本日6月29日(土)朝7時から放送された第76話で、ついにテレビシリーズのフィナーレを迎えた『新幹線変形ロボ シンカリオン』
エキレビ!の池添隆博総監督三間雅文音響監督の対談、後編では、物語を最後まで引っ張り続けた主人公・速杉ハヤト(CV:佐倉綾音)と、親友の男鹿アキタ(CV:沼倉愛美)、大門山ツラヌキ(CV:村川梨衣)のキャスティングについてのエピソードや、新たな敵キリンとの戦いを描いた最終章について語ってもらった。


(前編はこちら
最終回&劇場版公開決定「新幹線変形ロボ シンカリオン」監督対談「ここから魂みたいなものを込めて行く」
ハヤトたちは、キリンの運転するブラックシンカリオンオーガを爆破。平和が訪れると、アキタ、ツラヌキも地元に帰郷。全国のシンカリオン運転士たちは、それぞれの夢を追う日々に戻った。

ハヤト役の佐倉さんの声からは、真面目さと純粋さを感じた


──速杉ハヤトは、生き方自体が作品のテーマを体現するくらい存在感の濃い主人公だと思います。ハヤト役はオーディションを経て、佐倉綾音さんに決まったそうですが、まず、オーディションに参加して欲しいと推薦したのは、どなたですか?

池添 僕ですね。佐倉さんとは、『SHOW BY ROCK!!』でもご一緒していたのですが、さっき(前編で)も話したとおり真面目で、すごく純粋な人。何よりも、声を聴いてそれを感じたので、ハヤト役をやってもらいたいなと思いました。それに、以前から本人も少年役をやってみたいと言っていたので。オーディションを経て、最終的に(メインスタッフの)みんなが同じように思ってくれたので良かったです。

三間 でも実は、ハヤト、アキタ、ツラヌキの3人組のキャストを決める時、僕と池添さんは真っ向から意見が違ったんですよ。僕は、佐倉さんたちではなく、まったく別のベテランの3人組を推していたんです。

池添 そうでしたね。

三間 その3人は、芝居がすごく個性的で面白かったんです。もちろん若手の3人も良かったのですが。「さすがベテランだな」と思わせるくらいに個性的だったんです。

──最終的に、佐倉さん、沼倉さん、村川さんの3人に決まったポイントは?

三間 オーディションの時点では、『シンカリオン』は、これから始まる作品。
まだまだ入口の段階だったので、僕が思う『シンカリオン』と、池添さんが思う『シンカリオン』が、違うものの場合もあるだろうなと思ったんです。だから、ここは、監督の意見を信じようという気持ちでした。もし、池添さんが全然駄目な3人を推しているのだったら、僕も譲らないところですが(笑)。佐倉さんたち3人も良くて、何の問題も無かったので。それに監督も言ってましたが、「佐倉さんの男の子って聴いたことがないな」って僕も思ったんです。あと、佐倉さんはすごく家族愛が強いんですよ。脚本を読んだ時、この作品は家族の話だと感じたので、そこも重ねた方が面白いかなとも感じたし。家族の繋がりを描いていくことも考えると、最終的に佐倉さんがベストだなと思うようにもなりました。
最終回&劇場版公開決定「新幹線変形ロボ シンカリオン」監督対談「ここから魂みたいなものを込めて行く」
オーディションでは3人セットで考えたというハヤト、アキタ、ツラヌキのキャスティング。「若手とベテランをミックスさせる考えは無かったです。ライバルでもある3人だから横並びの方が良いと思いました」(三間)

メインの3人の関係性が毎回すごく面白かった


──ハヤト役の佐倉さんに対するディレクションで、特に多かった内容などはありますか?

三間 たまに、本の読み方が10歳ではなく、(佐倉さんの年齢の)20代の読み方をしちゃう時があるんです。例えば、子供が親を心配する時、10歳の子が心配するのと、大人が心配するのとでは、心配の度合いが全然違いますよね。

──心配する内容もまったく変わりそうです。

三間 そうそう。佐倉さんは真面目で、本の中身や役について、すごく考えてくるからこそ、考えている自分は10歳ではなく大人だということを忘れてしまう。
だから時々、「今、20代のあなたが心配していませんか?」などと、確認をしていました。佐倉さんでも、そういうところにハマることがあるんだな、と意外でしたね。真面目だからこそ、なんでしょうけれど。いっそ、村川さんくらい感覚的な方が(性格的には)ハヤトに近かったのかもしれません(笑)。

池添 ははは(笑)。

三間 村川さんって、心が少女のままなんです。そこがすごく良いんですよね。だから、(10歳の役でも)村川さんへのダメ出しはテンションの幅くらいで。あの子をあだ名で呼んだりしながらいじって、みんなの緊張感を抜くという方法に演出の仕方を変えていきました。

