清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る

清水翔太/6月26日に配信シングル『Sorry』をリリース


自身の公式インスタグラムで突如リリースすることを明かし、ファンを驚かせた清水翔太の新曲「Sorry」。6月26日にデジタル・シングルとして配信されたこの曲は、最新アルバム『WHITE』以来、1年ぶりの作品発表となる。

その間、アルバムツアーを行い、RIRIやAK-69の楽曲にはソングライティングと客演で参加、V6にも楽曲を提供するなどしていたが、リリースが1年も空くのは10年以上のキャリアで初めて。その期間に制作されたという「Sorry」は、「WHITE」で見せたサウンドとは異なる質感に仕上がっている。

今、翔太の中でどんな変化が起きているのか。新曲の制作工程を語ってもらうと同時に、最近のツイートからも紐解いてみることにした。

取材・文/猪又 孝  撮影/黒羽政士
スタイリング/戸倉祥仁(holy.)
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)

『WHITE』をリリースしてからの1年は、楽しいことを求めることに必死だった


清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る

――『WHITE』から1年ぶりの楽曲リリースですが、この1年はどんな期間でしたか?


翔太
:毎日を楽しく生きることに精一杯っていう感じでした。

――毎日を楽しめてるなんて素敵じゃないですか。


翔太
:そうなんですけど、それがクリエイティブとイマイチ結びついてない気がして……。今はもう旅にでも出て、「コレは音楽にしなきゃな」っていう刺激を受けてきた方がいいんじゃないかって思っているくらい(笑)。楽しいことを求めることに必死っていう感じでしたね。

――新曲「Sorry」は、いつ頃、どのように制作に着手したんですか?


翔太
:取り立てて何も考えず、いろいろ作っていく中で、唯一いい感じに仕上がった曲っていう感じです。曲のカケラみたいなのはいっぱいある中で、唯一、ズバッと最後までいけた曲っていう。できたのは2カ月前くらいだったかな。

――「Sorry」を聴いたときに、『WHITE』で見せたヒップホップ色は抑えめで、それ以前の清水翔太感が出ているように感じたんです。『WHITE』は自分の中では100点満点のアルバムだけど、リスナーにとっては難解かもと話していました。その点をどう考えて制作に入りましたか?


翔太
:新曲は『WHITE』の延長線にはないと思います。『WHITE』における自分の満足度はかなり高かったんだけど、リアクションにおける満足度は結果的に低かったんです。だから、そっちのリアクションを今は求めている感じかな。トラックの音色選びにしても、歌詞の言葉選びにしても、迷ったらみんなが「いい」って思いそうかなっていう方を選ぶようにしてる。

――それは「迎合」ではないんですか?


翔太
:迎合する気はないけど、“理解されなきゃ意味がない”というのは間違いないだろうなと思うから。理解されなきゃというか、「いい」と言ってもらえないなら自分が気持ちよくない。『WHITE』は完全にそこを意識してなかったから。

――『WHITE』はエゴ剥き出しだった。


翔太
:『WHITE』を出して「ヤバイっすよ、アレは」「マジ最高傑作ですよ」とか言われることもあって、それは嬉しいんだけど、もうちょっと大きい流れの中での評価がないと嬉しくないというか。

――自分のエゴやクリエイティビティを大事にしながら、わかりやすいとか伝わりやすいものを作るっていう。


翔太
:そう。今の課題はそこかなという感覚があります。選択肢がひとつしかないときに、その選択をやめてでも他のモノをやるということはしない。でも、自分の中に「こっちの方が伝わりやすいかな」とか「こっちの方がいい曲だと理解してもらいやすいかな」っていう選択肢があるなら、そっちを選んでいきたいっていう感覚が今はすごく強いから、それが色濃く反映された曲かなとは思います。

――その感覚が今回の曲で表われたと思う部分は?


