法医学者の朝顔(上野樹里)とベテラン刑事の父・平(時任三郎)を中心に、「命」について考えさせられるドラマ。3月11日の震災のことも描く。
「監察医 朝顔」は、今までのフジ月9のイメージにない作品だと思う。 
先週(7月22日)放送予定だった第3話は放火事件が内容に含まれていたため放送を延期。予告によると今日放送の第3話は「表現に配慮して編集、演出などを変更した上で放送する予定」 とのこと。
先々週放映の2話では、夏日に路上で凍死していた初老の男の謎を追った。その真相が明らかになったとき、朝顔は法医をめざした理由が語られる。朝顔は、震災で行方不明になった母の存在抱えながら、ご遺体に向き合う日々を選んだ。ドラマが描き出すのは、「法医学ミステリー」の先、「喪失の時間とその回復」なのだと感じた。祈りのようなドラマだ。

新キャラクター、空気読まない光子


朝顔が働く興雲大学の法医学教室にアルバイトで入ってきた安岡光子(志田未来)は思ったことをすぐ口にする空気を読めないお馬鹿タイプ。
初対面の朝顔に「まだ見習いの人に教えてもらうんですか?」ってかなり失礼。しかし見ているうちにだんだん憎めなくなってきた。好き嫌い分かれるだろうが、このドラマを明るくしてくれるミント的な存在になってくれそう。
ちなみに原作の光子はもっと地味で暗い感じ。
真逆のキャラクター設定だが、ドラマ版の光子も検査技師の高橋(中尾明慶)のボディタッチにムッとしたり、茶子(山口智子)の本を手に取っていたりと真面目な部分も窺える。「空気読めないお馬鹿」ではなく「あえて空気を読まない」人なのかもしれない。

不器用なプロポーズ、桑原くんは風間俊介の当たり役だ


「万木朝顔さん。僕と結婚して下さい」
「はぁー?イヤイヤイヤ、ここでプロポーズするかねぇ」

桑原真也(風間俊介)から突然のプロポーズ。しかしあっけなく玉砕。確かにプロポーズの場所がもんじゃ焼き屋はムードがない。
帰り道「さっきのノーって意味じゃないからね。タイミングの問題なだけで結婚がイヤとかそういう意味じゃないからね」と話す朝顔にサムズアップしながら「わかってる」と答える桑原のシーンはふたりが互いを信用している感じでとても良かった。
これも月9「監察医朝顔」父娘の食事、飾られた花、整理された家の中「日々の暮らし」こそ生きることだ2話
イラスト/まつもとりえこ

後日、朝顔は桑原に「隠していたわけじゃないんだけど……」と8年前震災で行方不明になった母のことを打ち明ける。朝顔がもんじゃ焼き屋でのプロポーズを断ったのはムードがないからではなく、母のことを伝えてからと思っていたからだろう。
「ぜったい、幸せにします」泣きながら再度プロポーズする桑原くんは不器用だけど誠実そのもの。「朝顔は良い人を見つけたねぇ!」と母の目線(?)で嬉しくなった。

朝顔が法医になった理由


2011年3月、朝顔と母は東北で震災に合い、母は行方不明となった。

1週間後ようやく現地入りすることができた父・平と避難所や病院を回る日々。そんな中でふたりは茶子(山口智子)と出会った。
茶子が無気力な表情の朝顔に声をかける。「ねぇ、あなた生きてるのよね」
これも月9「監察医朝顔」父娘の食事、飾られた花、整理された家の中「日々の暮らし」こそ生きることだ2話
イラスト/まつもとりえこ

東京に帰った後もしばらく朝顔は何もする気が起きず部屋に引きこもっていた。当然だと思う。
朝顔が法医を目指した理由は「お母さんにやってあげられること、何かしなきゃって考えた」 ことから。

第1話と2話の冒頭で描かれた美味しそうな食事シーンや飾られた花、きちんと整理された家の中、父が積極的に家事をすることにも全て理由があった。
今、自分たちは生きている。まず、自分たちの生活を立て直してから、母のためにできることをする。
きっとそういう思いがあって、朝顔と平は「日々の暮らし」を大切にしていたのだ。
(イラストと文 まつもとりえこ)

見逃し配信:FOD

『監察医 朝顔』
2019年7月8日(月)スタート 21:00~)
出演:上野樹里、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES/ジャニーズJr.)、坂ノ上茜、喜多乃愛、宮本茉由、戸次重幸、平岩紙、石田ひかり、三宅弘城、板尾創路、山口智子、柄本明、ほか
原作:「監察医 朝顔」(実業之日本社)原作:香川まさひと、漫画:木村直巳、監修:佐藤喜宣
脚本:根本ノンジ(「5→9~私に恋したお坊さん~」「フルーツ宅配便」「サ道」ほか)
音楽:得田真裕
主題歌:折坂悠太「朝顔」
法医学監修:上村公一(東京医科歯科大学)
法歯学取材:斉藤久子(千葉大学)、勝村聖子(鶴見大学)
プロデュース:金城綾香
演出:平野眞、澤田鎌作
制作:フジテレビ

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