──村川さんは"天然ボケ"という意味だけでなく、本当に"天然"な方という印象です。

三間 それが本当に素敵なことなんですよ。佐倉さんは村川さんが(自然に)馬鹿になれることを、すごく羨ましく感じていると思います。
逆に、村川さんは村川さんで、佐倉さんみたいに真面目にきっちり考えられることを素敵だと思っているはず。だから、あの二人はお互いに尊敬し合っているんですよね。そんな二人を、少し俯瞰で見ている先輩の沼倉さん。あの三角形の関係性が毎回すごく面白かったです。

池添 三間さんが今おっしゃったような3人の関係性ができあがっていく様子を見て、僕も楽しんでいたし、作品にとっても、すごく良いことだなと感じていました。たぶん、役者さん同士がスタジオだけでなく、プライベートの場でも「ああだよね、こうだよね」と作品や役について話してくれているのだろうな、ということも伝わってきましたね。そういうことの積み重ねもあってか、お芝居が、こちらの演出を超えてくれることが何度もあって。それがすごく嬉しかったです。
最終回&劇場版公開決定「新幹線変形ロボ シンカリオン」監督対談「ここから魂みたいなものを込めて行く」
ハヤトと種族を超えた親友になったセイリュウのCVは真堂圭。「真堂さんは僕にとって信頼できる役者で、こちらの欲しい方向にしっかりと持っていってくれる。脇固めという意味でセイリュウ役に推しました」(三間)

劇場版に携わることは念願。恥ずかしくない作品を作っていきたい


──池添総監督は、最終章に関してはほとんど制作現場には関わっていなかったそうですが、少し離れた位置から観ての感想を伺えますか?

池添 最初の構成(全体のストーリーの流れ)を作っている段階ではまだ参加していて。物語の最後の落としどころがどうなる、といったところは知っていました。現場作業に関しては最初から参加できないと伝えていたのですが、アフレコには参加したいと思っていたんです。
でも、劇場版の制作が始まっていたこともあって、全部は参加できなかったことが残念だし、申し訳なかったです。脚本やコンテに関しても、板井(寛樹)監督たちにお任せしようと思ったので、あえて見ないようにしていました。だから、最終的にどうなったのかは、毎週テレビ放送でファンの皆さんと同じタイミングで観ていて(笑)。実は、(取材時点では)まだ最終回も観てないんです。

──では、三間さんに伺いたいのですが、最終章のキーマンであり、ラスボスでもあったキトラルザスのキリンに、浪川大輔さんをキャスティングされたのは、どのような経緯や狙いがあったのでしょうか?
最終回&劇場版公開決定「新幹線変形ロボ シンカリオン」監督対談「ここから魂みたいなものを込めて行く」
人間とキトラルザスの共存を望みながらも、そのための手段としてブラックシンカリオンオーガの武力による統一を選んだキリン。しかし、ハヤトたちが運転するシンカリオンの全員同時攻撃により、その野望は潰えた

三間 浪川さんはどうですか、と提案したのは僕です。あまり年配っぽくはしたくなくて、なおかつ完全に「俺は悪だ」というキャラクターでもない。なんかフレンドリーで、言葉も巧みで、自分の求める方へ人々を誘導していくけれど、心を開いているようで、実は開いてない。そういうところが重なったんですよね。

──浪川さんは、そういうタイプなのですか?

三間 浪川さんって、優しいし、すごくニコニコしながら親しみ深い顔をしているのに、心の中ではまったく別のことを考えていそうにも見えるんですよ(笑)。そういうところをキリンというキャラクターに、そのまま使えるかなと思ったんです。あと、観ている人に、良い者なのか悪者なのか迷って欲しくて。名前を見るだけで「きっと悪者だ!」と思われてしまう役者さんもいますが、浪川さんだと、どっちだか分からなくて良いな、とも思いました。

最終回&劇場版公開決定「新幹線変形ロボ シンカリオン」監督対談「ここから魂みたいなものを込めて行く」
最終回の放送後にタイトルが公開された、劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』。5月に完成したばかりのJR東日本の新幹線試験車両「ALFA-X」がどのような形で活躍するのかにも注目

──最後に、12月に公開される劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』に向けての意気込みと、ファンへのメッセージをお願いします。

三間 先日、テレビシリーズ最終話のダビング(音を付ける作業)が終わったばかりで。劇場版に関しては、僕もみなさんと同じように、どのようなことができるのかと楽しみに待っている感じです。また、いろいろと進展があったら、Twitterでファンの皆さんに、怒られない範囲で呟きますよ(笑)。あと、僕個人として楽しみなのは、劇場版で本来の"池添イズム"が、どのくらい見られるのかということ。もっと面倒くさい池添監督が見られたら良いなと思っています。

池添 ありがとうございます。この間、ひとまずのコンテ作業が終わったばっかりで、ここからブラッシュアップしていきながら、魂みたいなものを込めて行く作業に入っていくのですが。良い形で行けそうな予感がしています。先ほど(前編で)もお話ししましたが、劇場版に携わることは念願でもあったので、恥ずかしくない作品を作っていきたいです。『シンカリオン』ファンの皆さんも、ぜひ楽しみにしていてください!
(丸本大輔)
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