「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

SNSに投稿する切れ味抜群の文章が評判を呼び、“文才のすごいギャル”と注目を集めているきらめく星のなったん。7月25日に刊行された初のエッセイ『待ち人来ずってなんなの 私から会いに行くからお前が待ってろよ』(KADOKAWA)も4刷重版が決まるなど、彼女の言葉が持つポジティブな力に多くの人が魅せられ、そっと背中を押されている。


「文才ないですし、ギャルでもないです」と謙遜しながらも、「他の人がどう捉えるかは自由なので、好きに呼んでいただけたら。ご年配の方にしてみれば、若い子はみんなギャルみたいなものでしょうから」と笑顔で語るなったん。おおらかで前向きな彼女のバックボーンと、言葉をつむぐことへの熱い思いに迫った。

取材・文/曹宇鉉(HEW)
 

「景色の見え方が変わるようなものを書きたい」


「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

――初のご著書、とても楽しく読ませていただきました。最初に「本を出しませんか」と打診を受けたときの気持ちを振り返っていただけますか?

もちろんびっくりしましたし、本当に嬉しかったです! 子供のころから文章を書くことが好きで、夏休みの宿題は全然できないのに作文だけは何枚でも書けるタイプだったので、ようやく自分の「好き」が仕事につながった喜びがありました。

――執筆にあたって、ご自身の中で決めていたことなどはありますか?

毎日が退屈で、生きづらさを感じている人の景色の見え方が変わるようなものを書きたい、と思いました。そのために決めたルールは、「悲しい」という感情ひとつとっても「つらいよね、わかるよ」という共感で終わらせず、きちんと私なりに発展させること。本を読んでくれた人に、少しでも笑って、すっきりして、前向きになってほしかったので。

あと、私自身は読書が大好きなんですけど、本を読むのが苦手な若い人が多いというのはつねづね感じていて……。そういう人にも「本って簡単に読めるよ!」と伝えたくて、どんな人でも無理なく読みきれるようにしたいな、と考えました。デザイン的にも文字が大きくなるページがあったり、マーカーが引いてあったり、写真が載っていたりと、退屈させないような工夫を盛り込んでいます。


――たしかにすごく読みやすかったです! とはいえ決してライトな内容ではなく、しっかりと読み応えのある一冊になっていますね。

伝えたいことも書きたいこともまだまだあったんですけど、できるだけたくさんの人に読みきってもらいたかったですし、かといって中身がスカスカでも意味がない。
手にとってくれた読者になにかを残すのが本の醍醐味だと思っているので、重たい話題や真面目なことも臆さずに書きました。その後にすかさず笑い話やネタっぽいフレーズを入れて、緊張をほぐす感じで(笑)。やっぱり一番のモットーは明るくハッピーであることですから。

――評判が評判を呼ぶ形で増刷が続き、読者からさまざまな反響が寄せられたと思います。特に印象に残っている感想はありますか?

不登校ぎみのお子さんがいるという男性から、「なったんさんの本を通して、娘に伝えたいことが伝わった気がします」とメールをもらったのはとても嬉しかったです。他にも「友人関係がうまくいかないけど、無理に合わせる必要はないと思えました。明日から胸を張って学校に行きます」といった感想や、「これまで好きな人に告白できなかったけど、どう思われてもいいよね! 言ってくる!」みたいな報告もたくさんいただきましたね。読者の方からのメッセージは本当にすべてがありがたくて、励みになっています。

人間関係で思い悩まないために


「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

――ご著書の中でも触れていた、なったんさんの幼少期の話を伺えれば。出身は沖縄県ということですが、どういった環境で生まれ育ったのでしょうか?

今の実家は宜野湾市にあるんですけど、元々は沖縄市の出身です。たまにニュースでも取り沙汰されるように、貧困が目立つ地域でした。私自身も父を早くに亡くしたこともあり、あまり裕福な家庭ではなかったですね。

――中学時代では集団生活になじめず、不登校になったことを明かしています。


最初は本当に苦しくて仕方なかったんですけど、中学生の後半くらいからは「もういいや!」と開き直りました。周囲になじめないし、協調性もない。でも、そのぶん「主張することは得意なんじゃないか」と考えられるようになったというか。無理に人と一緒にいて疲れるよりも、ひとりで過ごすほうがいいと割り切るようになりました。もちろん、それなりに葛藤もありましたけど……。

――学校での人間関係に悩んでいる子供がたくさんいると思います。著書にも書いてらっしゃいますが、なったんさんからアドバイスがあればぜひお聞きしたいです。

集団生活をしていると、どうしても自分と周りの人を比較して卑屈になったり、居心地の悪さを感じてしまうことがあると思います。でも、だれかと比べて自分がどうか、ということをあまり考えないでほしい。もし比較対象が必要なら、それは常に昨日の自分であるべきなんじゃないかな、と。

どれだけ人の顔色をうかがって期待に応えていっても、死ぬときは結局ひとりですから。イヤな人間になっても、失敗してしまっても、最後まで寄り添ってくれるのは“私”だけで、一番の相棒なんです。
だからこそもっと自分自身の声に耳をかたむけて、肯定してあげてほしいですね。

小さな気づきと探究心が生む“キラーワード”


「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

――ご著書やSNSで、“キラーワード”“パンチライン”と称される痛快なメッセージを数多く披露されています。文章を書くにあたって、特に大きな影響を受けた作家や作品などはありますか?

