AVの帝王・村西とおるが振り返る栄枯盛衰 50億円の借金を完済した過去「自己破産は禁じ手」

Netflixにて配信されている俳優・山田孝之主演のオリジナルドラマ『全裸監督』の世界的な大ヒットを受け、今そのモデルでもあるAV監督・村西とおる氏(以下、村西)に再び注目が集まっている。人気の秘密はドラマ内でも描かれた波乱万丈の人生、栄枯盛衰を経て逞しく再起した村西の生き方が着目されている。

1990年以降、一時期は年商100億円にまで達しながらも、当時まだ普及していなかった「衛星放送」事業に新規参入し、結果、会社は倒産。村西は50億円の負債を背負うこととなる。しかし彼は奮起。自ら「天職」と語るAV監督として精力的に作品を制作、50億円の借金を完済した。

今秋には23年前の撮影の日々の裏側をとらえたドキュメンタリー映画「M/村西とおる狂熱の日々」の上映も決定。今後ますますその生き方や考え方が話題となることだろう。エキサイトニュースでは、そんな村西をこのタイミングで直撃。村西のAV監督歴を始め、逃げることなく完済した50億円の借金返済のモチベーションやバイタリティ等を、「村西節」炸裂のインタビューでお届けしたい。

取材・文/池田スカオ和宏 撮影/川島彩水 編集/日野綾(エキサイトニュース)

当時は「日本で一番売れないAV監督」と呼ばれていた


村西:お待たせいたしました、お待たせしすぎたかもしれません。昭和最後のエロ事師、村西とおるでございます。この度はよろしくお願いいたします。

――よろしくお願いいたします。いきなりの監督の常套句、嬉しいです。今夏の『全裸監督』の大ヒット以降、改めて監督への注目が高まっています。その辺りご自身でも実感なされているのではないですか?

村西:ありがとうございます。みなさまがおっしゃって下さるような状況の中にいるのかもしれませんが、あまり実感がないもので……。

――振り返ると、監督がAVを始められた頃から既に35年近くが経つわけですが、35年後の現状を想像出来ていましたか?

村西:いや、全く想像もできませんでした。私の場合、最初はビニ本、裏本の世界から、AVの世界に入ったんですが、ビニ本、裏本の時代に全国指名手配になって捕まってしまったわけで。前科者となった以上、生きていくために他の仕事をするという選択肢などなく、以後はこのエロ道一筋で行くしかないと、腹をくくってここまで参りましたから。
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――監督はそのAVの黎明期からご活躍をされているわけで。

村西:私が監督業を始めた頃はAVの時代に突入しだした辺りでした。当初はビデオデッキの普及率もまだ5%程度で。それでも全国に250万世帯あるわけで。それなら勝負になるだろうということで、挑戦したんです。最初の頃は鳴かず飛ばずで……、当時は「日本で一番売れない監督」と呼ばれて社員に泣かれていましたから。

――またまた。

村西:いやいやホントです。当時、会社の近くに焼肉屋さんがありまして。まだ焼き肉を食べられる身分ではなく、豚足ばかりを頼んでいました。「いつかカルビをお腹いっぱい食べたい」と。そんな思いをしてお仕事をしておりました。
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ところが市場ではビデオデッキの普及率が20~30%まで一気に跳ね上がって。それまでは1日15本~20本売れれば御の字だったビデオが、ある日から突然、50本売れて、300本売れて、1000本、2000本、3000本、遂には10000本の発注がくるようになったんです。それが監督を始めてから1年半ぐらいしてからのことでした。大きく山が動いて海が割れたというような感覚でした。その際にようやく、「この仕事をしていて良かった」と思えるようになったんです。

――その際に目指していたものは何かあったんですか?

村西:「やるからには日本一を目指す!」ということは常に思っていました。とはいえ、才能に恵まれているわけではないので、なかなか難しいところはありましたが、やり続けることによって周囲から評価もされるようになり、なんとなくですが、「日本一」なんてことも言われ始めるようになりました。

――監督の場合、元々はエロの世界に憧れて云々ではなく、食べていくためにエロを選んだ感じですもんね。

村西:そうです。アートやエロティシズムに対する特別な感情や思い入れがあって、この世界に入ったわけではありませんでした。食べるためであれば何でもやる! そんな気概で何にでも取り組んでおりました。そんななかで、私の場合は学歴も資格も閨閥もない、ならばこれでいこうと。
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周りに評価されることで「自分は何者なのか」が分かってくる


――ところで、監督が同時代の他のAVの監督と比べて、どの辺りが違っておられたと思いますか?

