梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

ミュージカルブームと言われて久しいが、この秋、見逃せない新作ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』が上演される。海外ミュージカルの日本版ではなく、話題になった原作を元にしたものでもなく、新たにゼロから企画を立ち上げた完全オリジナル作品で、しかも上演方法も新しい。本公演の前に2度のプレビュー公演を行うというトライアウト形態をとり、作品が成長する過程も楽しんでもらおうという試みなのだ。なおかつ今回は小劇場(オフ・シアター)での公演だが、いずれは大劇場(オン・シアター)に進出することも視野に入れ、延いては海外にも通用する作品づくりを目指しているのだという。

脚本、演出、音楽、演技、各パートのブラッシュアップを見せることまで作品の一部とした、ミュージカル界に一石投じる公演となるに違いないミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』について、脚本・演出を手がけた俳優の西川大貴、キャストの梅田彩佳、風間由次郎に話を聞いた。

取材・文/前原雅子 撮影/コザイリサ
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)


異例尽くしの挑戦的な作品


――小劇場(オフ・シアター)から大劇場(オン・シアター)を視野に入れた作品作りは、日本では珍しいことなのですか?

西川大貴(以下、西川):日本においては珍しいと思います。主演に大スターさんを起用することで、ある程度の集客保証があれば話は別かもしれませんが。スターさんの起用はない、原作もないオリジナル作品で1カ月公演をやらせてもらうなんて、聞いたことがないくらいですね。

──ということは今回の企画を聞いたときは驚かれました?

西川:驚きました。昨年の10月くらいにプロデューサーと2人で焼き鳥屋に行く機会があったんですけど、そこで、これからの日本のミュージカルの話になって。日本でオリジナル作品を作るには「しっかりと時間をかけて失敗と修正を繰り返しながらやっていく必要があるから、(今回のような)こういうシステムが必要だと思う」みたいな話をされたんです。そのとき、そんな素晴らしい環境でなんて、僕はぜひやりたいですっていう話をして。最初は6~7人くらいでできる脚本を書いたんですね。だけど、ある日突然、プロデューサーの意見でキャストが20人前後のものになって。

風間由次郎(以下、風間):突然増えた(笑)。

西川:DDD(=DDD青山クロスシアター)の大きさだと7人くらいだろうと言ってたのに、翌日になったら「なに? 7人? 20人は必要でしょ」「えーっ!? 20人ですか!」となって(笑)。

梅田彩佳(以下、梅田):翌日!(笑)

西川:もちろん気持ちのなかでは、今回で完結するプロジェクトとして脚本を書くつもりはなかったし、7人だとスケール感も小さくなってしまうので、本来なら20人くらいのキャストでと思ってはいたんです。ただ、劇場のサイズとかバジェットのことを考えると、無理もできないと思っていて。でもそういうことなら、キャストも全部オーディションで選ぼうっていう話が出てきて。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──そしてお二人はオーディションを受けられたわけですね。

風間:はい。普段、ミュージカルのオーディションを受けるときは、その役をやりたいからとか、例えば『RENT』という作品に出たいから、という理由で受けることが多いんですが、今回は小劇場から大劇場へという目標にすごく魅力を感じて。どういうミュージカルなのかわからない、ただ面白そうな企画だということしか知らない。だけどそこに行けば、自分と同じような気持ちを持っている同世代の人がいるんじゃないかと思って。そういう人に会いに行きたかったんです。

──仲間に会いたかった。

風間:そうですね。「何を思ってます?」「僕もそう思うんです」みたいなやりとりをしたい、という感覚でオーディションに応募したのを覚えてます。たしかにDDDでやるにはキャストが多いかもしれないですけど、そこに大劇場を意識している感じをひしひしと感じるし、実際、稽古をしていてもすごくいい環境だなと思うので。

梅田:最初に話を聞いたときは単純に面白そうだと思いました。普通は初日が開いたら、多少の変化はあってもそのまま千秋楽までいく感じですけど、必要があればそれを壊すって、かなり怖いことですよね。しかも、またそれを見せたときに受け入れてもらえるかもどうかも怖いし。そう思うと、作って壊すって、かなり勇気のいる作業だなと思って。でも、だからこそ逆に、常に初日の気持ちで舞台に立てるだろうし、来たものをやるだけではなく、自分にも挑戦していくような日々はすごく幸せなことだなって思ったんです。プラス(西川)大貴さんをすごく尊敬しているので。大貴さんがやるものなら私はやりたいと思って挑戦しました。

──どういう内容になるかは、ひとまず横に置いて。

梅田:どんな物語なのか、どんな曲なのかわからないまま(笑)。でも、尊敬している人がやるものだから、絶対にその1カ月、2カ月は勉強になるな、やってみたいなと思いましたね。

