『24 JAPAN』丁寧に描かれる登場人物の心情 画面分割の演出で受けるスリルもMAXに
イラスト/AYAMI

心理的な緊迫感大事に『24 JAPAN』5話

「トランプ対バイデン」アメリカ大統領総選挙のさなか。日本の首相の予備選挙当日の夜中の出来事を描く『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)。第5話は、深夜4時〜5時。


【前話レビュー】不気味な余韻残した4話 獅堂を慌てさせた陣元は何者なのか

4時ともなると挨拶は「おはよう」。首相候補・朝倉麗(仲間由紀恵)の愛娘・日奈(森マリア)が「おはよう」と今日の晴れ舞台を控えた母のためにまめまめしく珈琲をいれる。純粋無垢そうな日奈だが、彼女には人に知られたくない秘密があった。それをなんとしても守りたい母心。

娘の手製のアップルパイを「美味しかった」と微笑む麗。今日のおめざにしたのだろうか。
アップルパイの甘さは眼が覚めそう。

5話まで進んで、国を揺るがす首相候補暗殺計画よりも、その事件に翻弄される人々、それぞれの家族のかげがえのなさに焦点がますます強く当たってくる。

車に轢かれて亡くなったかと思った函崎寿々(柳美稀)はまだ生きていて、病院に運ばれ緊急手術を受けていた。病院に駆けつける六花(木村多江)と函崎(神尾佑)。美有(桜田ひより)の行方はいぜんわからず、六花は途方にくれる。

頼りの夫・獅堂(唐沢寿明)は暗殺事件の捜査で手いっぱいで病院に駆けつけることは難しいが、一時は別居していた六花との関係が、皮肉にも娘の行方不明をきっかけに密にならざるを得なくなっていく。


「相性ってもんがあるんだよ、友人同士にも恋人同士にも、取り調べ官と犯人の間にも」

4話のクライマックスに登場した暗殺計画の重要参考人・陣元(渋谷謙人)鬼束(佐野史郎)の取り調べをはぐらかし、獅堂を希望する。

これはなかなかいいセリフ。家族の絆だけでなく、事件の加害者と捜査する側も人間関係が肝。

いざ、獅堂が取り調べすると、相性が全然よくなさそうで、すぐに取り調べは失敗に終わっ……たかに見えたら、獅堂と陳元は秘密のやりとりを交わす。

本家『24』から引き継いだ趣向に、画面分割して、同時刻に離れた人たちの様子を一気に見せるライブ感があるが、獅堂と陳元が知らんふりしながら連絡を取り合い動いているスリル感にこの画面分割は効果的だ。

獅堂と陳元のコンビはなかなかいい感じに見える。
だが陳元は銃を撃って(暴発と主張)大塚南署の警官・横田(李千鶴)を巻き添えにした。その罪は見逃せない。

横田には二人の子供がいた。ここにも家族がいる。本家の脚本がしっかり作られているので、話の展開には破綻がない。たくさんの登場人物が絡み合っていながら、“家族”という留め金によって、つながっている。


『24 JAPAN』丁寧に描かれる登場人物の心情 画面分割の演出で受けるスリルもMAXに
次回6話は11月13日放送。画像は番組サイトより

唐沢寿明が語る獅堂現馬像

麗の家族の秘密を報道しようとするキャスターまどか(櫻井淳子)とも“家族ぐるみ”で付き合ってきたという関係性があった。

5時ちょっと前、早くも鮮やかなピンク色のスーツに着替えた麗。パールのイヤリングも彼女の潔癖さを高めている。寝ている夕太(今井悠貴)を起こして、日奈を襲った犯人に何をしたか問い詰める。事件があったとき、麗は仕事で忙しかったという夕太。ここまで追い詰められたのは、麗が仕事と家庭を両立できていなかったから。

ものごとには因果関係があり、六花も、美有の件の根本は、自分たち夫婦関係の悪さにあったのではないかと反省する。


まとめると、この大変なとき(暗殺計画や選挙)に家族の問題で頭を悩まされるのは、それまで家族関係をおろそかにしていた報いである。『JAPAN』は本家よりもそういうテーマ性が伝わってくる。本家よりもケレン味も削ぎ落としている分、それがにじみ出てくるのだろう。

マガジンハウスの『クロワッサン』で筆者が唐沢寿明に取材した際、本家のイメージがひとり歩きして、主人公が暴れまくる先入観をもたれがちだが、「家族をさらわれたから、ルールを破らざるを得なくなっただけの、普通で真っ当な社会人なんです」と聞いた。

獅堂は家族問題の前からルールを破っていたところがあるようだが、今、何がベストか考えて最適なことを選んで行動している、真面目な仕事人なのだろう。脚本に描かれた本質的なところを読み取って、型破りなスーパーマンではない人物を演じるという、極めて正攻法なアプローチは好ましい。


獅堂と陳元の飛沫飛び散りそうな激しいやりとりや、麗とまどかの確執なども、ケレンに走らず、心理的な緊迫感が大事にされていて見応えがある。とはいえ、いまの時代、そういう正論よりも、極端なものを消費する傾向があるため、苦戦を強いられているのは否めない。丁寧に登場人物の心情を追っていくことは大事。守り続けてほしい。

人間は皆、あっけない。

「人間、生きてるか死んでるかのどちらかだ。もしかしてなんてことはないんだ」(神林 / 高橋和也

またひとつ、命が消えた。
(木俣冬)

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番組情報

テレビ朝日系
『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜

番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/