村西:それは私に言葉があったからでしょう。セールスマンの時代に培った話術や言葉、その言葉でエロスを紡いでいく。そこに挑戦したことです。よく「村西節」と言われますが、言葉を武器にして、言葉の力でエロスを描いていきました。「かつて人類が相まみえることの出来なかったような映像」の制作を目指し、ひたすら続けていくことで、ようやく一人前に食べていけるようになりました。
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――人気を博した以降は、どこか使命感を帯びて活動されているようにも映りました。人々の期待を背負ったり、人々の為に何かを起こしたり。

村西:おっしゃる通り、やっていくうちにそのような気持ちになっていきました。当初は自分中心の考えで作品を制作していましたが、世間に評価されてくると今度は、視聴者のみなさまを裏切らない、歓んでいただけるような、ワクワクドキドキしていただけるものを作らなくちゃいけないという、使命感みたいなものが芽生え始めるんです。

期待をしてくださっている人たちを裏切っちゃいけない。そんな社会性めいたものが生まれ始めてきて、気づいたら世の為、人の為という考え方になっていました。仕事というものは、社会性や倫理や道徳といったものを自然に身に着けさせてくれるんだな、とその時に初めて実感しました。

――でも逆にそこまでアクセル全開で行っていたものが、他者を意識することで少なからずブレーキやどこか自制といったものも発生しそうですが。例えば、「この人たちに迷惑をかけちゃいけない」というような。

村西:それは出てくるかもしれませんね。しかし「自分は何者であるか?」は、やはり他者からの評価でしかありえないのです。周りに評価されることで「自分は何者であるか?」が分かってくる。例えば私はAV監督のお仕事をすることで、こんなにもみんなが評価してくれて喜んでくれる。その上、お金を得ることができる。「これが俺の天職だ」と。
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――「天職」っていいですね。

村西:たとえ地球の裏側まで“自分探しの旅”に出かけても「自分は何者であるか?」なんてわからないのです。社会に出ていって、勝負をすることで初めて周りに評価される、そんななかから、「俺はエロ事師だ」「エロ事師でいいんだ」と。それが自然と天職にもなっていくんです。自分が何者かを知るということは社会に出て、まず他人様に評価してもらう。これしかない。

日本のAV作品は感情移入や感情の共有ができる


――監督の功績の一つとして、「女性が自分自身の性を楽しんでいいんだ」といった風潮まで高められたところもあると私は感じています。

村西:その辺りは黒木香さんの出現が大きいと思っています。ちょうどその頃、男女雇用機会均等法が施行され、女性も男性と同等の権利を主張しても差し支えないといった風潮が生まれたんです。そういった時に黒木さんの出演作品「SMぽいの好き」が発表となり、男の性を女性が凌駕していいんだ、女性自身が自分の性を奔放に楽しんでいいんだ、という世界を見せしめた。そしてそれを見た女性たちが皆、総立ちになった。

――AVにしても女性の支持は大事だと思われますか?

村西:とても重要です。どんな流行でも女性の支持がなければありえません。コンビニのスイーツ等でもそうですが、女性に評価されないものはお店に並べていませんから。女性が拒否するものは流行としてありえないのです。今日、AVの有料サイトのユーザーの半分ぐらいが女性だというのは、やはり女性の多くがAVの世界に興味を持っているからなのです。
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――今や日本のAVは世界的にも高い評価を受けていますが、監督としてはどの辺りがその要因だとお考えですか?

村西:日本のAVでは、女性の「恥ずかしさ」の表現があります。「恥ずかしい世界」というのを描いているんです。

対して、欧米のポルノの映像というのは、単に絡んでいる場面を見せればいいだろうというSEXのトライアスロン的な無味乾燥に堕ちています。よって感情移入をすることができません。その点、日本のAVは見ている人たちのエロスの琴線に触れ、感情移入させられる力がある。恥じらいや奥ゆかしさが描かれていて、見ている人がその羞恥心の世界に引きずり込まれ、ドキドキするのです。そして妄想の世界を喚起し、興奮をさせるのです。

日本のAVは「モザイク修正」という一部表現の不自由はありますが、海外でタブーといわれるどのような性表現も許されています。いくらでも性愛のファンタジーをお届けできるのです。そこが人気の秘密でしょう。
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――監督から見て、今後日本のAVはどのように発展していくと捉えておられますか?

