なので、簡単なおさらいをしておきたい。ちなみに、前々作の主人公の上戸彩は、微塵もでてこなそう。

前作のおさらいとキャラ紹介
物語の肝になっているのは、あらゆるビッグデータから未然に犯罪を犯しそうな人物を特定する通称"ミハンシステム"だ。ミハンシステムの的中率は95%で、警察の秘密組織である「未然犯罪捜査班」(通称・ミハン)はこれをもとに事件を未然に防ごうと奮闘する。
そのリーダーが元公安のエリート井沢範人(沢村一樹)だ。井沢は妻と娘を殺された過去を持っており、飄々とした性格でありながら、犯罪者に対する怒りが暴発してしまうこともしばしば。前作のラストでは、妻子が殺された事件の黒幕を追い詰め、殺す寸前のところまでいってしまう。
山内徹(横山裕)は、前シリーズで捜査一課から新入りとしてミハンに加入。ミハンシステムやミハンならではの違法な捜査に戸惑うツッコミ兼リアクション役としてもストーリー展開に貢献した。新シリーズでは、キャリア組で新人の吉岡(森永悠希)がリアクション役を担当している。
小田切唯(本田翼)は、高校時代に男性に襲われたことで男性恐怖症になった女性刑事。その反動から生まれる、男性を相手にしたときの粗暴なアクションが魅力。トドメはだいたい金的。
井沢の妻子の事件を本筋に、一話完結で物語は進行。普段は良い人である井沢の内に秘められた復讐心が描かれた。「井沢は殺ったのか? 殺らなかったのか?」が最大の見どころだったと記憶している。
新シリーズは、少しばかりの説明こそあるものの、第1話から上記が"前提"となってストーリーは進行していくので、初見の人はだいぶ置いてけぼりを食らったように思う。
なんなら、前作のレビューを書いた僕でさえ、ついていけない場面がいくつかあった。小田切が男性に襲われてどうなったとか、井沢がなぜ殺人を思いとどまったのかとか、ハッキリ覚えている人ってどれくらいいるんだろう?
沢村一樹の女性射殺事件
今回始まった新シリーズも、「井沢は殺ったのか? 殺らなかったのか?」が本筋のようだ。
オリンピックまで130日の東京サミット当日、とある場所に爆発物が仕掛けられた。小田切が銃声のあった場所に駆け付けると、井沢が血まみれの女性の前で銃を持って立ち尽くしていた。そして時は73日間遡り、第1話の事件がスタートする。
現実世界に時間を置き替えると、「オリンピックまで130日」というのはだいたいこの作品の最終回が放送されるころで、その73日前というのが、第1話が放送された1月6日ぐらい。つまり、オリンピックに向けて盛り上がっていく現実世界と、作中がリンクする形になるのだろう。ワクワクする仕組みだ。
「井沢女性射殺事件」のシーンを少し考察してみる。
銃を至近距離でぶっ放した可能性ももちろんなくないが、暴発したと考えるのが自然だろう。被害者の女性が自殺しようとした、あるいは、女性が誰かを殺そうとしたところを井沢が体を張って止めに入り、結果、女性が死んでしまった、といったところではないだろうか?
まぁ、第一話の冒頭なんてミスリードだらけで真相なんてわかるはずもないのだが、現段階で僕に推測できるのはこんなところだ。回を追ってヒントが増えて行く度に、何かしらの予測を立ててみたい。
初回からトリッキーな展開
今シリーズでは、法務省官僚でミハンの法制化に動く統括責任者・香坂(水野美紀)、元天才子役でミハンの新人・吉岡、南(柄本時生)に代わる凄腕ハッカー・加賀美(柄本明)ら、新キャラクターが新たに登場した。親から子にタッチは見かけるが、柄本親子の子から親へのリレーは珍しい。
そんな新シリーズ1発目でミハンシステムが弾き出した危険人物は、人権派弁護士の田代(中林大樹)と、服役経験を持つ風俗店店員の藤倉(篠原篤)のなんの接点もない2人。危険人物が2人というのは、ミハンシステム初のことだそう。
レギュラーメンバーの説明や、ミハンシステムの紹介もそこそこに、1話目から田代と藤倉を中心に話はガンガン展開。今話限りのキャラも次々と登場した。初めてに初めてを重ねまくる、攻めの姿勢が見える。
なんというか、ミハンビギナーサポート精神が清々しいほどにない。頼もしいような、ちょっと不安なようなドキドキする滑り出しだ。
そんな攻めの姿勢の甲斐もあり、なんと一話目から井沢の心の闇が早くも露呈する。前シリーズの最終回で見せた、真面目さと凶暴さが混在する圧巻の表情も見せた。前シリーズの最大の見せ場であり、沢村一樹の限界値点だ。1話目から本当に飛ばしまくっている。
前シリーズを楽しんだ僕は、「そう、これ!この沢村一樹だよ!」と興奮させられてしまったのだが、今作からの人はどうだったのだろう?
「何がなんだかわからない」と思ってしまった人もいるかもしれないが、とりあえず、「沢村一樹がなんかすごい!」「本田翼のアクションがいい!」とか、そんな視点でもいいから見続ければ、きっと後悔しないと思う。
(さわだ)
■「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」
出演:沢村一樹、横山裕、本田翼、森永悠希、高杉真宙、上杉柊平、マギー、粗品、水野美紀、柄本明
脚本:浜田秀哉
音楽:横山克
企画:稲葉直人
プロデュース:永井麗子、関本純一
演出:石川淳一、品田俊介、木村真人、小林義則
主題歌:家入レオ『未完成』