
「びしょ濡れ=相手を思う」という図式
今回は羽衣から町を歩く男まで、しめて5人がびしょ濡れになる「びしょ濡れ祭り」な回でもある。まず冒頭、ヤンさん(ヤオアイニン)が覚えたての「しめっぽい」を連発しつつ、自ら水をかぶってびしょ濡れに。結局それで風邪をひいてしまったヤンさんの代わりにバイトに出ることになった羽衣は、誤って小井野一(大友律)に水をかぶせてびしょ濡れに。それをきっかけに羽衣は兄・淳之介(矢本悠馬)に一の調査を依頼。淳之介は「びしょ濡れになっても怒らない」というヒントを頼りに、町行く男たちに次々水をかけては確かめるのだ。
ヤンさんは「羽衣はびしょ濡れがいいんだ」と訴えるためにびしょ濡れになり、結果友情を確かめることができた。羽衣はびしょ濡れにしてしまっても怒らない一に恋に落ちた。淳之介は妹の恋した相手を見つけるため、ボコボコにされながらも関係ない人までびしょ濡れにした。びしょ濡れになる/する=相手を思う、という図式ができているようだ。
思えば羽衣はこれまで、兄のために水をかぶってタイムリープをしてきた。その「相手のため」が今回、これでもかとばかりに象徴的に繰り返されている。
ドラマのつくりが切なさを生む
今回の依頼者は双子姉妹(堀越ゆりか、えりか)。
双子が恋人といた証拠をつかむため水をかぶった羽衣は、1か月前と間違えて1週間前にタイムリープしてしまう。そこで、一が恋人といる場面を目撃してしまうのだ。
今回はとにかく、いつにも増して大原櫻子が最高だ。全力で恋して、お兄ちゃんに頼って、失恋して、でも相手を勇気づけて。基本常にナンセンスが通底しているこのドラマで、今回は思いっきり恋愛ドラマを演じているのだ。一つひとつの表情がかわいくて、一瞬このドラマのテイストを忘れてしまうほどだ。そんな視聴者を父(大堀こういち)がぐっと引き戻すのだが……。
このドラマの大きな特徴は、テレ東版とParavi版、二つの展開があること。今回、Paravi版では当初の予定通り1か月前にタイムリープし、双子の恋人の謎を解き明かす。そしてこちらの羽衣は、恋した相手に恋人がいることを知らない世界線のままで終わる。
(釣木文恵)
「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」
出演:大原櫻子、矢本悠馬、大堀こういち、ヤオアイニン
企画:ブルー&スカイ、加藤伸崇
脚本:ブルー&スカイ、村上大樹、テニスコート、金井純一
監督:草野翔吾、金井純一、長野晋也
チーフ・プロデューサー:山鹿達也
オープニング曲:マカロニえんぴつ「surpernova」
エンディング曲:大原櫻子「I am I」