翔太
:コード感とか、テーマになっているイントロの音とか。そういうところはキャッチーだなと自分でも思います。

――イントロはメランコリックでありながら清涼感もあって、ちょっと懐かしい翔太の感じがしました。


翔太
:たぶん最初からそこを無意識に狙っていたんだろうなと。

人に聞かせたときに伝わりやすいものっていう方に自分の感覚が向いている


清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る

――メロディーの作り方も「ラップのフロウ」というより「歌」に近い印象を受けたんです。歌い方もダルくラップする感じじゃなくて、特にサビはくっきりはっきり歌っている。自然とそうなったんですか?


翔太
:自然ではないかな。さっきの話に戻るけど、すべてが今目指しているものに近づけるためにそうなっていったっていうこと。そのときにハメていく型が最初から自分の中にあるんですよ。歌もメロディーも歌詞も全部そこに向かっていったっていうことかな。

――細かい話ですが、今回のミキシングは以前に比べてボーカルを前面に出していますか?


翔太
:ボーカルはいつもより強く出してますね。それも自分の中の型がそうなんだろうな。今回は今までと比べるとカリッとしていて、高音を出してる。その辺も、人に聞かせたときに伝わりやすいものっていう方に自分の感覚が向いているからだと思います。

――歌詞には大切な人を失ったときの男の気持ちがわかりやすく綴られていますね。


翔太
:ですね。自分を客観視すると、清水翔太が書く歌詞のいちばんの強みって、女の子から見た男の弱さとかカッコつけたがるところ……そこが女の子から見て可愛く思えたり、愛しく思えたりするっていうところな気がするんです。今回はその自分の強い部分を最大限に出した感じかな。

――リリックを書き進めていく上で気をつけた部分は?


翔太
:とはいえ、サウンド的には男が聴いてもカッコいいと思えたり、共感できるっていうところを大事にしたいから、女々しさっていうものをいかにいい塩梅でちりばめるかっていうことを考えました。

――女々しさが過ぎると、ただ切ないだけの歌、甘いだけの歌になる、みたいな。


翔太
:そう。女の子はそれでもいいのかもしれないけど、男はたぶん共感できなくなる。弱さや女々しさもあるんだけど、男がカッコつけて聞けたり、流せたりするバランス。そこはすごく意識したかな。以前、俺がツイートしたことと繋げて話せば、俺は歌詞の中で「LINEが既読にならない」とか言いたくないんですよ。

――それは女々し過ぎると。


翔太
:そう。それがユーモアになるようなロックとかだったらいいと思うんです。でも、このサウンドのR&Bでそれをやっちゃうと、マジで女々しいだけになっちゃう。だから、どのワードを選んでいくかっていうのはすごく考えました。カッコよくしようと思えばいくらでもできるから、それを女の子が聞いたときに「この男の子可愛い」ってなる塩梅。そこが大事だなって。

清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る


――男らしさという部分は歌い出しの「バカみたいだろ?」っていうフレーズに表われていると思います。


翔太
:うん。でも、サビはメチャメチャ女々しいっていう。

――けど、そのサビでは「ごめんね」ではなく「ごめんな」と言ってる。他にも「くだらないよね」じゃなくて「くだらないよな」と言ってたり。その口調が男っぽさを出してるなと。


翔太
:うん。確かに。

――それでいて最後にはちゃんと別れた相手に「ありがとう」と感謝を伝えてる。その優しさも株を上げるポイントだなと思いました(笑)。


翔太
:そうですね。その辺のバランスが清水翔太のいちばん強いところだと思うから。そこを全面的に出そうと。

――さっきツイートという単語が出ましたが、ここからは今年4月につぶやいていたツイートについて聞きたいんです。


翔太
:怖いなぁ(笑)。どのツイート?


