
深夜3時〜4時を描く『24 JAPAN』4話
「まだ30分。そんな簡単にはいかんよ。こんな深夜じゃ相手が起きてるかどうかもわからんよ」「起こしてでも調べて。
【前話レビュー】物語を加速させる郷中と三上の死 朝倉麗を脅かす家族の過去も明らかに
ピッ・ピッ・ピ
『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)。第4話は、深夜3時〜4時の出来事。夜が深くなってきたが、事件はますます大事になってきて、誰一人眠そうな登場人物はいない。眠らない街・東京。またひとり死亡者も……。
前述のセリフは、闇の情報屋・上州(でんでん)と首相候補・朝倉麗(仲間由紀恵)の電話での会話。麗の娘・日奈(森マリア)と息子・夕太(今井悠貴)の秘密が何者かにリークされて、子供たちを守ろうと麗は必死である。
ふたりが地下駐車場で密会していたのはつい30分前。こんな深夜でも麗は容赦なく、上州を働かせる。上州けっこう高齢者っぽいのに頑張るなあ。「こんな深夜じゃ相手が起きてるかどうかもわからんよ」ってあまりにも正論。
選挙事務所代わりのホテルに戻ってきた麗。自分の暗殺計画があると聞いて「それでこの騒ぎ。大丈夫よ」とあっさり。これまでも暗殺計画があったから慣れっこで、それよりも子供たちのことが心配。首相候補ともなると腹のくくり方が違う。総選挙の投票日に、こんなにいろいろなことがあってもメンタル混乱しないのもすごい。
魅力増すクールビューティー水石
本家『24』にしても『24 JAPAN』にしても、国家規模の大事件と家族の問題とが平行して描かれていて、それぞれの価値を見る者に突きつけてくる。が、本家よりも日本版のほうが、家族問題や痴話喧嘩が目立って見える。獅堂「怒ってるのか」
水石「ええ怒ってるわ。当たり前でしょ」
獅堂「すまない」
水石「だからって私を疑うなんて。ひどい」
獅堂「悪かった。すまない」
獅堂(唐沢寿明)と水石(栗山千明)のやりとりがなんだか湿っぽい。あとから、南条(池内博之)の告発により、CTU(テロ対策ユニット)第1支部のオフィスを封鎖し、聞き取り調査を行いに来た鬼束(佐野史郎)によって語られるふたりの関係を聞いても、獅堂ってしょうもない人にしか見えなくなるのだけれど。
そんなダメなおじさんが、家族や国を守るために頑張るところがこのドラマの面白さ。それはわかっているけれど、日本でやると普通の会社の横領事件に関わっている元不倫していた上司と部下のドラマみたいに見えてしまうのはなぜなのだろうか。それはそれで、そういうドラマが好物の人もいるから、ありだとは思う。
「俺は君を信じる」と言われたときの水石の瞳がすこし明るく見える。でもあとで「信用できるのはおまけだけだとおだてあげて信用させる」というのが獅堂(および水石)の手口だと鬼塚は暗号解析係の明智(朝倉あき)に言っていた。とすれば、なかなか騙し合いの世界である。
鬼塚も「入った当時はぴかいちの出世頭」だったのに彼女の能力を惜しみ、獅堂は信用ならないと懐柔にかかるし、朝倉にも「君はスキルもあり作業も速いと聞いている」「次の昇進審査では口添えもしよう」と彼女の能力を認め、さらに地位向上に協力しようと誘いかける。結局、やってることは獅堂と同じ。
当然、そんな鬼束に騙される水石ではなく、口は割らない。クールビューティー水石。なんで獅堂なんかと……その謎も込みで魅力がどんどん増していく。

徐々に見えてくるそれぞれの人間性
前回、2時〜3時の間に美有(桜田ひより)の友達・函崎寿々(柳美稀)が誘拐犯・剛(犬飼貴丈)とKEN(上杉柊平)から逃げる際、車に轢かれてしまった。死んだと思ったらまだ生きていた。彼女を残して、美有だけ捕まえて目的地に向かう誘拐犯たち。だが、万が一生きていたらいけないので息の根を止めようと引き返す。
その道すがら、美有たちを探している六花(木村多江)と函崎(神尾佑)が警察に止められて揉めているところに遭遇。まさか車の中に美有がいるとは気づかない六花……というハラハラの3時24分。
そんな緊迫感のなかに、
六花「私たちは夫婦じゃなくて」
警官「そういう関係ね」
とか、いちいち男と女のラブゲーム的な感じが入ってくる。本家だと誘拐されている娘がやたら色っぽく、誘拐犯に乱暴に扱われるところが生々しい。単にシリアスなサスペンスでなく、俗っぽい描写が挿入され、いろんな意味でドキドキするからたくさんの人が観ているのが本家の魅力。一方『JAPAN』は嗜虐成分少なめだからやや刺激が足りなく感じる。
獅堂は封鎖された第一支部から脱出に成功し、朝倉が暗号を解析したカードキーの住所に向かう。そこで暗殺計画の重要参考人・陣元(渋谷謙人)と遭遇、銃撃戦に。駆けつけてきた大塚南署の警官・横田(李千鶴)と南(東龍之介)と合流し、陣元を追う。
本家も『JAPAN』も登場人物の過去や性格をあらかじめはっきり描かず、状況のなかでどう行動するか観ているうちに徐々に人間性が見えてくるようになっている。
本家も『JAPAN』も第一支部の2階の部屋の窓に、バーチカルブラインドがある。ちょっとした角度で中が見え隠れする。まるで、登場人物の心のようだ。元祖のほうがそういう小道具をうまく使って、サスペンス性を高めている。余計なお世話だが、『JAPAN』もがんばれ。
◎3時から4時の死亡者:大塚南署の横田。陣元との攻防戦であっけなく撃たれて死亡
「お断りだよ、獅堂現馬さん」とフルネーム呼びして獅堂を慌てさせる陣元は何者なのか……?
(木俣冬)
【1話レビュー】 唐沢寿明の『24 JAPAN』と元祖『24』の決定的に異なる重要ポイント
【2話レビュー】唐沢寿明の『24 JAPAN』に際立つ女の嘘のドラマ性 時に橋田壽賀子や向田邦子ドラマふう
【3話レビュー】物語を加速させる郷中と三上の死 朝倉麗(仲間由紀恵)を脅かす家族の過去も明らかに
※次回5話のレビューを更新しましたら、以下のツイッターにてお知らせします。
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番組情報
テレビ朝日系『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜
番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/