例えば今私はブンバボンにハマっていて。以前の私だったら、ブンバボンにハマる許容範囲なかったと思うんですけど(笑)、今は音楽のおかげで、様々な方面に幅が広がりました。

アッコ:ブンバボンて、NHK『おかあさんといっしょ』でやっていた体操の歌ね。そのお兄さんはこの3月で卒業されました(笑)。

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のん:私もまだブンバボンのこと、わかってないんですよ。なんだろ?って疑問を抱えたままなんですけど、そんな体操も楽しめるような器ができた(笑)。わかりにくいかもしれないのですが、今思いつく例えはそれぐらいしかない……。そんな感じです。自分の楽しいと思える枠が広がった気がします。あと、役を介してない時に自分の気持ちを話すのが恥ずかしくて、自分がどうやってそこにいたらいいかわからないみたいな戸惑いがあったんですけど、こうやって歌詞に書いたり曲にのせたり、自分の思っていることを表現するのが楽しくなりました。さっきメイクルームでアッコさんと、自分の作った曲をステージでやるって、相当狂ってるよねって(笑)。相当恥ずかしいことしてるなって思うんですけど、そこが楽しい、の域に慣れてきて、その感覚を得られたのは気持ちがいいです。

アッコ:のんちゃんが音楽を始めて、しかもそれがバンドだって知った時に、そこはすごく感じたんですよね。ただ歌を歌いたいだけじゃないんだなって。そこがないと、バンドという手段にはならないだろうなと思ったから。「やまないガール」の歌詞は、そこをすごく意識して書きました。女優さんできちんと確立している中で、わざわざバンドをやるんだという驚きが、バンドをやっている身としては、すごいなと思って。

のん:そうなんですか?

アッコ:見せ方として、歌いたいんです、ということだったら、もっと綺麗におさまるじゃない? でもそうじゃなくてバンドっていう手段は、本人の意思なんだろうなってすごく思ったし。そこをやっていくんだ、すごいなって思った。ライブを初めて観た時も、そこを一番感じて。なんでバンドとかロックとか、そういうところだったのか、というのがすごくわかったから、カッコいいなと思いました。

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のん:嬉しいです。音楽やりたいと思った時に、バンドをやりたいというのが先にあって。中学の時の楽しさが忘れられず、でも今バンドをやるなら曲を書かなきゃと思って。のんになってから初めて曲を作ろうと考えて、1曲できて、そこから何曲かバーってできて。これを発表したいと思った時に、KAIWA(RE)CORDを発足して、CD出して「のんシガレッツ」を組みました。

アッコ:バンドって、面倒くさいけど、音を出したら全部吹き飛ぶからねー。

のん:そうですよね! あの、私、アッコさんが私のことをそういう風に思ってくださっていたことがめちゃくちゃ嬉しいです。「やまないガール」のような曲を書いてくださったのが、嬉しくて。「こう見られてるんだ」みたいなのが。私、言葉も拙いし、ぼやーっとしてるので(笑)何考えてるかわからないみたいに思われちゃうんですけど、今のバンドを組む話もそうだし「本当の私を知らないくせに」とかっていう詩を当てられるのが、意外だったというか、こういう攻撃性のある歌詞をもらったのにびっくりしました。実際、やまないガールどんぴしゃ!って感じなので、嬉しかったんです。

アッコ:よしっ!(笑) のんちゃん、すっごく可愛いじゃないですか。可愛いオリンピックあったら日本代表みたいなイメージの子が、バンドを始めたっていう衝撃が、私の中でこういう感じになった。ちょっと待って、可愛いだけじゃないからね、みたいな感じがすごくして。ただ可愛いだけじゃねえ、10年で終わるから(笑)。

(取材・文/今井智子、撮影/南賢太郎)

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