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本当に遅延すみません。
なんか年末年始で、曜日の感覚ないですが、次の締め切りは3日後です。
げぼー!良いおとしを~
毎年、年末になると必ず聞かれる事がある。
あなたにとっての今年の漢字は?
毎年悩むが、今年は簡単だ。
「遅」
だ。
去年は「糞」だったが、今年は断トツで「遅」である。
恐らく、電車やバスの運転手さんより「遅延」とゆう言葉を使ったんではないだろうか。
実際これも一日遅延している。
不思議なもので、あんなに半年間苦しめられた憎き遅延も、本日で遅延納めだと思うと少し寂しいものがある。
↑
ここまでの文は、12月26日の深夜の僕が書いたオジスタグラムの冒頭だ。
文からわかるように、27日に、本来の更新日(毎週木曜)から一日遅れで更新する予定で、26日の深夜の僕は書いていたのだろう。
結果、27日にオジスタグラムが更新される事はなかった。
こいつがここまで書いて寝たからだ。
意味がわからない。
終盤まで書いて安心感から寝るのはまだわかる。
この文のどこに寝れる事があるのだろうか?
僕は26日の深夜の僕を本気で軽蔑している。
「不思議なもので」
「本日で遅延納めだと思うと少し寂しいものがある。」
は?
元来こんな書きかけの文を載せるべきではない。
年末らしく今年を振り返ったりしたかったが、
これは自分への罰として載せるしかないと思ったのだ。
勘違いしないで欲しい。
これはエンターテイメントではない。
公開処刑だ。
来年は遅延しない為の前向きな処刑だと思って頂けたらありがたい。
さて、続いて処刑するのは12月28日の早朝の僕だ。
28日早朝の僕が書いたオジスタグラムがこれだ。

↓
今年は本当に遅延に悩まされた一年だった。
書くのは好きだし、書きたいのだが、気付くと遅延しているのだ。
遅延すると、焦って元来書きたい事が書けなくなったり、誤字も増える。
しかし、遅延の恐ろしさはそこではない。
遅延は次の遅延を呼ぶのだ。
そりゃそうである。
出来たと思ったら、すぐ次の遅延が迫っているのだから。
いつしか僕は締め切りの事を遅延と呼ぶようになっていた。
秋頃、その状態を見かねた締め切りの鬼から手術を勧められる。
アメリカに遅延の名医がいるらしい。
手術の成功率は50%。
成功すれば、二度と遅延しない身体になるが、失敗すれば二度と締め切りを守れない身体になる。
脳の遅延を司る部分「延馬」を切除
↑
ここまで書いて、28日の早朝の僕は力尽きた。
これは酷い。
恐らくプロ野球選手の肘とかの手術になぞらえて書いてたのだろうが、途中から楽しくなったのか、完全にただの嘘だ。
なんだ、脳の遅延を司る部分て。
気持ち悪い。

