aikoが1998年のデビュー時から発表してきた全曲のダウンロード配信及びストリーミング配信をスタートした。昔からのファンの中にはリピートが止まらないという方も多いことだろう。
エンタメシーンを数字で見ていく本連載、今回はそんな話題のアーティストであるaikoをテーマに取り上げたい。
aikoについて調べるに当たって、見逃せないのが彼女の”あたし”率。「あたしの髪が伸びて驚く程〜」から始まる22ndシングル「星のない世界」、「あたしに今すぐ夢中になって〜」で始まる名曲「桃色」など、aikoは自分のことを”あたし”と呼ぶことが非常に多い。あまりにも多いため、今回はどれくらい自分のことを”あたし”と呼んでいるのかではなく「逆に”あたし”と呼んでいないことがそもそもあるのかどうか」を調査するのが妥当ではないかと判断した。
歌詞が公開されているaikoの楽曲236曲の歌詞について「aikoは”あたし”と歌わないことがあるのかどうか」を調べていこう。
aiko、逆に自分のことを「あたし」以外で呼ばないことはあるのか
さっそく本題に入ろう。aikoの楽曲236曲について”あたし”という歌詞が出てこない曲の割合は以下である。
自分のことを“あたし”と呼んでいる曲:88.5%
自分のことを“あたし”と呼んでいない曲:11.5%
圧倒的に”あたし”と呼んでいる曲が多い。正直調べながら「これは本当に”あたし”と呼んでいない曲はないかもしれない」と少々不安になったのだが、実際に”あたし”ではない曲は1割程度という驚異の”あたし”率を誇っていた。
余談だが”あたし”はaikoの歌詞全体でも2番目に使われている単語となっており、恐らく筋金入りのファンの方はaikoのファンでない方々よりも、かなり人生において”あたし”という言葉を聞いている数が多いのでないかと思われた。
”あたし”を凌いでaikoの歌詞において最も多く使われていた単語は「あなた」であり、彼女の歌詞の世界観をよく表している2語といえる。
逆に「あたし」以外だと、どの一人称の言葉を使うのか
約9割の曲で”あたし”という言葉を使っているaikoだが、逆に考えれば「あたし」以外に何と呼ぶことがあり得るのだろうか? ファンの方々は、彼女の使いそうな言葉を思い浮かべてから、ぜひ答えを見て欲しい。
・あたし:664回
・僕:37回
・自分:16回
・I:13回
・私:2回
・俺:1回
“あたし”に次いで多かったのは”僕”だ。”あたし”程ではないものの、これはこれで非常にaikoらしさを感じる言葉のチョイスであり、個人的にもかなり納得の結果であった。
逆に通常多く使われる”私”は、全楽曲の中でも1回しか使われておらず、かなりレアな単語となっている。なお、実際に使われている楽曲は2ndアルバム「桜の木の下」収録の「悪口」だが、実際は友達のセリフとして「私」という言葉が登場しており、やはりaiko自身が自分のことを「私」と歌うことはいまのところないようである。
その他、つい気になってしまうのが”私”と並んで1回しか登場していない”俺”の曲だろう。こちらは9thアルバム「BABY」収録の楽曲「鏡」に登場しており、調べた限り唯一の”俺”曲である。
「鏡」は、aikoらしからぬ歌詞のテイストと、キャッチーなサビが魅力の1曲なので、ぜひ普段とは違うaikoを楽しみたい時にはオススメしたい。
また、今回はaikoの歌詞でよく使われている単語を解析した上でこちらのデータを出しているが、万が一のために、我・あたい・わらわ・わし・拙者・それがし、といったマイナーな単語もあわせて手動でチェックした。その結果、これらの単語はaikoの歌詞には一切使われていなかったことも合わせて報告しておきたい。
aikoがよく歌う体の部位はどこなのか?
最後にaikoがよく歌う「体の部位」を見てみよう。
4thシングル「カブトムシ」にある「指先は凍える程冷たい」というフレーズを始め、aikoの歌詞には「あたしの前髪」や「あなたの指先」といった、体のどこかの部位について歌ったフレーズが多い印象がある。
しかし、aikoが実際にどの部分をよく歌にしているのかはあまり明らかにされていない。というわけで、この点をハッキリさせるべく「aikoは体のどのあたりを重点的に歌っているのか」を調べてみたのが以下である。
■頭部
頭23回、髪37回、顔:65回、目123回(※最多)、瞳12回、口13回、唇38回、首10回、えりあし0回
■手関連
腕12回、両手16回、手95回(※2番目に多い)、手のひら6回、指33回、指先14回、爪13回
■その他
肩8回、背中16回、膝5回、足14回
お気づきだろうか。
なかでも「目」「顔」といった頭部についての歌は非常に多く、特に唇については「下唇」というかなり限定的な部分についてもよく歌っている。具体的には「親指の使い方」「キスの息」「シャッター」の3曲だが、いずれも下唇を噛んでいるか痛みを感じている甘酸っぱさのある曲なので、聴いたことのない方にはぜひオススメしたい。
さらに、頭部にひけを取らずよく歌にされているのが”腕から先”だ。「爪」「指先」「指」など、肩から爪にいたるまでの手の細かい部分について、かなり丁寧に部位に分けて歌われていることが伺える。
18thシングル「キラキラ」でもサビにて深爪のことが歌われていたが、他のアーティストとの比較こそいるものの、aikoはかなり「腕から先の手」に興味が強いアーティストではないかと考えられる。
そして今更ながら、aikoの歌詞には全曲通して「えりあし」という言葉はほとんど出てこないこともここでおさらいしておきたい。元々珍しい単語であることに加え、14thシングル「えりあし」の歌詞に「えりあし」という言葉も出てこない。もし今後「aikoってよく”えりあし”について歌うよね」と思っている友人知人が周りにいた場合は、こちらの数字を元に否定していただければと思う。
今回の調査はここまでである。ラブソングが多いと言われているaikoだが、実際に歌詞で最も使われている単語のうち、5番目に多かったのが「好き」というストレートな単語であった。遠回しな言い方ではなく、日常的でストレートな言葉を使って多彩な世界を生み出すaikoの楽曲を、サブスクで楽しめるのは非常にありがたいことだと思う。
今まで聴く機会がなかった方はこれをきっかけに、そしてファンだった方はさらに一層、aikoの楽曲を楽しんでほしい。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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