
現在放送中の火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系 夜10時)に、新人看護師の仁志流星役で出演している渡邊圭祐。2018年に若手俳優の登竜門と言える仮面ライダーシリーズ『仮面ライダージオウ』のウォズ役でデビューを飾ったが、実はそれ以前はほとんど演技をした経験がなかったという。そんな渡邊が役者を目指すきっかけとなった地元・仙台での出来事をはじめ、『仮面ライダージオウ』での初めての演技を振り返ってもらうのと同時に、現在そして未来に目指す役者像を語ってもらった。
ヘアメイク/Emiy スタイリング/岡本健太郎
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)
『仮面ライダージオウ』のウォズ役で、本格的な芝居を初めて経験

――渡邊さんは、大学の学園祭で運営スタッフをしていた時に、ミス&ミスターコンテストの審査員にスカウトされて、仙台のモデル事務所に所属することになったのがキャリアを始まりだったそうですね。こういった業界にはもともと興味があったのですか?
興味はありましたけど、それもあくまでもちょっとテレビに出てみたいなっていうくらい。某番組のダーツの旅で第一村人になるとか(笑)。それだけでも、地元で考えたらめちゃくちゃ有名になれますから。こういう業界って、外から見ている側からしたら、すごくキラキラして見える世界じゃないですか。たぶん、憧れない人はいないと思うんですよ。当時の僕もそんな感じで、自分から飛び込もうとまでは思っていませんでした。なので、審査員の方に声を掛けていただいたことは、すごくいいきっかけになりましたね。
――仙台ではモデルとして活動されていたそうですが、そこから役者の仕事に興味を持つようになったのは、いつ頃、何がきっかけだったんですか?
元を辿ると、就活のタイミングですね。周りが就職についていろいろ考え始めるのに対し、僕は自分がスーツを着て会社に勤める姿が想像できなくて。何がしたいんだろう? って考えて、やっぱり好きなことを仕事にしたいと思ったんです。その時はすでにモデル事務所に所属していたので、モデルを続けようと思ったんですけど、ただ続けるのは簡単だと思って、モデルとしての自分のゴールを決めることにしたです。
それがパリコレだったんですけど、パリコレについていろいろ調べてみたら身長が185cm以上と書いてあって、3cm足りないじゃんってなって……。そこで何か、道が1本絶たれた気がしてしまったんです。そんなときに仙台の事務所の人に、行ってみたら?と紹介されたのが、地元の劇団の方が主宰していたワークショップでした。そこで初めて、お芝居って面白いと思ったんですよね。


――お芝居のどんなところに惹かれたのでしょう?
普通に生活していると、自分の感情を表に出すことってなかなかないじゃないですか。それを、あるときはオーバーに、またあるときは控えめにと、コントロールして出していく。それが面白くて、役者って面白いなと思ったんです。“表現者”という意味では、モデルとそんなに変わらないのかなとも。それがきっかけで役者になりたいと思うようになりました。とはいえ、仙台にいる間で芝居に触れたのはその1回だけだったんですけど……。
――ということは、渡邊さんはその後『仮面ライダージオウ』のウォズ役でデビューされていますが、本格的なお芝居はそれが初めてだったんですか?
そうです。芝居だし、芝居のオーディションを受けるのも初めてでした。
――それはすごい!
だから、オーディションの時も、絶対に役を勝ち取る! というより、オーディションってどういうものなんだろう? って気持ちのほうが強かったんですよ。まずは経験して、それを次に活かせればいいかなって。オーディションではかなり浮いた存在だったと自分でも思うし、実際プロデューサーの方も「近所の兄ちゃんみたいなヤツが来た」と思ったらしいです(苦笑)。でも、ありがたいことに最後まで残していただいて。これは後から聞いた話なんですけど、仮面ライダーで僕が演じたウォズという役は、僕に合う役をということで後から作ってくださったんだそうです。っていう話が完全本に書いてあるらしく、ファンの方から教えていただきました(笑)。
――役者冥利に尽きますね。
本当にありがたいお話で。もし、この話を放送が始まる前に言われていたら、めちゃくちゃ浮かれてたと思います(笑)。聞いたのが終わってからでよかったです(笑)。