西川:二人が言ってくれたように、例えば「ここ、もうちょっとこうすれば……」という疑問が湧いてきても、そのまま千秋楽までいってしまうのが普通の環境で。そういう「このままでいいのかな……」「こういうプロジェクトができたらな……」っていう思いのタネみたいなものを、いろんなところですごく感じていて。きっと自分と同じように思っている人もたくさんいるんだろうと。それは役者に限らず観客も。だから僕はまだディレクターとしてのキャリアもないですし自信も全然ないですけど、とりあえず僕らの世代がやっていかないと、と思って。やっていけば、そういうタネも芽吹いていくような気がしたし。だからオーディションを受けた人にそう思ってもらえたことが、すごく嬉しいです。

──実際に上演しながら、いろいろ思うことはあるのでしょうね。

風間:ジレンマを抱えながらずっとやっていたわけじゃないんですけどね。そのときは自分の役を一生懸命やることが大事だと思ってやってますし。ただ、ネガティブな意味ではなく、あとになって「こうすればよかった」と思うことはあります。特に海外のミュージカルだと、「こっちに動きたい」と思っても、舞台のどこで台詞を言うか、決まっていることも多いので。

梅田:今まで私は、“こういう人”ってガッチガチに決められた役をやることがすごく多かったから、その気持ちになるように自分を作っていかなければいけなかったんですよね。

風間:作品によっては人種の壁だったり差別だったり、日本にはない文化を表現することもあります。根本的なジレンマなんですけど、別の国の人の役を日本人として、どのように表現するかっていうことになるので。そこでネガティブになってしまうと作品をやる意味がなくなってしまうから、ポジティブにやっていくんですけど。今回の作品は今の時代に僕らが等身大で感じているものが、大貴くんの脚本のなかに見えないように隠れています。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

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梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──トライアウト公演をするなかで、通常では考えられない大小様々な変更も出てきそうですね。

西川:そこを面白がってというか、作品が変わっていくところも楽しんでいただけたらと思うんですけど、「変えます」っていうことを大前提にするのも、また違うのかなって思うんですね。

──あくまでこれまでできなかったことを、今回はやっていきたいという。

西川:そうですね。やっぱり大劇場のミュージカルに関わっていると、この辺で固めていきましょうという環境のなかで「失敗しない演技プラン」を選択せざるを得ないことが多いんです。だけど初日があいてからとか、プレビュー期間中にお客様の目に触れて初めて気づくこともありますから。「あぁここ、こういうプランもあったな」って思うことも、俳優としてものすごくたくさんあるんです。でも舞台上でトライできる環境があれば「あ、こっちもアリだね」「じゃこれで一回試してみよう」ということになるので。なのでその結果、大きな修正が出る場合もありうるとは思います。ただ「大きな修正をすることが目的」ということではないという感じです。

挑戦を恐れないキャスト・スタッフで作り上げていく


──キャストは全員オーディションで選ばれたということですが、オーディション自体も通常とかなり違いましたか?

風間:も~全然踊れなかったし、全然歌えなかったです(笑)。

梅田:わかる~~~。

西川:はははは。

風間:ただ、お芝居のほうは、大貴くんが役者目線で「ホントはもっとできるでしょ?」っていう感じでトライさせてくれるオーディションだったので。そこでなんとかしようと思いながらやってましたけど、普通のオーディションだったら、踊れない、歌えないで、絶対落ちたと思います(笑)。でも、「こういう人たちがやろうとしているんだ、なんかいいな」って思いながら帰ったのを覚えています。

梅田:私も全く踊れなかったです。全く歌えないし。フリーで踊っている最中に、あきらめました(笑)。

風間:僕も。

梅田:普通のオーディションだったら役に近づけるように頑張るんですけど、今回はそうじゃないから。頭を切り替えて自分自身を最大限に披露できるようにしようと思って、ダンスは「これが私です!」って自分の好きなジャンルを全力で踊るのが一番いいと思ってやりました。でも、あんなにオーディション中に笑ったのは初めてかもしれない。

風間:あぁ~、踊れねーや~って。

梅田:そう。それで逆にハイテンションになっちゃって、やりきった!と思ったくらい。最大限のボルテージまでいった! 私はこれですって出せた! これで無理だったらしょうがない! って。

風間:そういう見せ方、一番苦手なジャンルで。

梅田:私も。終わった……と思った、もうやだー……って。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──西川さんは、400名を超える応募者から最終的に17人に絞るなかで、どんなところを中心に見ていたのですか?

