嘘の下手な四宮
黒澤杯卓球大会から振り返っていきたい。卓球を利用して渦中の人物の全てを聞き出そうという、嫉妬に駆られた黒澤武蔵(吉田鋼太郎)の作戦である。

武蔵をはじめとし、各人物は心中を晒していく。特に抑えの効かなくなった武蔵は自発的だ。問題は、バースデーパーティの主役・四宮要(戸次重幸)である。気持ちを隠そうとする彼なのに、自分の意に反して春田創一(田中圭)への想いを明かされ、苦しむ姿が切ない。本人は「今のままでいい」と言っていたから尚更だ。ただ、ヒートアップした武蔵が勢いに任せてばらした(アウティング)のではなく、成瀬竜(千葉雄大)の口から明かされたのはまだ救いがあった。彼は彼で四宮を見ていられなかったのだろう。こうして、鈍感な春田も四宮の本心にようやく気付いた。
春田 「俺なんかの、どこが……いいの?」
四宮 「ハハッ、バーカ。誰がお前なんか。あいつの冗談に決まってんだろ」
切なすぎる会話。
成瀬の四宮への想いは恋心か、理想の父親像か
あのタイミングで卓球大会を開催したことは意義があった。「4人の矢印はこの方向へ向いていますよ」と整理し、まとめる役割を果たしていたからだ。「アンタの話だよ!」と成瀬に怒鳴られることで、ようやくモテモテの自分に気付いた春田。成瀬も傍観者的な立ち位置を示した。このイベントを経て、各矢印はさらなる動きを見せ始める。
まず、成瀬についてだ。第4話で彼は髪型を変え、キャラも変わった。心も見た目もイメチェンした成瀬。
成瀬は四宮を前にすると様子がおかしくなる。徹夜で飛行機トラブルを見つけんとする整備士に差し入れを持っていき、四宮から「可愛いな、お前」と言われドキッとした成瀬。飛行機の知識を四宮に褒められ「これからもよろしくな、未来の機長さん」と頭をポンポンされる場面はハイライトだった。上目遣いになり、照れた子どものような表情になる成瀬。
彼は父親とまともな親子関係を築くことができなかった。確かに、成瀬と四宮はいい雰囲気だった。
誰とでもキスする成瀬が春田のキスを拒む
春田に気持ちを許した成瀬。でも、これは恋愛感情ではなく“友人として”というエクスキューズが付く。一方の春田は、成瀬が四宮に身を寄せて仮眠する姿にもやっとした。成瀬のために入手した古墳展のチケットもグシャッと握りつぶしてしまったし。
次回予告で衝撃的な映像が流れた。「俺じゃダメか?」と春田が強引に成瀬にキスしていたのだ。だが、受ける側の成瀬をよく見ると、唇をキュッと閉じている。「キスなんて誰でもしますよ」と言っていたはずなのに、らしくない態度をとった成瀬。
成瀬は春田のおかげで変わり、四宮への想いが隠せなくなった。そして、その変化は春田を変えることにも繋がっている。春田は四宮の自分への想いを知りながら、彼の気持ちを受け止められないでいる。それどころか、四宮は嫉妬の対象になった。公式ホームページに書かれてある通り、「全員一方通行の恋」が今の状況だ。
前シリーズの「春田と牧の物語」は最高だった。あれ以上のものはない。in the skyは同じ道を歩まない。誰かと誰かが結ばれれば、傷付く者が他に出てくる。春田が傷付く可能性も大いにある。
(寺西ジャジューカ)
土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
音楽:河野伸
主題歌:sumika『願い』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
※各話、放送後にビデオパスにて配信中