大惨敗のワケ
筆者も何度か放送をチェックしたところ、その理由がはっきりと分かりました。和久田アナのトークに、どうしても物足りなさを感じてしまうのです。たとえば、栃木の強盗殺人事件についての「私たちの常識では量りかねる行動にでている」とのコメント。これはわざわざ時間を取ってまで言う必要のないことです。視聴者もとっくにその前提でニュースを観ているからです。
しかし、和久田アナの言葉は、どれもごく当然の常識しかなぞってこないのです。それは100%に近い正答率だけれども、視聴者からしたら何の発見もサプライズもありません。優等生で完全無欠であるがゆえに、つまらなさの密度が濃くなってしまっているのです。
安住アナとの「決定的な差」
安住アナは、シリアスな話題でも文脈を補足したり、そこから考えが広がるメッセージを言外に込めたりしつつ、ハメを外せる気楽なトピックでは、三谷幸喜氏との手練れたトークを展開します。
寄り道をしながらも、ユニークな空気感を醸しているわけですね。この脱線するユーモアこそ、和久田アナに欠けている要素なのです。
有働アナ、武田アナにも共通する点
たとえば、打ち切りになった『with MUSIC』(日本テレビ系)での有働アナウンサーは、ミュージシャンとのトークでも個性を発揮できずにいました。音楽的な背景を深掘りするわけでもなければ、プライベートに踏み込んで本音トークを繰り広げるわけでもない。どっちつかずで焦点が定まらないまま、なんとなくゆるふわな雰囲気が漂うだけの、掴みどころのない番組になってしまいました。
いま『有働Times』(テレビ朝日系)で、かつてのNHKでのニュースのようなスタイルに戻り好調なのは、ある意味皮肉だと言えるかもしれません。
NHK出身アナウンサーに求めるもの
もちろん、これだけで「NHKのアナウンサーが民放では通用しない」と結論づけるのは早計というものでしょう。ただし、事前の期待値の高さに比べると、いずれも肩透かしを食らったような感覚なのは否めないところでもあります。やはり、NHK出身のアナウンサーには、重厚さと軽妙さをあわせもった存在でいてほしいのです。それぐらいの期待感を、まだまだNHK(出身者)には持っていたい。それはわがままなのでしょうか?
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。
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