そして、これが29日深夜の僕だ。
↓
遅延のない世の中に産まれたかった…
↑
もう遺書だ。
処刑するまでもない。
もうすぐお正月だとゆう、めでたい時に長々とお恥ずかしいところを申し訳ない。
しかし、皆様がこれを見てくれたお陰で、こいつらは死んだ。
本当だ。
来年からはいい僕が産まれてくる。
楽しみだ。
皆様も年末にお時間あったら、こたつに入って今年の自分を殺してはいかがだろうか?
意外とすっきりするのでお薦めでございます。
では、オジスタグラムにまいりませう。
聖夜の焼き鳥屋
本日のおじさんは、聖夜に出会ったおじさん、弘道さん。
クリスマスイブ。
友人のおじさんと二人で、聖夜のおじさんの生態調査に向かう。
そいつの話では東日本橋にうまい焼き鳥の店があるらしい。
焼き鳥があるとゆう事は、臓物がある。
臓物があるところにおじさんが集まるのは、オジスタグラマーの間ではもはや常識だ。
オジスタグラムを始める前は、年中休みみたいなもんなんだから、カップルの多い日にわざわざ外なんか出ないでいいと思っていたが、
オジスタグラムを始めてからは、どんなイベントの日もおじさんは何をしてるかにしか気になって仕方ないのだ。
16時に店に到着すると、もう2人くらい並んでる。
これは並びながら仲良くなってのパターンだと思って、急いで列の方に走る。
しかし、そんな甘くはない。
おばさん二人組だ。
そりゃそうだ。
臓物はおじさんだけのものではない。
カブトムシがいる木にはクワガタもいる。
友人が言うには10人くらいしか入れない立ち飲み屋で、注文とかゆう概念はない店らしい。
17時に開店して、全員にコースのように同じ焼き鳥が順番に出され、最後に気に入ったものを一つ頼めるシステムだそうだ。
なんて粋なんだ。これは粋なおじさんが集まるぞ。
友人に店の説明を受ける時間にも、列は伸びていく。
おばさん、お兄さん、老夫婦……。
お腹もすいたし、期待は高まるばかりだ。
おばさん、おばさん、おばさん……。
「おい!騙したな! これ、おばさんの店だろ!」
僕は友人に掴みかかる。
「なんだよ!おばさんの店って! そんな店ねーよ!」
「……すまん」
「たまたまおばさんが多い日に当たったんだよ」
地獄クリスマスだ。
道理で立ち飲み屋
そうこうしてるうちに、開店する。
厨房を囲んでコの字型の雰囲気のある店だ。
一つ目の、生で食べれる鳥のつみれみたいなのを食べた瞬間、僕はもうおじさんとかおばさんはどうでも良くなった。
うまい、うますぎる!
道理で立ち飲み屋にしてる訳だ。
こんなの座りの店だったら、みんなスタンディングオベーションで仕事にならない。
そこから次から次に出てくる料理はどれもバカみたいにうまかった。
語彙力があればもっと素敵な表現にしてるのだろうが、僕はこれしか言えない。
バカみたいにうまかった。

コースなので、1時間くらいで店を出る。
酒と掟が支配する街「京成立石」もそうだったが、うまい店は長居させてはくれないのかもしれない。
大満足だ。最高のクリスマスイブだ。
いや、違う違う!
そこで目的を思い出す。
僕はおじさんの生態調査に来たんだ。
このままだと、知らないおばさん達とバカみたいにうまい鳥を喰っただけだ。
ただの365分の1
目的を思い出した我々はあてもなく歩き出す。
この辺はオフィス街なのだろうか、クリスマスの装飾もほどほどに、仕事帰りの疲れたおじさんとしかすれ違わない。
30分くらい歩いただろうか、大きな橋を渡ると、街の感じが変わる。
看板を見ると「清澄白河」と書いてある。
下町情緒のあるこの街には、クリスマス感が全くない。
装飾もなければ、それを売りにしてる店もない。
なんなら人もそんなにいない。
道行く人全員、ただの365分の1を暮らしている。
ダメか、ここも。
諦めかけたその時、居酒屋からおじさんの鳴き声であるバカみたいに大きな笑い声が聞こえる。
「い、いたぞー!」
僕達は満席の店内の大きなコの字型カウンターに通される。
おじさん、おじさん、おばさん、おじさん、おじさん、おじさん……。
クリスマスらしい装飾なんて何もない大衆居酒屋だが、随所にクリスマスを感じる。
ローストチキンを食べるおじさん。髭もじゃのおじさんの。真っ赤な鼻のおじさん。謎のお札の神棚….。


最高の景色だ。
僕達も瓶ビールで乾杯する。
「乾杯ー!」
「メリークリスマスー!」
ワインを飲みながら
ビールを飲みながら、店内を見回すとほんとに色んな人がいる。
作業着を着た40歳と70歳くらいの親子が鍋をつつき、なぎら健壱さんにそっくりなおじさんが千葉真一さんにそっくりなおじさんにお酌をしている。
カップルなんて一組もいない。
横にはワインを飲みながら、一人鍋をつつくおじさんがいる。
ん?
僕はワインを飲みながら、鍋を食べてる人を生まれて初めて見た。
話しかけるしかないだろう。
「クリスマスだからワインなんですか?」
「ん? 違うよ!関係ねーよ!ガハハ!俺は年中ワインだ!」
長くなったが、このお方こそ弘道さんだ。

