ライブ終盤では、月ノ美兎、樋口楓ら4名のメジャーデビュー、数々の人気曲を手がけてきたクリエイター陣も参加するにじさんじオリジナルフルアルバム発売、全国Zeppツアー開催といった新情報を発表。2020年からの本格的な音楽シーン進出を印象づけた。
今回は、全23曲、約2時間40分の公演をダイジェストでレポートする。

戌亥とこ、歌声で両国国技館の時間を止める
ライブは、MCを挟んだ5つのパートとアンコールで構成。各ライバーはソロ曲とコラボ曲を歌っていく。
第1パートの出演者は、剣持刀也、勇気ちひろ、椎名唯華、笹木咲。笹木は、にじさんじの全動画中最多の約346万7000回再生されている替え歌動画「笹木は嫌われている。」の原曲「命に嫌われている。」をカバーした。

第2パートの出演者は4人全員が3Dモデル初披露。
夢月ロアは、13歳の悪魔。スタイルの良さが際立つ3Dの身体で、男女の駆け引きを描く「恋愛裁判」を歌ったが、初めて披露した歌声も普段の配信で聴く話し声より大人っぽい雰囲気を感じた。
鈴原るるは、柔らかい口調で話しながら、高難度のゲームに長時間挑み続ける配信で注目された女子大生ライバー。歌ったのは、「secret base〜君がくれたもの〜」(夢月ロアとのデュエット)と、アニメ「時をかける少女」の主題歌「ガーネット」。

第2パートの4曲目、戌亥とこが「小さきもの」をアカペラで歌い始めると、常に大きな歓声とサイリウムで演者を出迎えていた観客が静かになる。冒頭のアカペラパートが終わっても静かなまま。大きな歓声が聞こえ、サイリウムが激しく振られたのは、戌亥が歌い終えた後だった。

戌亥の歌声の余韻を断ち切る明るいイントロと一緒に、女子大生ライバー御伽原江良が登場。戌亥と一緒に「オトモダチフィルム」をデュエットした。御伽原からのラブコールを戌亥がスルーするため、ネットを介したコラボしかしてこなかった二人が同じ空間に並ぶ。終盤、「会いたかったよ」とデレも見せた戌亥だったが、曲が終わると「はい、終わり。おつかれー」と退場。

一人残された御伽原のソロ曲は「おねがいダーリン」。早口のセリフパートをミス無くこなし、歌声は可愛いく、ダンスにもキレがあり、まさにバーチャルアイドル。残念ながら、今回は曲の途中で終了となったが、ぜひまた観たいと思わせるステージだった。
道化師ジョー・力一のロングトーン、両国に響く
第3パートは、静凛、鈴鹿詩子、森中花咲、えるの4人が出演。えるのソロ曲「MESMERIZER」は初披露のオリジナル曲。配信での賑やかな印象とは異なる歌声で会場を沸かせる。

第4パートの1人目は、女性人気も高い美声の道化師ジョー・力一(りきいち)。ソロ曲は、布施明の「君は薔薇より美しい」。以前、投稿したネタ動画(股間のアップで終わる)で歌った昭和歌謡を真面目に歌う。力一は、サビの「変わったー」を一緒に歌って欲しいとアピール。客席も巻き込んだ「変わったー」の合唱が繰り返されるが、ラスサビでは10秒近いロングトーンを披露。ファンの歌声は途中で振り切られ、歓声へ変わった。
にじさんじの看板ライバー「委員長」こと月ノ美兎は、VTuberアニメ「バーチャルさんはみている」のOP「あいがたりない(feat.中田ヤスタカ)」をソロでセルフカバー。配信では、マニアックなネタでリスナーを驚かせることも多いが、ライブでは小柄な身体で踊る姿も歌声も可愛らしい夢のバーチャルアイドルだ。
力一&委員長がどんな曲を歌うのか想像していると5人のライバーが登場。センターの力一の左には、月ノ美兎と樋口楓。

豪華メンバーのコラボ曲でも主役だったのは力一。昭和歌謡からラウドロックに変わったことで歌声はさらに力強い。メインボーカルを支える4人のダンスとコーラスも個性的。小林ゆう(木村カエレ役)ポジションの樋口は、本家に負けじと激しくシャウト。鈴原は、激しい曲調でも一つ一つの動きが美しく、歌声も可愛さを失わない。ラストには、力一が再びロングトーンを響かせた。
にじさんじライバーがメジャーレーベル4社からデビュー決定
委員長、樋口、力一の3名のMCパートでは、5人でのコラボが実現した経緯などが明かされた。「林檎もぎれビーム!」の選曲は力一の希望で、絶望少女達をやってくれるメンバーを募集したそうだ。激しいダンスを披露した委員長は、練習で腰を痛めたことを明かし(本番までに完治)、力一が長身を折りたたむようにしながら手を合わせて感謝する一幕も。
続いて、月ノ美兎、樋口楓、森中花咲&御伽原江良のユニット「petit fleurs」の3組4名のメジャーレーベルデビュー決定が動画で発表。森中と御伽原も再登場し、メジャーデビューに対する思いなどを語った。

「大好きだった」アニソンレーベルLANTISからのデビューが決まった樋口は、来年発売されるデビューシングルの収録曲「MARBLE」を先行初披露。アニメのOPにもなりそうな疾走感あるメロディは、樋口のボーカルと好相性。1stワンマン「KANA-DERO」をはじめ大きな舞台に何度も立った経験からか、ステージを広く使いながらファンを煽って引き込むスキルも高い。
ライブ本編は、樋口楓、月ノ美兎、静凛の人気ユニットJK組による「dream triangle」で締めくくられた。

アンコールには出演者が全員集合。ライブのタイトルであり、にじさんじのアンセムとしても定着しつつある「Virtual to LIVE」を歌って、2度目の単独ライブを終えた。
会場の照明が落ちた後、スクリーンに「にじさんじより重大発表!」の文字が。
まずは、メンバーはまだ秘密のユニット「Rain Drops」がユニバーサルミュージックのレーベル「Virgin Music」からデビューすることを発表。
続いて、2020年春のにじさんじオリジナルフルアルバム「SMASH The PAINT!!」発売も発表。豪華クリエイター陣と22人のライバーの組み合わせも紹介された。
最後に、全国Zeppツアー「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」の開催決定も発表。
ファンにとっては今年最後の運試しともいえるチケット争奪戦は、すでに始まっている。
(取材・文=丸本大輔)