――「昔は業界皆ライバルだと思ってたけど(その気持ちも必要)今は皆同じ志を持った仲間という感覚のが強い」。そう書いていたんです。



翔太:これをツイートしたときはどんな気持ちだったんですか?って言われても、さすがに4月のことは覚えていないんですけど。でも、それこそワンオク(ONE OK ROCK)のTakaとかと話していても、それは思うことなんです。

――そもそもTakaと繋がったキッカケは?


翔太
:飲みに行った店にTakaがいたの。一緒に行ってた人がTakaと友達で、「今、Takaが来てるらしいよ」って言われて。でも向こうが先に出ちゃうことになって、「今度飲みたいから連絡先を交換してほしい」って言われて連絡先を交換したんです。そのあと結構経ってから「遊ばない?」ってLINEが来て。「わかった」って言って会って話したら意気投合したっていう。そのときに「(会うのが)今で良かったね」ってお互い言っていて。お互い10年以上やってきて、30歳とかになって、いろいろ丸くなってるから。

――それはいつ頃の話なんですか?


翔太
:1年前くらい。いや、それはないな(笑)。1年前が『WHITE』だもんな。じゃあ2年前くらいか。

――『FLY』(2017年)の頃に友達作りモードに入ってましたよね。


翔太
:うん。その頃だと思う。つい昨日くらいも、最近メチャメチャ友達できたなぁって思ってた(笑)。

――UVERworldのTAKUYA∞とも友達付き合いをしていますよね。


翔太
:それこそTAKUYA∞さんも衝撃だったの。たぶん一生交わらないと思っていたジャンルの人が、清水翔太の曲が好きだと言ってくれて。『FLY』の中の「夢がさめないように」が好きだって、ツアーしていたひと夏、それしか聞かなかったらしいんですよ。それで対バンのオファーをしてくれて。

――それが2017年10月のUVERworld『VSシリーズ:ROCK vs R&B』。


翔太
:対バンしてみたら、向こうがすごく愛を伝えてくれて衝撃的だったんです。で、俺もUVERworldのライブを観に行ったら、メチャクチャよくて。そのこと自体が嬉しかったんですよ。自分が一生交わらないと思っていたジャンル/アーティストのライブをこんなにもいいと感じられたことが嬉しかったし、いろんな意味でUVERworldもTAKUYA∞さんも好きになって。TAKUYA∞さんからAK-69さんにも繋がったし、AKさんとも一緒に曲を作って話す仲になって。

清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る


苦しみを飲み込んで、昇華して、美しいものとして吐き出そうとしている人たち人たちはリスペクトできる


――さっきのツイートに話を戻すと、彼らのどんな部分に「仲間」だと感じるんですか?


翔太
:活動していて辛いこととか大変なこととかはいっぱいあると思うんです。それこそ今なんてSNSでの発言とか所作で炎上したりするから、これほどやりづらい時代はないと思うし。そんな中でも自分の表現、エンタテインメントを継続し続けている。音楽業界とか芸能界でサヴァイブしてる人たちは全員すごいと思うんです。それは芸人さんもタレントさんもアイドルも。

――苦しみや辛さを自分のエンタテインメントに昇華できている人たちはすごいと。


翔太
:そう。苦しみを飲み込んで、昇華して、美しいものとして吐き出そうとしている人たち。それを長く継続している人っていうのは、ジャンルは違えどシンパシーを抱くし、リスペクトできる。だからイメージで判断しちゃダメだなって。僕も昔はイメージでその人のことを判断していたんですよ。

――「アイツはアイツで関係ねえ。俺は俺だし」とか。


翔太
:でも、そうやって自分の勝手なイメージで遠ざけていた人でも、直接会って話してみると、メチャクチャ考えてるとか、メチャクチャ頑張ってるとか、いろいろ見えてくる。そういう友達が増えて、みんな同じ、人を喜ばせるっていうエンタテインメントの中で頑張っているわけだから、全員仲間だなって思うようになったんですよね。だからもう周りには愛情しかない。みんな頑張ってー! 俺が手伝えることがあれば何でもするよー、みたいな。

――一方でそれを「もうおじさんなんだな」とも思うと(笑)。


翔太
:そう(笑)。難しいですけどね。これがフレッシュさを失っていく始まりなのかなって思うと怖くなる瞬間もあるし、尖りがフレッシュなものを作るし。とはいえ、このキャリアとこの年齢で尖っていたくもないなっていうのもあるし。

――尖りをエッジの効いた音楽で表現するっていうのは?


