ストーリー原案&脚本を担当した冲方丁インタビューの後編では、本編終盤の展開のネタバレにも触れながら、引き続きシナリオ制作の過程を追っていく。
(前編はこちら)

最終的には何かすごいかっ飛んだ物を観たと思わせられる作品に
──さまざまなスタッフの意見も取り入れながらシナリオ作業を進める中、冲方さん自身がここだけは譲れない、これだけは描きたいと思ったのは、どんなことですか?
冲方 僕がこうしたいというよりも、(作品として)こうするしかないだろうと思ったことはあって。ある意味、社会と対立しながらも、その社会を守るのがダークヒーローなので、葉藏がダークヒーローへの道を歩んでいく上で、どのように社会と対立していくのかは重要でした。でも、葉藏自身は社会なんてどうでも良いと思っている人間なわけです(笑)。
──元々は、バアの2階の部屋に引きこもって、薬と酒に溺れながら一人で絵を描いてるような青年でした。
冲方 社会どころか、自分自身のこともどうでも良い存在だと思っている。でも、急に他人(美子と堀木)に認められて自分に価値を与えられ、「お前はこうすべきだ」と言われたことで彼のドラマが始まっていく。最後まで、そのドラマに殉じる姿を描かなくてはだめだろうと思っていました。要は、自分の意志ではなかなか動けない主人公だけれど、最後には自分の意志で道を選ぶことができる。そういう葉藏のドラマからぶれてはいけないなと。その上で、最終的には何かすごいかっ飛んだ物を観た、と思わせられるような作品にしなければいけないな、とは、ずっと思っていました。