半年くらい「オジスタグラム」をやってるが、ワイングラスと乾杯したのは初めてだ。
弘道さんはこんなどこの馬の骨かもわからない僕達にも気さくに色々話してくれた。
「ガハハ! じゃ、二人とも彼女もいねーのか?」
「そうなんすよー」
「えー、情けねぇなぁ!ガハハ! 俺が兄ちゃん達くらいの時はとっかえひっかえだったぞ! ガハハ!」
「ヘケケケ!ほんとですかー! 弘道さん、とっかえひっかえ顔じゃないでしょー!」
「おい! どっからどう見ても、とっかえひっかえ顔だろ! ガハハ!」
弘道さんはギャップが凄い。
ワイン飲み顔じゃないのに、ワインを飲むし、とっかえひっかえ顔じゃないのに、とっかえひっかえしてたらしい。
弘道さんは意外性の塊だ。
「えー!!まじっすか!」
「まじよ、まじ。カナダに2年くらい」
「2年も留学ですか!じゃ、英語とかも喋れるんですか?」
「Yes!」
「お~!! いや、お~じゃないですわ!ヘケケ!」
「ガハハ!」
うちのホームステイ先
弘道さんがとっかえひっかえな理由もわかってきた。とにかく愉快なおじさんなのだ。
「もう今はほとんど喋れないけどな」
「だからワインなんですね!」
「そうそう、向こうで覚えたのよ! ホームステイ先で毎晩飲んでてさ」
「そうなんすね。それこそ、向こうのクリスマスとかめっちゃ祝うんじゃないんですか?」
「あぁ、多分そうだろうな」
「多分?」
「うちのホームステイ先は一度もクリスマス祝った事ないんだよ」
「え?」
「これが凄い話でよ…」
凄い話をすると言って、話し始めてうまくいった人を見たことないが、これが本当に凄かった。
「ちょうどホームステイして、すぐに1回目のクリスマスがあったんだけどよ、そん時は言葉も喋れないし、ああこの家はやらないんだくらいに思っていたのよ」
「ほうほう」
「で、2年目のクリスマスがやってきて、今年はやるのかなと思ったら、また全く何にもやらないのよ。ほんとに普通の平日の一日でさ。で、友達とかに聞くと、向こうでそんな家はないっぽいの。宗教とかのそうゆうのでもなさそうだし、お父さんもお母さんもいい人だったから、思いきって聞いてみたんだよ」
「なんか緊張しますわ」
「お父さん、お母さん、何でうちはクリスマス祝わないんだ?って」
「……ごくり」
「そしたら、なんて言ったと思う?」
「……なんと?」
「昔、うちの身内がトナカイに殺されたからだよ。って」
「えー!!!」
「まさかそんなんある訳ないと思うじゃねーか! すぐに、sorryって言ったよ」
「ガハハ! 凄い話ですわ!」
「で、なんか気まずくなって日本に帰っちゃった。ガハハ!」
「ヘケケケ!」

おじさんは凄い
クリスマスイブにとんでもない話を聞いた。
弘道さんが言うには、トナカイはそんな獰猛な動物ではないみたいだ。
もしかしたら、車で運転中にトナカイが出てきてとかなのかもしれないし、直で角なのかもしれないし、凄くそこが気になったが聞けはしなかったらしい。
そりゃそうだ。
もしくはアメリカンジョークなのか、カナディアンギャグみたいなのがスベっただけの可能性もある。
身内をトナカイに殺された話。
想像は膨らむばかりだ。

おじさんはやはり長年生きてらっしゃるので、一つや二つ想像も出来ない話を持っている。
お正月で親戚との寄り合いに行く人は、親戚のおじさんに、今までで一番びっくりした話なんか聞いてみるのもいいんじゃないだろうか。
では皆様良いおとしを。

(イラストと文/岡野陽一 タイトルデザイン/まつもとりえこ)