風間:恥ずかしいな。答え合わせされるみたいで。

梅田:怖っ(笑)。

西川:風間くんはお芝居をやってもらった時点で、この役は風間くんしかいないなと思いましたね。

風間:マジで!? もうここ、太字で書いてほしいです(笑)。

西川:きたなー! よかったなーと本当に思いました。梅ちゃんとは一回共演したことがあるので、どういうお芝居をして、どういう歌を歌うのかは知ってたんですけど。オーディションのときの梅ちゃん、ホントに弾けてて。梅ちゃんて、こういう取材だと結構しゃべるんですけど、普段はわりとキュッってなるんですよ。

梅田:なります、人見知りだから(苦笑)。

西川:だけどそのときは歌もバーンとやりきってて、初めて梅ちゃんを見る人たちも「エネルギーがすごいね」みたいなことを言っていて。オーディションの映像はダレン(・ヤップ/今回のスーパーバイジング・ディレクター)にも全部送ってたんですけど。ダレンも全員に対して項目ごとに「これはいい」「ここはまだ未熟だね」「でもこういう可能性はある」ってコメントをつけてくれてたんですね。で、梅ちゃんに関しては「She has crazy power」って。

全員:あっはははははは。

梅田:何それ! ヤバイ!(笑)

西川:めっちゃいい意味でですよ。「彼女はどこかクレイジーなエネルギーを持っている。エキセントリックガールだ」みたいな。

梅田:初めて言われた、嬉しい。めっちゃ、ありがたい。

西川:今回はトライアウト公演ということと、僕の好みでもあるんですけど、「これはどうだろう」みたいな探究心がある、挑戦を恐れない人とご一緒したいと思っていて。それはオーディション中もより強く思ったし、今稽古していても、そういう方にお願いしてよかったなって日々思っていますね。

オリジナル作品=自分がやる役に前例がいない自由さ


──オーディションを経て、実際に役をもらったときはどう思いました?

風間:最初、脚本読んだときは訳がわからなかった(笑)。

西川:あっははははは。

風間:えっ……? 何が起きてるんだろう……みたいな。もともと僕、脚本を読むのが上手くないみたいで。正直、本読みが始まるまで腑に落ちない感じだったんですけど、人の声でセリフを聞いて「こういうことなのかも」とわかっていく感じでした。本読みのときにダレンが「君たちのクリエイティブなものをどんどんぶつけていい。この脚本はまだ完成じゃない、君たち一人ひとりが役作りをして、それでやっとこの本が完成するんだ」って言ってくれたんですね。僕、普段は演出家のイメージを理解して、それに近づけていこうとするほうなんですけど、今回はダレンがそう言ってくれたのでトライしようと思って。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

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梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──すると役作りに関しても、いろいろ意見を言われて?

風間:結構恥ずかしいんですよ、みんなの前で「こういうふうに思ってるんだけど」って役作りの説明をするのは。でも今回はそれをやってみようと思いました。僕、普段はこっそり練習しているほうが好きなんですけど(笑)。

梅田:私はやったことのない役だって思いました。今までは受け身タイプの可愛い……。可愛いって自分で言うの気持ち悪いですけど(笑)。

西川・風間:あっははははは。

梅田:気持ち悪いけど。か~わいい!っていうヒロインっぽい女の子役が多かったので、今回のように自分から「聞いて聞いてー!」みたいな役ってやったことがなくて。普段も誰かをリードすることはないし、むしろついていったほうが楽だと思うほうだし、AKB48でキャプテンをやったときも、「みんな、聞いて……」みたいな感じだったし。でも今回の役をもらったとき、大貴さんに「梅ちゃんもそういうとこ、あるじゃん」って言われて、めっちゃバレとると思ったんですよ。うまく隠してたつもりなんだけど(笑)。とはいえ普段の生活で自分が主導権を握ることがないので、自分のなかで一段階ギアをあげるみたいなのが難しいですね。ただ、裏もちゃんとある、可愛いだけじゃない女の子をやること自体、日々トライって感じで新しいです。そのぶん、心折れることもめちゃめちゃあるんですけどね、演じながら「あ、今のは違ったー……」とか思ったり。

西川:梅ちゃんの心が折れた瞬間、めっちゃわかりやすいですよ(笑)。

梅田:言っている感情と思っている感情が全然違う、なんでできないんだろうって思うんですけど。今までにやったことがない役だから単純にすごく楽しいです。新しい自分を見れている気がするし。いい意味で自分とすごく近いなって思う部分もいっぱいあるので。もっと試行錯誤したいなって思っています。

──それくらい今までとは違うということなんですね。

梅田:とにかく自由さが違います。決められたなかでお芝居をしないので。オリジナル作品=私がやる役に前例がいない、っていうことだから、誰かと比べられることもないし。私が最初にこれをやるんだから好きなようにやってみよう、みたいな自由さはすごくあります。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──その自由さが不安材料になる場合もあるのでしょうが。

梅田:あります。めっちゃ不安です。でも不安定なほうが何事もいいかなって思ったので。楽しみながらやってます。

──元々トライするのが好きなほうですか?