翔太
:それは違う気がする。それは結果ダサいと思う。そいつが尖ってるから音楽が尖ってくるわけで。音楽を尖らせることによって自分の年齢とか立ち位置とのバランスを取ろうとすると結果ダサくなると思うんです。

――楽曲と本人の間にギャップが生まれてくる恐れもあるし。


翔太
:そいつがイカついから曲もイカつくなる。それがカッコよさに繋がってくるんだと思う。ただ、自分の中では、“尖る”っていう言い方は違うように感じるから、俺はイカつくありたい。それは怖いとかじゃなくて、「コイツやっぱり考えてることおかしいな」とか、そっちの方。まともにならなきゃなと思う反面、俺をまともにしたら終わる気がするとも感じているんです。だから、もともと持っているイカつい自分を失わず、年相応のやさしい人間になりたいです(笑)。



清水翔太の“マイ旬”


●藤子・F・不二雄の漫画
藤子・F・不二雄は『ドラえもん』とか『オバケのQ太郎』とか子供向けのイメージが強いと思うけど、SF作品をすごく描いているんです。藤子・F・不二雄のSFは「少し不思議」の略。これまでバラバラに短編集を買ってたんですけど、改めて読み返そうと思って『藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 全8巻完結セット』の電子版を最近買いました。なかでもオススメはファンには定番だけど『ミノタウロスの皿』。藤子不二雄Aもブラックな要素があって大好きなんだけど、Fは今の若い人にこそ読んでほしい。なぜなら未来のことを描いているから。こんな未来が来るといいなとか、こんな未来が来ないようにしようとか、こんな未来が来たら怖いなっていう話は、新元号になって新しい未来をつくっていこうっていうこの時代=令和元年にこそ触れるべきだと思うんですよね。




リリース情報


Digital Single
「Sorry」
2019.06.26配信リリース
配信先一覧:https://smr.lnk.to/_WDPM

清水翔太「迎合する気はないけど、理解されなきゃ意味がない」 新曲「Sorry」から翔太の“今”を探る




ツアー情報


【清水翔太 2019年全国ツアー】
2019年9月2日(月)3日(火)大阪・Zepp Namba
2019年9月6日(金)北海道・Zepp Sapporo
2019年9月10日(火)愛知・Zepp Nagoya
2019年9月17日(火)18日(水)東京・Zepp Tokyo
2019年9月26日(木)27日(金)福岡・Zepp Fukuoka
2019年9月30日(月)鹿児島・鹿児島市民文化ホール第一
2019年10月7日(月)神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
2019年10月12日(土)岐阜・岐阜市民会館
2019年10月25日(金)石川・本多の森ホール
2019年11月1日(金)福島・けんしん郡山文化センター
2019年11月4日(月・祝)広島・広島文化学園HBGホール
2019年11月5日(火)岡山・倉敷市民会館
2019年11月17日(日)愛媛・松山市民会館
2019年11月23日(土)三重・桑名市民会館
2019年11月24日(日)静岡・静岡市民文化会館 大ホール
2019年11月29日(金)宮城・仙台サンプラザホール
2019年11月30日(土)岩手・岩手県民会館

■■オフィシャルファンクラブ「S.S FAMILY 1次先行
6月29日(土)12:00~7月2日(火)23:59
https://s-s-family.com

■■翔太モバイル 1次会員先行
7月6日(土)12:00~7月8日(月)23:59
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