今年の『24時間テレビ』は新たな試みで放送
「43回目ではなく、新しい日常での1回目」2020年8月22‐23日に放送された『24時間テレビ43 愛は地球を救う 動く』(日本テレビ系)。今年のテーマは「動く」として、“あったか5兄弟”こと、V6・井ノ原快彦、NEWS・増田貴久、Kis-My-Ft2・北山宏光、ジャニーズWEST・重岡大毅、King & Prince・岸優太の5人がメインパーソナリティを務めた。
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今年は無観客で行われ、募金活動もキャッシュレス決済で行われた。番組恒例のチャリティマラソンも形を変え、高橋尚子率いる「チームQ」による募金ランと、新しい企画も取り入れられた。
例年通りとはいかないことも多かったであろう中での大役、メインパーソナリティつとめた5人の活躍を振り返ってみたい。
●伝統芸能に挑戦、ひときわ汗を流した末っ子 King & Prince岸優太
岸優太は海老蔵演出のもと、6分間の生放送の歌舞伎に挑戦した。「逆境に向かっていく姿『景清』が今回のテーマではよいかなぁと」歌舞伎十八番の一つ「景清」を選んだ海老蔵。
海老蔵から「岸 優太丸」という原作にはない役を授かった岸。「ボクのような新参者が……」と謙遜すると、海老蔵は「じゃあやめようか」。揺さぶられっぱなしの岸だが、「やりたいです、やらせてください!」 すかさず口をついて出た言葉。ジャニーズJr.としての9年間を思わせる、前のめりな姿勢だった。
いざ本番。「我こそは、岸優太丸なり」と隈取り姿の岸。左手を前に広げ、右手には刀を掲げ、「市川宗家成田屋の教えを受けし荒事をご披露なさん」。
稽古を重ねたであろう発声。目を見開き、感情の昂ぶりを表す「見得」も様になっていた。景清に比べて体の線が細い優太丸だが、すっと伸びた背筋が美しく目をひいた。
敵方との戦い、立ち廻りでも相手からの攻撃をかろやかにかわし、軽々と飛び跳ねた。わずか1か月でここまで仕上げられたのは、岸の集中力と根性の賜物だろう。あっという間の6分。演目を終えると岸は海老蔵に一礼。その姿は“岸優太”だった。
のちに笑点メンバーと「シンデレラガール」を踊ったことを思うと、とても同一人物とは思えない。スイッチの切り替えが光っていた。
●演技、ナレーション、ピアノ……ジャニーズWEST重岡大毅
24時間テレビ恒例企画の一つがドラマ。
今回は、志村役の顔を映さず、後方や側面のアングルにしていたこともあり、重岡の目上の人に対する、少しへりくだった様子が志村役の存在感を出していた。驚く表情一つとっても、身体を動かさずに瞬きを2~3回して驚きを表現していたのが妙にリアル。
重岡はナレーションも担当した。持ち前の温かい声で、抑揚をつけすぎない落ち着いた語り口。志村に出演のオファーの電話をする直前のシーンでは、ダメ元で電話をする直前の緊張感と高揚感を、ほんのわずかな抑揚が効果的だった。
ドラマ終わりには、志村が愛したザ・ビートルズの「Let It Be」を、志村どうぶつ園メンバーが歌唱。重岡はピアノ演奏。歯を食いしばるような表情、身体を前に倒し全身でリズムをとるようにして伴奏した。
静でも動でも、気持ちを込めていた重岡だった。
●冴えたコメント力、Kis-My-Ft2北山宏光
「体操選手はだいたい18~20歳がピークって言われてるんですけど……」 田中理恵がオリンピックに出場した25歳はギリギリだったという。7年ぶりの練習で現役時代にはなかった恐怖心が芽生えた田中。
笑いをとったかと思えば「5年ぶりくらい」「怖いわ……」。続けて「その細い腕で……いやすごいわ」田中の腕をみて感心していた。
東京五輪が1年延期されたことを受けて、五輪を後輩たちに捧げる復活の舞台。続けることで後輩たちに伝えられるものがあれば、と奮闘する田中。北山は「意志を感じましたね。意志を示すことで何か後輩たちの未来が切りひらけるのであればっていう」。