さくらももこ先生の作品は、漫画もエッセイも大好きです! 今でもアニメの『ちびまる子ちゃん』を毎週録画しているくらいですから(笑)。平凡な日常の中の物語というか、小さな気づき。そういったものを見つける視点がとにかく秀逸なんです。

文章という意味では、教科書で読んだ太宰治の『走れメロス』に衝撃を受けました。いきなり「メロスは激怒した」からスタートする冒頭を読んで、「うわー!」ってなっちゃって。メロスがだれかもわからないし、なんで怒っているかもわからないのに、一発目にその文章を持ってくるところがすごい。「なんなんだろう、この人」と思いました(笑)。

――なったんさんならではのパワフルでユーモラスなフレーズは、どういったタイミングで思い浮かぶのでしょうか?

『ちびまる子ちゃん』と一緒で、なにげない気づきがきっかけになることが多いですね。『待ち人来ずってなんなの 私から会いに行くからお前が待ってろよ』というタイトルも、おみくじを引いたときに「『待ち人来ず』ってなに? どういうこと?」と自然に出てきた言葉なので。物心ついたころから“なんでなんでのなったん”と呼ばれていたんですけど、とにかく些細なことにもいちいち疑問を抱くタイプなんです(笑)。今でもテレビや雑誌を見て「ん?」と違和感を抱いたら、納得するまで調べたり、考えたりしています。
そうやって自分なりに出した答えを、多くの人が楽しんでくれているのなら嬉しいです。

あとはたぶん、人とのコミュニケーションが不得意だったからこそ、「どうやったら伝わるんだろう」とずっと試行錯誤していたのも影響しているんだと思います。その結果として、より面白く、伝わりやすい表現を選ぶことができるようになったのかもしれません。

――影響力が大きくなるにつれて、ご自身の考えを表現することへの恐れを感じることはありませんか?

毒は吐きますけど、本当にできるだけ人を傷つけたくないと思っているんですよ。もし万人受けしたとしても、だれかひとりでもすごく傷つけてしまう表現なら、そういう言葉は発信しないほうがいい。自分としては、あくまでも「こういう考え方もあるよ」と前向きになれる方法を提案しているつもりです。あと、なにかの情報を書いたり拡散したりする前に、それが真実なのかどうか、きちんと確かめるようにしていますね。

夢中になれるものがなくても「生きているだけで偉い」


「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

――歌手の登坂広臣さんや、格闘技や野球などのスポーツへの愛を明かしているなったんさん。どういったところに魅力を感じているのでしょうか?

登坂広臣くんの魅力を語り尽くすのはなかなか難しいです(笑)。単純に私自身があまり頑張れていない人間なので、非日常を与えてくれる存在に惹かれるのかもしれません。そもそも「物書きになりたい」ということも誰にも言わず、なにもせず、というタイプでしたし……。自分が頑張れていないからこそ、ひたむきに努力している人を見ると応援したくなるんでしょうね。

――そんなふうに人生を豊かにしてくれるなにかを見つけるコツのようなものがあれば、ぜひ教えていただけますか?

私が実践していた方法は「月に1回、未経験のものに挑戦する」というものです。
本当になんでもいいんですよ。見たことのないものや行ったことのない場所、食べたことのないものにチャレンジする。ハマらなかったら「いい経験になったな」と思えばいいし、ハマったらそれを趣味にすればいい。とはいえ、趣味や夢中になれるものがなくてもまったく構わないと思うんです。とりあえずご飯を食べて寝るところがあれば生命は維持できますし、「毎日を生きているだけで偉い」というのが私の考え方なので。

――今後も文章を書く仕事を続けていこうと考えているのでしょうか?

ずっと続けていけたらと思っています。今はまだ全然イメージできませんけど、いずれは文章だけでご飯が食べられて、家賃が払えたらいいなぁ、って(笑)。やっぱり書くことが好きだし、読むことが好きなので。好きなことで人生があふれたら素敵じゃないですか。特に格闘技については、ぜひ書き手として仕事をしてみたいと思っています。

――あらためて、SNSやご著書をチェックしている人に向けてメッセージがあれば。

みなさんのおかげで、私は本を書くことができました。
私も、みなさんのためになにか出来ることを探していくから待っててね!
「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

刊行情報


「毎日が退屈で、生きづらさを感じている人へ」きらめく星のなったん、“文才のすごいギャル”が思うこと

きらめく星のなったん著『待ち人来ずってなんなの 私から会いに行くからお
前が待ってろよ』(KADOKAWA)


夢あるのが別にエラいわけじゃないし、やりたいこと見つからないのがダメなわけじゃない。結婚するのもしないのも人生。生きてくことに勝ち負けなんてないんだからみんなもっと好き勝手で、自由に生きればいい。Twitterで伝説化したあの「文才のすごいギャル」による待望の書き下ろしエッセイ! 恋愛、人間関係、仕事における理不尽なアレコレへの立ち向かい方、生き方の軸を痛快なキラーワード連発でお届けします。

Profile
きらめく星のなったん

沖縄県出身。Instagramで公開している華やかな自撮り写真と、投稿に添えられる切れ味するどい文章で、“文才のすごいギャル”としてネット上で話題となる。7月25日に、初の著書となるエッセイ『待ち人来ずってなんなの 私から会いに行くからお前が待ってろよ』を発売。その内容が評判を呼び、4刷重版が決定した。SNSのフォロワー数はInstagramが約20万人、Twitterは約10万人(9月30日現在)。

関連サイト
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