梅田:好きだし、たぶん大貴さんの作品だからできるんだと思います。尊敬してるし信頼してるし、大貴さんのお芝居も歌も全部大好きだから。

根本にあるのは、小劇場から大劇場にあがるっていうパワー


──ところで今回の作品なのですが、台本を読ませていただいたのですが、まだちょっと見当がつかない状態で。読み方が悪いんだと思っていたので、先ほどの風間さんのお話を聞いてちょっと安心しました(笑)。

風間:でしょ?(笑) どういう意味なんだろう~~~って。

西川:僕の脚本、毎回、それしか言われたことないんです。絶対、これどういう意味なんですか?っていうところから始まる(笑)。

──今回に限らず。

西川:限らず、毎回。やはりミュージカルなので、説明的なことはそこそこにしたほうが仕上がりが面白くなると思うんですよね。

──では最後に、今回の作品に関して、他にはない面白さなど、見どころをお話しいただけますか?

西川:オフからオンへとか、トライアウトっていう企画も実験的なので、すごく小難しい、とんがったことをやろうとしていると思われる方もいるかもしれないですけど。ミュージカルのジャンル的にはキャッチーな曲もすごく多いポップソング・ミュージカルなので、ミュージカルファンの方にも楽しんでいただけるものを目指しているつもりなんです。また逆に「ミュージカルはちょっと……」という方にも、こういう攻めた企画もあるんだよということで観に来ていただきたいですし。どちらの方にも来ていただきたいなと。

風間:根本に小劇場から大劇場にあがるっていうパワーがあると思うし、DDDには収まらない、もっと大きなところで観たいと思えるような、圧倒的なパワーを感じながら稽古をしています。大貴くんが言ったように堅苦しいものではなく、客席までの距離が近い劇場でもあるので、パフォーマンスも歌も肌で感じられるようなエネルギーのある作品になるんじゃないかなって思います。また、話の内容も、経験したことだったり、自分に重なる部分も詰まっていると思うので、ぜひ若い人にも観てもらいたいなと思うんですよね。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

西川:今回、U28チケット(28歳以下は本公演が4,500円)もありますし、1stプレビュー公演は3,500円ですからね。

梅田:ほんとだよねー。

──びっくりしました。

風間:そういう意味でもいろんな方に観てもらいたいです。ミュージカルファンの方にも、僕らと同じ世代にも、お父さんお母さん世代にも。ちょっとこう懐かしさだったり、胸がグッとなるようなところもあるので。あと、僕の役に関して言うと、人に会うときは上っ面でしか生活してないけど、自分の気持ちを本音で歌っている曲がいくつもあって。なかでも母親と歌う曲は印象に残りますね。自分のなかで閉じていた蓋を自分で開ける怖さだったり、それと向き合う気持ちの出ている歌で。その葛藤や喜びみたいなものを、上手く表現して伝えていけたらと思っています。

梅田:私は他の仕事の都合で稽古に遅れて入ったんですけど、みんなの本読みを見て、なにこれー! めっちゃ観に行きたい! と思ったんです。しかも最初の風間くんの曲で泣きそうになって。

風間:それは嬉しい。

梅田:なんか自分のプライベートの感情と重なって。そういうことってあると思うんです。ミュージカルを観に行って、話の内容で泣くこともあるけど、自分に重ねて、私にもこういうことあったって泣けることも。だからこれを観に来た人にも、その二つを感じてもらいたいです。そういう意味でのリアルさが出ればいいな、とも思ったし。プラス、海外発のミュージカルが多いなか、日本発のミュージカルってすごく少ないし、周りの友達とかが「海外のほうがいいよね、日本人がやるより」みたいに言っているのを聞くと、悔しいんですよ。いや、日本人だってやれるし! お前だって日本人だろ! と思ったりするんですけど。だから、日本人の底力というか、日本人がマジで集まったら、ガチでこんだけできるんだぞ!っていうのをやりたいなって稽古しながらすごく感じて。本番のときにもっともっとブラッシュアップされた良いものを届けたいなって思っています。なので、超オススメです!

西川:めっちゃいいこと言うじゃん。

梅田:嘘! 嘘! ほんとに?