『仮面ライダージオウ』の撮影はがむしゃらに楽しんだ

――実際に『仮面ライダージオウ』の撮影が始まってみていかがでしたか? 初めてのお芝居に加え、そのタイミングで仙台から上京するなど、激動の時期だったと思うのですが。
たしかに、撮影が始まった2018年は、自分の周りの環境がガラリと変わりました。でも、撮影自体はがむしゃらに楽しんでいましたね。わからないことばかりでしたけど、楽しむことが何よりだと思って、それだけは忘れないようにと思っていました。
――その中でお芝居の楽しさや、逆に難しさを感じたり?
もちろんです。最初はそれこそ、台本を覚えて現場に入って、監督に言われたことを精一杯やるって感じだったのが、途中から自分の中でも考えられるようになってきて、こういうのはどうですか? と提案できるようになったり。撮影が進むにつれていろんな気づきも増えてきて、作品に対する考え方も、最初は“監督の作品”って感じだったのが、少しずつ“僕たちの作品”になっていったと思います。
――デビュー作としては申し分ないですね。
始まりとしては最高の作品だと思います。もし、この作品じゃなかったら、(役者を)続けられない……と思っていたかもしれない。ライダーをやったからこそ、この仕事の楽しさと難しさを知ることもできました。本当、この仕事は自分との戦いだなって。
――自分との戦いというのは?
例えば、台本を読んで、こういう風な芝居をしたいと思って演じても、映像になってみると全然できていなかったりとか、自分が設定したハードルを全然超えられていないことがあって。そういうとき、自分の力のなさを実感するんですけど、超えるためにはやっぱり努力をしなくちゃいけないんですよね。そのためには努力する時間を見つけて、いろんなことを自分の中にインプットすることも大切だし、それをアウトプットする時間も作らなきゃいけない。何て言うか、一生芝居について考えなきゃいけないというか。成長スピードは自分との戦いだなって思いますね。


――ちなみに、インプットとしてやっていることとは?
本を読んだり、映画を観たり。あと、普段テレビを観ていても、出演している方たちの立ち振る舞いを観たりしています。
――映画やテレビの見方が変わってきそうですね。
変わりますね。特に映画とかは、物語が入ってこなくなりました(笑)。目の動きとか瞬きのタイミング、手の動かし方を考えたりしちゃって。映画館を出る時に、結局どんな話だったんだろう? って思うことが多々あります(笑)。あと、一番やっているのが、電車に乗っている時に周りの人を観察すること。この人はどういう人なんだろう? って想像して、勝手にその人の人生を描くみたいなことをやっています。役を演じる時も、台本に書いていなくとも出身とか家族構成とかを自分で決めたりしたほうがいいと言われるので。そういう練習を普段からやっておくことも重要なのかなって思うんです。
出演中の火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』では「存分にヘタレていこう」

――そんな渡邊さんは現在、火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』 に仁志流星役で出演中です。出演が決まったときの心境はいかがでしたか?
うれしかったですね。今回、脚本の方が『ナースのお仕事』の金子ありささんなんですけど、僕、姉の影響で『ナースのお仕事』を観ていたんですよ。なので、脚本を読んだ時も、やっぱり面白いなぁと思って。しかも、原作の漫画にはないオリジナルのストーリーも描かれるので、すごく楽しみでした。
――ご自身が演じる役どころについてはいかがですか? “血を見るのが苦手なヘタレキャラ”ということですが。
本当にヘタレで、情けなくて、頼りないキャラクターだなって思いました(笑)。でも、最初にスタッフの方から、愛されるキャラクターを作りたいと言われて、なるほど、と。たしかにヘタレな人って、例え仕事で失敗しても、先輩とかから大丈夫かよ~ってイジられたり、愛を持って接してもらえるところがある気がして。なので、存分にヘタレていこうと思いました(笑)。
――“愛されるヘタレ”になるために、どんな役作りをしましたか?
そうですね……僕の周りには仁志みたいなヘタレキャラの人っていないんですよ。参考にできる人がいなかったから、難しくて。なので、めちゃくちゃいろんな映画やドラマを観て情報収集しました。あと、「ヘタレとは」でネット検索をかけてみたり(笑)。とにかくイメージを膨らませるだけ膨らませましたね。


――今回も役のバックボーンを考えましたか?
もちろん、いろいろ考えました。どういう学生生活を送ってきてとか、どうして血が苦手なんだろう? とか。血が苦手なことに関しては、考えようと思えばいくらでもマイナスな方向にできたんですけど、もっと明るいキャラクターでいたいなと思ったので、なるべくプラスの方向で考えました。幸い、設定として昔は病弱で、当時の看護師さんに憧れて自分も看護師になったというのがあったので、そのときに自分の血を見て苦手になったっていうことにしました。
――きっと、そういう設定を決めているのといないのとでは、演じるときに変わってきますよね。
かなり変わってくると思います。あまり考えすぎるのもよくないと思いますけど、ある程度、その人物の過去をイメージして、そこを踏み外さないように歩いていくっていうのが、役に新たな命を吹き込むことになるというか。役者の仕事って、そういうところが面白いなぁ、深いなぁって思いますね。
――撮影が始まってしばらく経ちますが、現段階での手応えはどうですか?
ないですねぇ(苦笑)。どれが正解なんだろうっていうのを、ずっと模索している気がします。


