
※本文にネタバレを含みます
視聴率上昇『監察医 朝顔』3話
雨のなか、万木家の前に印象的なポーズで立っていた山倉(戸次重幸)は、平(時任三郎)に家の中に招かれる。【前話レビュー】『監察医 朝顔』が現代的なドラマである所以は生活のディテールを丹念に描いている点
帰宅した朝顔(上野樹里)、桑原真也(風間俊介)を次々驚かせた挙げ句、鉄板焼をしながら、異動になるかもしれないと嘆く山倉。
翌朝。
山倉は、鉄板焼にいっぱいのパエリア(?)を作って置いていく。彼はただの面倒くさいだけの人ではなかった。
『監察医 朝顔』第3話は食事がテーマ。潮干狩りで獲った貝を使った朝顔の料理の数々も、どれも貝の塩のきいた風味が漂ってきそうに見えた。
その日、丸尾からの電話で現場に向かった朝顔を待っていたのは、山梨と神奈川の県境で、半目し合う山梨県警の伊藤(三宅弘城)と神奈川県警の丸屋(杉本哲太)だった。
そこにはミイラ化した遺体が。
もしやこれは、神奈川県警が20年前から追っていた人質立てこもりの指名手配犯・佐竹龍二ではないかと騒然となり、解剖した結果――
ただの身元不明の遺体だ、県警の仕事じゃないと、さっさと去っていく県警の西野(樋渡真司)。でも桑原は立ち去り難く……。
「違ったら帰るのかい。県警は冷たいのう」と藤堂(板尾創路)がぼやく。本当に、ただの遺体って言い方はひどい。
そんな名のない遺体を、たったひとりの誰にも代え難い人物に蘇らせるのが法医学。興雲大学法医学教室の面々は着々と遺体を調べていく。年齢や死後何カ月経っているかなどだんだんわかってくる。
亡くなった時期を特定できたのは、光子(志田未来)が遺体から検出した虫からだった。光子は最近、独自に法昆虫学を勉強していた。
父を失った娘の想い
ご遺体は吉野紀夫。66歳。そのひとり娘の吉野佳奈(佐久間由衣)が確認にやって来るが、父一人子一人で質素に生きてきて、父親がタキシードを着るなんてことはこれまでなかったと不思議な顔をする。なぜ父はタキシードを着ていたのか。
娘にとって亡き父のイメージがミイラ化した遺体であることは衝撃だ。ミイラ化していたためエンバーミングもできない。朝顔は佳奈のために、紀夫が亡くなった時のことを、休みの日を使って調べることにする。
ミイラ化と同時に、小さく縮んだ胃のなかに残っていた骨を特定し、佳奈をとあるレストランに招く、朝顔と茶子(山口智子)。
ちょっとおしゃれしている朝顔と茶子。亡くなる前に、このドレスコードのある店に父が来ていた事実を聞かされて、「父は66ですよ。普通のおじさんというか、おじいちゃんです」と、信じがたいという顔をする佳奈。
紀夫の食べた最後のメニューは意外なもの。冒頭に伏線があった。貝かなあ? と思わせて……。
作り手はなぜ、人によって好き嫌いのあるこの独特の食材を選んだのか。3人は「美味しい」と食べていたが、筆者は苦手なので、見ていて、うえっとなった。
独特な高級食材というところで、印象には残るとは思う。淡々と穏やかな日常を描くドラマにいくらかのざわめきを、という意図かもしれない。だからというわけではないと思うが、2話より3話のほうが視聴率も上がった。

供養とは――
食事をしながら、亡くなる直前の父の状況や想いを想像する娘。それを皮切りに、父の思い出を、茶子と朝顔に語る。「知りたい事実。いや、知りたくない事実。人生いろいろでございます」と茶子。
朝顔の母(石田ひかり)は震災で行方不明になったまま。もし亡くなったとしたら、そのとき、母はどうしていたかを求め続けている。
お葬式とは、亡くなった方のためというよりも、残された者が区切りをつけるためとも言われる。それと同じで、亡くなったこと、そのとき、どういう行動をし、何を考えていたかを知ることは残された者には必要な儀式なのだ。
だからこそ、長年、捜索を続けていた平は、妻が消えた沼が埋め立てられることを知って、気が気でなく、仙の浦に転居を考えている。今は手を負傷したため、朝顔が代わりに行っているが、祖父(柄本明)が来なくていいと言う。それには何か理由があるらしく……。
毎回、描かれる事件と、朝顔と平と行方不明の母のことが重なる構成になっている。
それにしても、20年前に立てこもり犯人・佐竹龍二という人物がとても目立って出てきたわりに、まったく事件に関係なかったことに拍子抜け。この事件もぜひ神奈川県警の桑原に解決してほしい。
【関連記事】『監察医 朝顔』1話 傷を抱えながら人々の“生きた証”を残す朝顔が愛された理由
【関連記事】『監察医 朝顔』が現代的なドラマである所以は生活のディテールを丹念に描いている点
【関連記事】『監察医 朝顔』第1シーズン全話レビュー
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami
※次回4話のレビューを更新しましたら、以下のツイッターでお知らせします。
お見逃しのないよう、ぜひフォローしてくださいね。
【エキレビ!】https://twitter.com/Excite_Review
【エキサイトニュース】https://twitter.com/ExciteJapan
番組情報
フジテレビ『監察医 朝顔』毎週月曜よる9:00〜
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao2/