「MIU404」暗闇に灯りをともした伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)の手と手 罪とは何かを問うた8話
イラスト/ゆいざえもん

「アンナチュラル」との関わりは必然「MIU404」

MIU404(TBS系 毎週金よる10時〜)第8話「君の笑顔」(8月14日放送)は、未解決の連続猟奇殺人事件をきっかけに「罪」と「ゆるし」を描く。

桔梗(麻生久美子)の家に盗聴器が仕掛けられていたことがわかって、さあ、大変。闇カジノに関する事件で追われている麦(黒川智花)を狙った犯行に違いない。


桔梗は麦と桔梗の息子・ゆたか(番家天嵩)を警察のマンションに住まわせることにする。なんで息子まで? と思うが、桔梗は第1と第4機捜の隊長を兼任していて忙しくて麦に息子を任せていたから仕方ないのだろう。ただ麦の事件にゆたかが巻き込まれる心配はないのだろうか。警察のマンションだから安心なのかな。

それから2カ月後。2019年9月。ゆたかの2学期がはじまった頃、メロンパン号で志摩(星野源)伊吹(綾野剛)が楽しくだべっていると、遺体が発見されたという報告が。

成人男性の猟奇的な殺人。この事件はすぐに刈谷(酒向芳)が率いる捜査一課が担当することになった。殺人方法が、20年前と15年前にもあった未解決の連続猟奇殺人事件と手口が同じだったからだ。

志摩と伊吹は捜査一課のお手伝いとして関わるが、めっぽう大活躍することになる。被害者・堀内は出身地が伊吹と一緒の茨城で、伊吹の先輩・ガマさん(小日向文世)が過去2度、堀内の起こした事件の担当をしていたのだ。


「MIU」では大きなことから小さなことまで、ひとつひとつ、いろんなことが事件解決の道へとどんどん流れ込んできて、すべてを纏めて進んでいく。それを伊吹的に言うと「俺たち持ってる」となる。

死体の解剖のため、志摩と伊吹はUDI(「アンナチュラル」より)に行くと、そこに「ピスタチオ ピスタチオ」とUDIラボの臨床検査技師・坂本(飯尾和樹)がメロンパン号でメロンパンを本当に売っていると思って買いに来る(最近、ピスタチオグリーン、流行ってますよね)。

「アンナチュラル」(18年)は「MIU404」と同じく新井順子プロデュース、野木亜紀子脚本、塚原あゆ子演出のドラマ。6話では主人公ミコト(石原さとみ)が遺体の執刀医をしていて(書類の署名でわかる)、3話では毛利刑事(大倉孝二)向島刑事(吉田ウーロン太)が登場と「アンナチュラル」のキャラがカメオ出演し、ふたつのドラマの世界線が同じであることを匂わせてきた。今回もまたファンサービスかと思わせて、6話のミコト以上に、大きく関わって来るのである。

坂本がかけている電話から法医解剖医・中堂(井浦新)の「クソっ」の声が聞こえ、中堂は声の出演かーと思っていると、中堂が「連続殺人おたく」としてこの事件の遺体と過去の遺体の違いに気づき、それを所長(松重豊)が伊吹と志摩に伝える。井浦新本人が登場しなかったのが残念だが、これだけ物語にコミットしてくるのは「アンナチュラル」ファンとしてはただただ嬉しい。

こういったスタッフや出演者が共通したドラマ間でのサプライズ企画は「MIU」にはじまったことではないが、「MIU」はそれを単なるサービスではなく必然にしているところに物語や登場人物に対しての誠実さを感じて、さらに嬉しい。

神か悪魔か――見る者を惑わす小日向文世の微笑み

ゆたかが、おそらく志摩に作り方を教わったのであろう、ピタゴラロボットを作っていた。志摩が以前語ったピタゴラ装置を象徴として、「MIU」はきっかけがよくも悪くも人を変えていくことを描いている。伊吹も志摩もひとりで事件を解決しているわけではなく、ちょっとした発見や出会い、たくさんの人との関わりで事件の真相に近づいていくし、事件に限らず、彼らの人生もそうで、何かのきっかけが連鎖して進む道が大きく変わって今がある。

かつて素行が悪かった伊吹は、ガマさんとの出会いによって腐らずに警官の道を歩むことができた。
その恩人のガマさんが、愛妻に先立たれ、認知症になったらしく記憶が曖昧になってしまったとき、伊吹はひとり者の自分と、ガマさんと、身を隠さざるを得ない麦という孤独な者同士で一緒に暮らすことを考えはじめる。

伊吹と志摩とガマさんが話すときのカットがちょっと変わっていて、ガマさんの話の奇妙さを感じさせるものになっている。

一方、志摩は中堂の意見を聞いて、単独で事件の調査をはじめていた。そこでわかったことは残酷な真相だった。

小日向文世の真骨頂――神か悪魔か、その微笑みはマーブル模様のように渦巻いて、見る者の心を迷わす。罪とは何か。すべての罪を我々はゆるすことができるのか。

連鎖とは不思議なもので、復讐の連鎖という言葉もあるけれど、たとえば、「アンナチュラル」で復讐のため殺人を犯しかかった中堂は、ミコトが緩衝材となって回避できた。復讐の連鎖が止まったのだ。その中堂が発見した、今回の異なるかもしれない殺人犯はなぜ過去の事件を真似て殺人を犯したのか。犯人がその手口に込めた想いとはなんだったか……。

犯人の手口はかなり残酷であったが、事件の真相もかなりエグいし辛い。
中堂が救われた「アンナチュラル」よりも「MIU」はとても悲しい物語になるのか……と思わせて――伊吹と志摩の手と手が暗闇のなかの灯火になる。

ガマさんに救われた伊吹は極めて透明で純粋な少年のような表情をしていて、物事を明晰に見極めて伊吹を支える志摩の表情は、目頭の切れ込み具合の深さにも相通じる、鋭さと思慮深さがあった。

「MIU404」暗闇に灯りをともした伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)の手と手 罪とは何かを問うた8話
第9話は8月21日放送。画像は番組サイトより

それにしても、引っ張るのは成川(鈴鹿央士)。一途な高校陸上部の少年だったのが、すっかりやさぐれてしまっている。そして彼の仕事と麦もまた繋がって……。YouTuberも関わってくるのだろうし、最終的にこれまでのエピソードと登場人物、すべて、繋がったら、美しきオムニバス作品になるだろう。

犯人の残酷な手口の意味は、九重(岡田健史)の地元の遠足の定番の場所がヒントとなって見えてくる。今回、出番の少ない九重にも事件とコミットさせるという徹底ぶりが泣ける。ちなみに、九重役の岡田健史。この日、主演ドラマ「大江戸もののけ物語」(NHK BS)が最終回を迎えた。凛々しい武士役、素敵でした。

余談だが、伊吹の部屋に志摩が訪ねてくるシーンにはにやにやが止まらなかった。
伊吹の部屋、かなり片付いていて、以外と几帳面なのだなと思う。
(木俣冬)

※次回9話のレビューを更新しましたら、ツイッターでお知らせします

番組情報

TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00〜10:54
番組サイト:

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/
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