ファッションが大好きで、常に流行を追い、洋服を買いまくる。でも、なぜか息苦しくてたまらない―‐。


『服捨て 自分を解き放つメソッド』(昼田祥子著、講談社、2026年3月)は、服を捨てたことで本来の人生が見えてきた、ファッションエディター・昼田祥子さんの実録エッセイです。

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何のために、こんなに服を買うのだろう?

〈給料のほとんどを服に注ぎこみ、貯金どころか20代には借金もあった〉という昼田さん(〈 〉は著書からの引用、以下同)。

〈死ぬほど服が好き〉でファッションエディターになれたのに、今から10年ほど前は、未来に希望が持てず「人生早く終わってほしい」と思っていたそうです。

「服を1000枚捨てたら、人生うまくいった」ファッションエディターが説く“服捨て術”が深すぎた
『服捨て 自分を解き放つメソッド』昼田祥子著、講談社
「服捨て」に踏み切ったのは2016年。きっかけは、たまたま出会ったフリマアプリでした。

 前著でベストセラーになった『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』(講談社、2023年)によると、初めてメルカリに出品したのは、義理の父との何気ない会話が発端です。ホコリをかぶっていた使いかけのネイルが約3分で売れたのに、有名ブランドで希少価値の靴が売れ残る事態。そこで昼田さんは考えます。

〈私にとって「価値あるもの」が、世間からすれば「どうでもいいもの」。あんなに夢中で買いに走った私は一体なんだったんだろう?〉。
これが、本当の自分と向き合うきっかけでした。

「服を1000枚捨てたら、人生うまくいった」ファッションエディターが説く“服捨て術”が深すぎた
『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』昼田祥子著、講談社

服で武装しているだけだった

 最初は〈もう絶対に着ない服〉を出品していましたが、やがて〈いつか着るかもしれない〉服ばかりになってきます。いる、いらない。自問自答するうちに、昼田さんは気づくのです。


〈これを手放してしまったら自分の何かを失いそうで怖いのだ〉

 本書『服捨て』の中で、昼田さんは断言します。〈服は“自信を補う鎧”になっていました〉。

 流行、オシャレ、ヴィンテージ、プレミア。身に付けているだけで“アガる”アイテムたち。それらは、本当の自分が欲しているものなのか、本心から愛おしいと感じているのか。

 結局は、自分らしさを見失っている状態で、他者を意識して武装していただけだと、昼田さんは悟りました。

私たちが服を捨てられない理由

 服を捨てられない理由は、さまざまありますよね。

〈まだ着られる服が捨てられない〉
〈思い出のものが捨てられない〉
〈いつか着るかもしれない服が捨てられない〉etc.

 まだありますが、ここでは〈いつか着るかもしれない服が捨てられない〉を取り上げます。ネットで見て一目惚れして、即ポチして購入したのに、着る機会がなく、ただ眺めているだけの服が、誰にでも数着あるのではないでしょうか。

「服を1000枚捨てたら、人生うまくいった」ファッションエディターが説く“服捨て術”が深すぎた
画像はイメージです(以下同)
 昼田さんいわく、手放せないのは服ではない、〈抱えているのは未来への不安〉。いつか着るだろう憧れの服があれば、未来への不安はないと、服を通して思い込んでいるのです。

 未来への不安をしきりに煽るのは、現代社会の通例で、いつしか私達も未来=不安だと刷り込まれてしまいました。とはいえ、今、生きている時間も、かつ不安視した未来のはず。


〈捨てることで思考を変えるのです〉と昼田さんは言います。

勇気を出して一度捨ててしまえば、〈モノを減らしても大丈夫だった〉と実感すれば、思い込みをどんどん書き換えられるのです。

「私には、これさえあればいい」にたどり着く

 服を捨て続けて、昼田さんはふと思ったそうです。

〈私、シャツとパンツがあれば十分かも〉
〈私はこれでいいのかもしれない〉

 このフェーズが、
〈自分にとっての中心核-必要最小限がはっきりすると、軸が定まり、いっそう身軽な感覚が生まれます〉。

 本当の自分と、本音の生き方が腑に落ちた瞬間です。他人からどう見られているか、見栄や虚構ではなく、本来の自分が欲している服、ありたい姿はなんなのか。

 服という鎧を破って、素の自分がようやっと顔を出したのです。

大事なのは「好き」より、服の「役割」

 服には、〈好き〉〈似合う〉〈ワクワク感〉などは不要だと昼田さん。一番大事にすべきは、服の役割だといいます。

① 着用期間……冬用のコートなら「3年」、通年使うシャツなら「2年」など着用期間を設定
② 着用シーン……公私で着用場面を細分化
③ 着用頻度……「月に何回」「週に何回」と決める
④ ケア方法……服のケアにかかる手間とコストの許容範囲をはっきりさせる

 服の役割を決めることで、曖昧な理由で持ち続けることがなくなり、服が忠実に働いてくれます。

「服を1000枚捨てたら、人生うまくいった」ファッションエディターが説く“服捨て術”が深すぎた
白いシャツ

着ていて不快な服をリストアップしよう

 今すぐ決別すべきは、〈着心地と実用の面で不快と感じる服〉たとえば、ちくちくするニット、自転車に引っ掛かりやすいロングコート、長時間履けないパンプス、等です。
 デザインが好みだったとしても、不快と感じる時点で、すでに本来のあなたではありません。不快な服リストでできあがった譲れないポイントこそが、〈あなたのスタイル〉。

 自分だけのスタイルは、捨てた先に腑に落ちて、見えてくるもの。
いささか刺激的、でも捨てた先に必ずあなたらしい未来が拓けてくる。本書を片手に、クローゼットと自分自身を解き放ってみたくなりました。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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