ダイジェストのようにすさまじいスピードで展開していった第1話で、だいぶ不安にさせられてしまった今回のドラマ化だが、第2話は普通のテンポに(よかった!)。
文化祭での漫才の後、「本気で目指してみいひんか、芸人?」と上妻圭右(間宮祥太朗)を誘った辻本潤(渡辺大知)だったが、圭右はイマイチ乗り気ではない様子。先輩コンビである「デジタルきんぎょ」の単独公演に連れて行き、その気にさせようと計画する。
しかし会場で、辻本が大阪時代にコンビを組んでいたものの、黙って置いていってしまった相方・鳥谷静代(小芝風花)と出くわしてしまう。

お互い好きなのに、続けられないコンビ
今回、描かれたのはコンビの難しさ。
人気も上昇中で、上手く行っているように見える「デジタルきんぎょ」だが、実はメチャクチャ仲が悪く、仕事以外では口をきくこともないという。
一方、辻本と元・相方の静代は、「お前らふたりだったら絶対上手くいく思っとったんや!」と先輩から言われるほど期待されていたコンビだったものの、辻本は「仲が悪い」とは別の理由で解散を決めたのだ。
納得のいかない静代は「もっかい私とネタやってみて、アカンかったらあきらめる」と、漫才をすることを提案。
漫才シーンでは、相変わらず、妙に芸人風の空気をまとっている渡辺大知はもちろん、器用にネタをこなす小芝風花の演技も光っていた。
辻本は静代のことを本気で好きになってしまい、笑いのことで静代とぶつかるのもイヤだし、かといって笑いに対して妥協もしたくない。ということで解散せざるを得なかったのだ。
ふたりの関係がダメになっているのを感じつつも、健気にネタを続ける静代の姿が切ない。そもそも、こんなカワイイ子とコンビ組むのが間違ってるよ! そりゃ好きになるわ。
静代を好きなってしまったためにコンビを続けられない辻本と、「好きな人と漫才をしたい」という静代。
好き合ってるけどコンビとしては別れなくてはならないという悲恋パターン、新しいんじゃないだろうか。
コンビはともかく、いつか普通に付き合えるといいね。
メチャクチャ嫌いおうてるけど、オモロかったらそれでええねん!
今回、存在感を放っていたのが「デジタルきんぎょ」のふたり。
上妻、辻本の漫才に関しては、高校生のフレッシュさが出ていればそれなりに成立するが、缶コーヒーのCMに出るくらい売れているという設定の先輩芸人「デジタルきんぎょ」がショボイ漫才をしていたら一気に説得力がなくなってしまう(缶コーヒーのCMに出ている芸人なんて、タモリ、たけし、さんまクラスだぜ!)。
漫才シーンにはさすがに違和感もあったものの、楽屋での金本浩史役・駿河太郎のたたずまいは、かなり芸人の雰囲気を放っていた(笑福亭鶴瓶の息子だから……ということでもないんだろうけど)。
テレビや舞台ではテンション高いのに、楽屋ではメチャクチャ重苦しい空気を出しまくり。それでいて、圭右の書いてきたクソみたいなネタを読んでやったり、「高校時代の俺によう似てる」なんてフォローをしたり、面倒見のよさもにじみ出ている。
原作の金本のモデルは千原ジュニアらしいが(金本「浩史」だけに)確かに演技にもそれらしい雰囲気を取り入れている。
そんな金本が語るコンビ観はこうだ。
「今となってはオレらごっつ仲悪い。方向性の違い、マンネリ、嫉妬。滑った時の罪のなすりあい……コンビがぶつかる理由なんてナンボでもある」
「才能は認めるけど、ハッキリ言うてお互いメチャクチャ嫌いおうてる。
……カッコイイっすよ、センパイ!
辻本と静代の最後の漫才。そして、その漫才を見て「つまんなそうな顔で漫才すんな!」と檄を飛ばした圭右の言葉に影響を受けたのか、ぎこちなく、ふたりでネタ合わせをはじめた「デジタルきんぎょ」にシビれた。
「そば屋を継ぐ」と言い張ってた理由が分からない
今回は「SHIZU-JUN」と「デジタルきんじょ」という二組のコンビと出会うことで、圭右が「芸人を目指そう」と決心するという回だったわけだが、そもそも何で圭右が「芸人を目指そう」という提案を受け入れなかったのか、違和感があった。
というのも今回のエピソード、原作では、父親の芸人嫌いの解消や、文化祭での漫才よりも前に起こっているのだ。
その順番を入れ換えてしまったため、漫才の面白さを認識し、父親の芸人嫌いも解消しているのに、なぜか圭右が強硬に「そば屋を継ぐ」と言っているという謎の展開に。
前向きに解釈するなら、「コンビの関係性」を主軸にストーリーを進めるための改変と見られなくもないが。
「デジタルきんぎょ」の参戦でだいぶドラマが締まった印象がある今回。話の構成も、もうちょっと締まってくるといいんだけど……。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
「べしゃり暮らし」(テレビ朝日)
原作:森田まさのり「べしゃり暮らし」(集英社)
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
撮影:小林元
オープニングテーマ:Creepy Nuts「板の上の魔物」
主題歌:B'z「きみとなら」
漫才監修:ヤマザキモータース、小林知之(火災報知器)
漫才協力:太田プロダクション
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)