西川:締まったわー、すげえなー。まとめたなー(笑)。さすがオリジナルキャスト。

風間:ホントに公演を観た人が観たことを誇りに思えるように、作品が大きくなったらいいと思いますね。

西川:余談ですけど、オリジナルキャストっていうのも、もっと尊重されるようになってほしいんですよね。だって脚本で完結するものなら演劇にする必要はないし、音楽が入って化学変化が起きないならミュージカルにする必要もないと思うんですよ。それにはオリジナルキャストの力が本当に大きいと思うので。

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

──日本発のオリジナル・ミュージカルというものも、あまり目にしたことがないので、そこも素敵ですね。

西川:少ないと思います。最近、ミュージカルブームみたいなところがありますけど、それこそ僕がアルゴミュージカル(小椋佳が企画したジュニアミュージカルで2002年から3年連続で出演。基本的にオリジナル作品を上演)とかやっていた頃に音楽座ミュージカルさんだったり、劇団四季さんが日本のオリジナルのミュージカルをたくさん作られていて。むしろその頃のほうがオリジナル作品はいっぱいあったんじゃないかと思います。でも今はオリジナル作品が作られても、10人以下のキャストで、小劇場で3~4日で上演が終わってしまう公演も多くて。そうなってしまうと、次につながっていきにくいので。もちろんそういうのも大事だし、小さい劇場でやるミュージカルも好きなんですけど、それと同時に日本のクリエーターによるスケールの大きい作品も増えてほしいって、本当に思うんですよね。

風間:なかなか強気な記事になりそうですね(笑)

梅田:ホントだ、イエィ!(笑)

西川:僕らもクレイジーパワーで頑張りたいです(笑)



公演概要


ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

梅田彩佳・風間由次郎「日本人の底力を」  実験的で挑戦的なミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

【脚本・演出】西川大貴
【音楽】桑原あい
【振付】加賀谷一肇
【スーパーバイジング・ディレクター】ダレン・ヤップ

【キャスト(五十音順)】
天羽尚吾 猪俣三四郎 上田亜希子 梅田彩佳 岡村さやか
奥村優希 風間由次郎 加藤梨里香 塩口量平 四宮吏桜 関根麻帆
寺町有美子 橋本彩花 深瀬友梨 溝口悟光 宮島朋宏 吉田要士
※スウィング制度により、出演者は変更となる場合があります(詳細は公演公式HPを参照のこと)

ピアノ演奏:上浪瑳耶香/森本夏生

【会場】
DDD青山クロスシアター

【公演日程】
・1stプレビュー公演
2019年11月15日(金)~11月18日(月)
・2ndプレビュー公演
2019年11月23日(土・祝)~11月26日(火)
・本公演
2019年11月30日(土)~12月15日(日)

【チケット】
1stプレビュー公演¥3,500、2ndプレビュー公演¥4,500、本公演¥6,000(すべて全席指定・税込)
他、サポーターズシート、プレビュー本公演Wチケット、U28チケットあり
※未就学児入場不可

【チケット予約・問い合わせ】
チケットスペース(TEL.03-3234-9999)
https://ticketspace.jp/

【公式サイト】
https://www.bokunojidai.com/

【企画・主催】
シーエイティプロデュース

<あらすじ>
子供の頃、父からもらった1本のビデオテープ。そこには華やかなステージが映し出されていた。
「いつかそこに自分も立ってみたい……」

令和元年。主人公・戸越は満員電車に運ばれ、無気力な同僚達に囲まれ、窮屈な東京の片隅で、楽しくない毎日を送っている。

出張で伊豆へ行くよう命じられた戸越。駅に降り立ったが、あたりの様子がおかしい。奇妙な格好をした人間しかいない。おまけに携帯の電源も入らず彼は途方に暮れる。
「それなら天狗様に会いに行くしかないなッ!」

どうやら伊豆には全知全能の天狗様が住んでいるらしく、周りに流されるまま戸越は旅に出ることになってしまう。

そこに現れたのは、すっとこどっこいの3人組。仲間にすることを拒む戸越だったが、きびだんごガールズの活躍により、彼らは天狗の街に辿り着く。なんとそこはエンターテインメントの歴史が詰まった、妖怪達の街だった。
「昨日は小津安二郎、今日は黒澤明を見るんだッ!」「見て、ひこうき雲よッ!」「さあDOWN TOWNへくりだそうッ!」
彼らを待ち受ける困難に次ぐ困難。遅いかかかる妖怪とカピバラとペリー(黒船来航)。はてさて、奇妙な旅はどうなっていくのだろうか!?

乞うご期待!! ドドンッ!!