村西:日本のAVはまだまだ豊かな商売やビジネスとして成り立っていくことでしょう。人の数だけその性癖はあるのです。その分、それぞれの嗜好に対してのニーズがありますから、AVの多様性は今後も留まるところを知らないでしょう。

そういったそれぞれのマニアックな性愛にマッチしたファンタジーをお届けしていこうというのが我々のお仕事ですから。日本のAVはタブーがないんです。

50億円の借金を完済 「禁じ手」の自己破産はしない


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――AVのお話は大変勉強になりました。それらも踏まえ、私が監督に以前からお聞きしたかったのは、かつて借金が50億円ほどあり、それを完済なさったところなんです。普通、そこまでの借金があると、大抵は諦めて自己破産をするか、どこかに逃げたり、死をも考えたりしそうなものですが、監督は決してそうはせずにきちんと完済された。その辺りにすごく男気を感じると共に、何故にそこまで? との疑問も生じました。

村西:今だから正直に申しますと、逃げてしまいたいという思いが、何度も頭を過りました。でも、私は表に立って仕事をしてまいりましたので、ここで逃げてしまえば、以後、仕事ができなくなる。自己破産という選択肢はないのです。

やはり自己破産は、ビジネスの世界ではある種、「禁じ手」ですから。自分は何があっても自己破産しない、エスケープしない、「禁じ手」は使わない。そうして逃げずに返済していったことが、かえって信用となりました。また50億円の借金のうち、“よんどころなき所”からお借りした20億円の保証人になってくださった知人がいて、もし自分がトンズラしたら、その方やそのご家族にまでも迷惑がかかってしまうといった状況でございました。ですから、逃げる訳にはいかないと、必死に歯を食いしばって死に物狂いで働きましたよ。

――では、自分の守るべきものの為に?

村西:そこまでカッコいいものじゃございません。そうする以外、道がなかったんです。一時期は年商100億を上げておりましたので、当初は50億ぐらいすぐに返せるだろうと踏んでいました。でも、いざやってみたら50億円どころか生活費を生み出すのにもひと苦労でした。ある時など、地下鉄の初乗りの150円も手元になくて、三軒茶屋から四ツ谷まで3時間ぐらいかけて歩いて帰ったこともありました。
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でも、自分はどこか楽天的なところがあったんです。物事をネガティブに考えない。ネガティブに考えてプラスになることは何ひとつないんです。心のどこかでは「何とかなるだろう」「なればなった時だ」と。ハワイで370年の懲役の判決を受けた時も、4回死んでもここから出られないのか……? と最初は気が狂いそうになりました。でも、ある時から、落ち込んでもしょうがない、前を向いて生きるしかないと気持ちを切り替え、結果、日本に戻ることができました。

――その50億円の借金は結局?

村西:AVの作品を制作することで、全てお返ししました。まずは2年間で1500タイトルを作りました。先ほどお話いたしました“よんどころなき所”からお借りした20億円はこの2年間で返済しました。そして、ようやく6年前に50億円全て完済いたしましたが、ホッとする間もなく押し寄せる人生の荒波に身悶えながら生きる日々を送っております。

――今後やっていきたいことはありますか?

村西:「かつて人類が相まみえたことのないものにトライしていきたい」という生き方はなかなか変えられずにおります。映像制作に限らず、かつて誰もやらなかったことに挑戦していきたいですね。また、手前どものような愚か者を迎え入れてくださったファンの皆さまへのご恩返しをと心得ております。私の作る作品で、今後皆さまに多くの感動や喜びをご提供してご恩返しをさせていただきたいな、と。それが私がこの世に生まれてきた意味だと、そう思っております。
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プレゼント応募要項


ドキュメンタリー映画「M/村西とおる狂熱の日々」の公開を記念して、村西とおる監督の直筆サイン入りBVD製白ブリーフを1名様にプレゼントいたします。

応募方法は下記の通り。
(1)エキサイトニュース(@ExciteJapan)の公式ツイッターをフォロー
(2)下記ツイートをリツイート
応募受付期間:2019年10月7日(月)~10月21日(月)23:59まで

※非公開(鍵付き)アカウントに関しては対象外となりますので予めご了承ください。
※当選者様へは、エキサイトニュースアカウント(@ExciteJapan)からダイレクトメッセージをお送りいたします。その際、専用フォームから送付先に関する情報をご入力いただきます。
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(エキサイトニュース編集部)

作品情報


AVの帝王・村西とおるが振り返る栄枯盛衰 50億円の借金を完済した過去「自己破産は禁じ手」

M 村西とおる狂熱の日々 完全版
11月30日より東京・テアトル新宿、丸の内TOEIほか全国順次公開。R15+指定。
公式サイト:http://m-kyonetsu.jp/

Profile
村西とおる

1948 年9月9日生まれ 福島県出身、福島県立勿来工業高校卒、上京後、バーテン、英会話セットのセールスマン、テレビゲームリース業を経て「裏本の帝王」となるが全国指名手配となり逮捕される。その後AV 監督となって今日に至る。 前科七犯(うち米国で一犯)。これまで3000本のAVを制作し、7000人の女性のヒザとヒザの間の奥を視姦してきた。 「昭和最後のエロ事師」を自任し、「AVの帝王」と 呼ばれている。

関連サイト@Muranishi_Toru
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