相手の境遇を、自分に置き換えたであろうコメント・表情には説得力があった。このシーンに限らず、どんな場面で話を振られても、無難な言葉で返すことはなかった。いつでも北山らしさを損なわず、的確な言葉を選んで返していた。
●咄嗟のファインプレーが光った副キャプテン・増田貴久
がんで舌の6割を切除した堀ちえみの、復活の初歌唱を見守った増田貴久。
壮絶な半生を涙ながらに語る堀に、増田はやさしい眼差しで、じっくりと話に耳を傾けた。抜群の歌唱力を誇る増田だけに、歌がうたえなくなることの恐怖は、きっと誰よりも理解していたのではないか。
VTRが開けると、「堀さん、準備は大丈夫ですか?」これまた優しい声で投げかけた。歌い終えるとその場に泣き崩れた堀。「気付いたらNEWSの増田貴久さんが、差し出して下さったハンカチを、ただ握りしめて泣いていました」(※2)ここでハンカチを差し出したのが増田だったと、堀が後日ブログで綴った。新品か、それともアイロンをかけたのか、シワのないきれいなハンカチだった。
その後も、メインパーソナリティー5人で夏ソングメドレーを歌っている最中に、重岡のマイクにトラブルが起きた。近い距離にいたこともあるが、増田が咄嗟にマイクを差し出して事なきを得た。周囲の状況をキャッチする察知力とサポート力は、副キャプテンらしい活躍だったといえる。
●安定した進行、お宝エピソードの宝庫…キャプテン・井ノ原快彦
毎年チャリティマラソンについて、なぜ走る?と疑問視する声がSNSで飛び交っていたのだが、今年は井ノ原が聞き手となり、高橋尚子の思いを伝える機会が設けられた。
有働由美子が登場すると、NHK『あさイチ』コンビが奇跡的に復活。「さっそくだから、ちょっと、いっちょやっときますか」との井ノ原の言葉に、有働も「おはようございます」。相変わらずノリがいい。
生放送とはいえ焦った様子もなく、終始落ち着いた進行の井ノ原。4人の緊張も井ノ原がいるおかげで安心できたのではないか。
活躍は多々あれど、深夜に放送された「嵐にしやがれ」で、ジャニーズJr.時代からデビューしてからのエピソードを披露したのだが、内容の濃さは群を抜いていた。
故・ジャニー喜多川と休日のたびに遊んだこと、海外のクラブでダンスバトルをしたら投げ飛ばされたこと、振付師から「アダルト~」と呼ばれてキレたこと等々。これも井ノ原が子どもの頃からジャニーズに所属してきた継続の賜物。さすがは“勤続25年の男”だ。
同じグループのメンバーでもなければ、同期でもなく年齢も異なる、これまでの共演経験もそう多くはない。発表当初は驚いた人選だったが、だんだんと5兄弟にみえてきた。
一方で、所属するグループメンバーが登場したときの嬉しそうな表情、パフォーマンス中のホーム感も愛らしい一コマだった。
誰かを傷つける発言もウケ狙いだけの過激な発言もなく、相手の話に耳を傾ける姿勢、咄嗟の対応、言葉の選び方、些細なところに出た“動く”にも学ぶものがあった。何より、5人の笑顔にはささくれ立った心を穏やかにしてくれるような効果があった。
番組でぽろっとこぼしていたが、井ノ原と増田のユニット「イノマス」はいつか実現するのだろうか、今後も密かに楽しみにしていきたい。
(柚月裕実)
<※1>
出典:歌舞伎事典
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/modules/kabuki_dic/entry.php?entryid=1279
<※2>
堀ちえみオフィシャルブログ
https://ameblo.jp/horichiemi-official/entry-12619715517.html
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