「MIU404」忠犬の志摩、野犬の伊吹。仲良しの犬がじゃれ合うように綾野剛と星野源の会話が走った5話
イラスト/ゆいざえもん

「MIU404」5話は外国人労働者の話をコンビニ強盗と絡めて描く

「GOTO KONBINI(コンビニ)」
「フフッ ダジャレ?」

綾野剛と星野源がMOBILE INVESTIGATIVE UNIT (機動捜査隊)のバディを組んで24時間働く「MIU404」(TBS系 毎週金曜よる10時〜)、第5回は「夢の島」(7月24日放送)。外国人労働者の話をコンビニ強盗と絡めて描く。

「MIU404」はいつもはじまりの音楽(ジングル?)のリズムがいい。
あの音がするとすっと世界に入れる。いつもの音楽が流れると伊吹(綾野)と志摩(星野)はコンビニで働いている。強盗捜査の一貫らしく、外では陣馬(橋本じゅん)と九重(岡田健史)が張り込んでいる。音楽のリズムに近い軽快な調子で彼らの会話が進む。5話は過去回ほど車も人も走らないが、会話がいい感じで走っている。

過剰に客とコミュニケーションをとる伊吹をたしなめる志摩。
そうこうしていると系列店の店員のマイ・ベトナム人(フォンチー)がやって来た。彼女こそ「きゅるっとした」子だと志摩は悟る。マイは好きな人がいて伊吹はあっさり振られるが、へんに前向きで諦めない伊吹。

コンビニ強盗は日本人店員ばかりが襲われていた。犯人は外国人たち。「GOTO コンビニ」とネットで強盗仲間を募っていた。
いま、話題のGO TOキャンペーンを「強盗」の洒落にして笑いのめす。

その「GO TO コンビニ」事件の共犯者としてマイと友人ナムに嫌疑がかかり、二人を調べる流れで伊吹と志摩は外国人労働者の実情を知る。

偽装留学生――留学生のふりをして出稼ぎに来ている外国人たち。一週間の労働時間は上限28時間と規定されているが、安い給料では必要な金額が得られない。そのためマイは3つも仕事を掛け持ちしていた。

と、ここで、今回の事件の解決に役立つ人物が現れる。
伊吹の刑事としての師匠・ガマさんこと蒲郡さん(小日向文世)。伊吹との会話の内容から、2話で、信じてくれた人がいたと伊吹が言っていた人物のようだ。

退職後、外国人支援センターのバディシステム(外国人労働者を孤立せずに生活できるようにお世話する)で働いているガマさんは、伊吹の相棒・志摩のことを聞いて、自分を信じられない相棒(志摩)は「大丈夫なのか」と彼のメンタルを心配する。

さらに「GO TO コンビニ」を呼びかけた犯人のベトナム語を、バディシステムのベトナム人に翻訳してもらい、書いたのはネイティブでなく、日本人ではないかと推理をする。志摩への洞察と事件の重要なヒントをふたつも示唆するとはなんて便利な登場人物!

しかしながら、本来、善人そのものに見える小日向文世が、「コンフィデンスマンJP」(映画「プリンセス編」公開中)の信用詐欺師リチャードの印象が強くなりすぎて、胡散臭いおじさんにも見えてしまう。まあ、元刑事だから単なる善人でもなく、ちょうどいい塩梅ともいえるだろう。
もっとも小日向文世は「アウトレイジ」ですでに単なるいい人イメージから世間一般の認識を覆してはいるのだが。

「MIU404」忠犬の志摩、野犬の伊吹。仲良しの犬がじゃれ合うように綾野剛と星野源の会話が走った5話
第6話は7月31日放送。画像は番組サイトより

すっかり日本が嫌いになってしまったマイの姿に悩む伊吹

お役立ちキャラ・ガマさんのおかげで浮上してきた容疑者は、マイの通う日本語学校で事務員として働いていた水森(渡辺大和)だった。伊吹と志摩に外国人労働者の実情を語った人物である。

強盗容疑でコンビニをクビになったマイが伊吹に電話をかけてくる。話を聞きに入った飲み屋で、フラッシュバックに悩まされる志摩。彼が自分を信じられなくなった出来事がすこしずつわかりはじめそう。

「(日本人が)欲しいのは、文句ない、言わない、お金かからない、働くロボット」と泣くメイ。
日本にあこがれて来たのに、すっかり日本が嫌いになってしまったマイの姿に、「国の罪は俺たちの罪なのかな」と悩む伊吹。この荒んだ現実を皆、見ないふりをしていると考える志摩。

伊吹は、志摩が見ないようにしている。それで自分すら信じなくなったのではないかと想像する。そんな伊吹は理不尽な現実から目をそむけない。それは水森も同じ……のはずだったが、彼の視点はすこしだけズレていた。


水森が理不尽な日本に物申そうとして行った犯罪は、結果的に理不尽にマイを追い込むことになった。それを指摘する志摩。

「マイさんっていう一人の人間の話をしている」
「日本にあこがれてやってきた一人の、たった一回の人生の話を」

星野源は単語をひとつひとつ粒立たせて語り、言葉の意味がぐいぐい伝わってくる。

それが水森の心をも動かしたのか、彼は今一度「GO TOコンビニ」を募ったとき、たった一人で始末をつけようとする。その意思を、ベトナムのお国がらが現れた数字から読み取ったのは九重だった(なぜか訛って)。

徐々に輝垢になる志摩の“闇”――物語は加速していく

日本とベトナム。似ているところもあるし違うところもある。ベトナムは人を「犬」に例えるのは馬鹿にしていることになるが、「犬」よりももっと弱いもののたとえは「カタツムリ」。ベトナムの言葉づかい、ベトナムでラッキーな数字、不吉な数字。それらが見事に事件と絡む。

自分はカタツムリだと自虐する水森とメイが訪れた場所には美しく紫陽花が咲いているところまで、完璧な構成。事件とは関係ないが、おなじみのうどんの代わりにフォーが出てきたところもさすが。

「MIU404」が評論家筋に受けがいいのは、日本のエンタメの伝統芸・見立てをうまく使っているからだろう。今回は「ダテ眼鏡」。水森と伊吹の共通点は、マイと心を通わせたこと。そしてダテ眼鏡をかけていること。水森は世界の残酷な事実をダテ眼鏡でごまかしてきた。では、伊吹はなぜダテ眼鏡をかけているのか……。

「相棒殺しが」とすれ違い様、警察の誰か(酒向芳)が志摩のことを忌々しく語る言葉を聞いてしまった伊吹(酒向がこのセリフを言うと忌々しさが増す、すばらしいキャスティング)。志摩の過去とは……。第4機捜をつくったことで、蓋しておきたい事件を次々あけてしまう桔梗(麻生久美子)は、出る杭は打たれることを心配する陣馬に「ただここにいて働いているだけなのに」とつぶやく。

たくさんの燃料がくべられて物語はどんどん加速していく。

忠犬の志摩、野犬の伊吹。

伊吹「不審なニオイを」
志摩「勝手に嗅ぎ取るな」

などと仲良い犬がじゃれるような会話も楽しかった。
(木俣冬)

番組情報

TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00〜10:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/