――『仮面ライダー』との違いなども感じていますか?
一つ思うのが、台詞の入り方が全然違うなって。『仮面ライダー』のほうはちょっと苦戦していて……。今思うと、ウォズという役はわりと一人語りが多くて、みんなで会話しているシーンでも、人の話は聞かずに自分の意見だけを投げかけるっていうのが多かったんですよね。自分で発信して、自分で完結するみたいな。台詞に周りとの関係性があまりなかったので、それが台詞の入り方にも影響していたのかなって。その点、今のドラマだとスッと入ってくる。人間ってこうだったんだ! みたいな(笑)。逆に今、自分の中で台詞の入りが遅かったりすると、何か感情に引っ掛かりがあるんだなっていうのを感覚的に感じ取れるようにもなって。そこは面白い発見の一つでしたね。
――仁志との共通点を感じたりもしますか?
ありますね。彼はわりと感情の起伏が激しいんですけど、僕も。いや、僕の場合、感情の起伏は激しくはなくて小波程度なんですけど(笑)、揺れ方としては同じだなって思います。僕も、好きなことに関してはよく喋るし、眠いときは喋らないし、わからないときは会話に入らないし。
――自分に素直なんですね。
そうなんですよ、って、自分で素直と言うのもあれなんですけど(笑)。でも、自分の感情に一直線なところは仁志と一緒だなと思います。
――それだけで十分愛されキャラのような気がします。
そうなれるように、頑張っていきたいです(笑)。
今はまだ、めちゃくちゃ猫かぶってます(笑)

――そんな渡邊さんが東京に拠点を移して1年半。東京には慣れました?
だいぶ慣れたと思います。満員電車に乗っても何とも思わなくなりました(笑)。
――ドラマの撮影で忙しい日々かと思いますが、時間ができたらどんなふうに過ごしてるんですか?
もっぱら公園か銭湯です。正直、時間があるときの過ごし方は東京に来てからも変わってません。人が多くて、積極的に行こうと思えないんですよね……(苦笑)。でも、公園と銭湯は、僕とっては完全にオフな時間。リフレッシュしに行く場所です。
――仙台にも定期的に帰ったりしているんですか?
もちろん。帰れる時に帰ってます。というのも、仲のいい友達と昨年から毎年ノルマを決めようっていうのをやっていて。

――何のノルマですか?
個人個人で達成する目標です。僕を入れて4人、全員仕事は違うんですけど、ある人は年間で舞台を3回観るとか、ある人は彼女を作るとか。達成できなかった人が、次の新年会の会計を持つっていうことにして。で、僕の昨年のノルマは、彼らと3回遊ぶってことだったので、それを達成するために必死で仙台に帰りました(笑)。よくよく考えたら、新幹線代と新年会の飲み代はどっちもどっちというか、むしろマイナスだなって思ったんですけど(笑)。でも、無事に達成できたのでよかったな、と。
――今年のノルマも決まってるんですか?
今年は、東京も含めて彼らと5回以上遊ぶってなりました。その条件で言うと、実は昨年すでに達成してるんですけどね(笑)。でも、類は友を呼ぶじゃないですけど、こういう一見馬鹿げた遊びを貪欲にやってくれる友達がいるのはうれしいなって思います。

――では、役者としての目標はどうでしょう?
まずは何より、とにかく楽しむこと。それから、昨年は1年半くらい走り続けてきたライダーが終わって、役者としての自分のベースができたように思うんです。なので、今年はそこを離れて。今まではウォズというキャラクターが強かったと思うんですけど、今年は僕自身に目を向けていただけるようにしたいです。ライダーで作った土台から、どれだけ高く飛べるか。かなり大切な年、勝負の年なんじゃないかなって思っています。いろんなことにどんどん挑戦していきたいですね。
――そこから先、こういう役を演じてみたい、こういう役者になりたいという理想もありますか?
演じる役については、今はやっぱりいろんな役をやりたいという気持ちが強いですね。役者としては、自分が演じたいからっていう熱量で作品に携わるのももちろんですが、演じてほしいと思ってもらえるような、誰かに必要とされる人でありたいです。それは、役者としてというより、人としてと言ってもいいかもしれないですけど。スタッフさん同士で飲みに行こうってなったときに呼んでもらえるような。ちょっとあいつと話したいなとか、あいつがいたら面白いんだよなとか、そんなふうに思われるようになりたいですね。

――仙台の仲間にとってはすでにそういう存在ですよね(笑)。
それを仕事の現場でも出せるように。今はまだ、めちゃくちゃ猫かぶってますから(笑)。
わたなべけいすけ
1993年11月21日生まれ、宮城県出身。2019年9月から1年間放送された特撮テレビドラマ『仮面ライダージオウ』のウォズ役で役者デビュー。現在放送中の上白石萌音主演の火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系 夜10時)では、新人ナースながら血を見るのが苦手なヘタレキャラ、仁志琉星役を演じている。2月15・16日に東京・両国国技館で開催される『15th Anniversary SUPER HANDSOME LIVE「JUMP↑with YOU」』に出演。「渡邊圭祐 1st写真集『その節は。』」も発売中。