『24 JAPAN』麗が大事な発表を…その命を狙うスナイパー 緊張感の二段重ねに心臓爆発の8話
イラスト/AYAMI

※本文にはネタバレがあります

麗の命が狙われる『24 JAPAN』8話

『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)第8話は7時〜8時。朝7時ともなると、街が動き出す。朝倉麗(仲間由紀恵)の朝食会に集まってくる人々。
そのなかに写真家・皆川になりすましたスナイパー(前川泰之)もいて、まんまと会場に潜入。獅堂現馬(唐沢寿明)も会場入りするが、敵からも味方からも突き上げをくらって孤軍奮闘。

【前話レビュー】徹底的にクールな栗山千明、揺れ動く木村多江、冷静と情熱の貫禄の仲間由紀恵

朝倉麗は朝食会に出るためにチェックの清楚なツーピースにお着替え。じゃあ夜中にお召になっていた派手なピンクのスーツは何用だったのか? なぜ夜中にあんな華やかな服を着ていたのか……と思ったが、あ。そうか。家族の真実を話すことを決意したから、あの派手なスーツはふさわしくないと考えての行為にちがいない。さすがのご配慮です。

六花(木村多江)神林(高橋和也)に捕まって、現馬の脅しの材料にされる。妻子を人質にとられ、言いなりになるしかない現馬ではあるが、水石伊月(栗山千明)を殺したように見せかけてうまく細工していた。

「水石伊月は死んだ」と神林が明智菫(朝倉あき)に言ったすぐあと、伊月が山道を歩いている。現馬の配慮で九死に一生を得た伊月は山小屋にたどりつき、ドアを回し蹴りで開け(かっけー、さすがゴーゴー夕張)、CTUに電話をかける。

南条(池内博之)から菫の話を聞いて、彼女が内通者であると察知する伊月。
菫は神林と連絡をとっていた(音声が正しく文字化される素敵なシステム)。

現馬が麗の朝食会に潜入

スナイパーに渡す武器の運び屋にされた現馬は朝食会の現場に着いてセキュリティチェック。スナイパーのときも現馬のときも、チェック場面は『クイズ・ミリオネア』のように溜めに溜めて、ハラハラさせる。

会場に入った現馬はスナイパーを探す。あいつか、こいつか……。緊張の糸が張り詰めた――それが、いきなり、ゆるむ。

「獅堂くん!」
呼び止めたのは、民政党、選対スタッフチーフで“おしゃべりな女”香山理絵(佐藤真弓)。彼女は現馬の高校の同級生で、親しげに話しかけてくる。

このときの現馬の表情が絶妙。第8話のベストアクト。迷惑……という感情は若干出しながら、それが高校時代の獅堂くんに戻ったような顔になっているのだ。会ったばかりの共演者に対して、こういう顔をできるとはさすが。理絵役の佐藤真弓のやたらなつっこい巧い演技に反応しているのだろう。


理絵「これって運命」
獅堂「違うだろ」

ここ、何度見ても笑う。
ペラペラしゃべりかけてくる理絵に、こっそり「党首がキケン」(急いで書いているためものすごく字が汚いというリアリティー)とメモを渡すが、通行人にドン! と突き倒される理恵。はたしてメモは彼女の手に渡ったのか。

ここまでほぼ30分。

CTUに戻ってきた伊月を迎える南条。朝食会に向かったという現馬を疑う南条に「班長が暗殺なんかに手を貸すわけないわ」と信じる伊月。

その頃、現馬は会場でスナイパーと落ち合い、運んできた武器を渡す。会場内でこんなことできるってセキュリティーゆるすぎない? という疑問も深夜に観てる分にはあまり気にならないが、朝観ると気になる。

ともあれ、その際、指紋をつけられて、暗殺犯に仕立てあげられそうになってしまう現馬。妻子を人質にとられて暗殺計画に協力させられた挙げ句、罪まで押し付けられそうで、地獄の窯が口を開けて待っているという絶望に支配される現馬がかわいそうになってくるが、この人はたぶん、諦めていない。タフな精神力。

とここでCMタイム。
現馬はかなり過酷な状況にもかかわらず、「さあさあビールを飲んじゃうぞ♪」とCMでは一番搾り糖質ゼロで和んでいるギャップ。最近、役のイメージが崩れることはその役をやっている間はしないという昔ながらの演技論は無効化していることを感じる。今はもう、役はあくまでも、演じている俳優ありきで、その俳優にいろいろな顔があるから好き! みたいな時代なのだ。

『24 JAPAN』麗が大事な発表を…その命を狙うスナイパー 緊張感の二段重ねに心臓爆発の8話
次回8話は12月4日放送。画像は番組サイトより

そして六花と美有の命も……

南条は、現馬が暗殺犯に操られている可能性があり党首が危険と、警護スタッフに連絡。

それから伊月の作戦で、南条はトイレで神林に連絡を取っている菫を捕まえる。なぜ女子トイレに南条が行く。本当にトイレ中だったらどうするつもりなのか。伊月がまだ死んだことにしているとしても、監視カメラに気をつけているとしても、この状況下で真打ち登場みたいにあとから出てくるわけは、南条も活躍させてあげないといけないからか。トイレの上から菫の脳天に拳銃をつきつける画はなかなかよかった。

南条と伊月が問い詰めても、こんなに切羽詰まっていても「弁護士が来るまで話せません」と突っぱねる菫。『24』本家が契約社会であることを感じる一場面も。

朝食会がはじまり、麗が挨拶をはじめた。神林の指示で、現馬はスナイパーが撃つ銃をしぶしぶ受け取りに向かうが、南条に連絡を受けた警備スタッフが現馬を追い詰める。


麗が大事な発表をするのか……という緊張感と、スナイパーが撃つのか……という緊張感の二段重ねが広い会場を圧する。

そして六花と美有(桜田ひより)の命が……。

これまでたくさん死んできたので、本当に死んじゃいそうとひやひやするし、とはいえ、死んじゃうときは間髪入れずに殺るから、もったいつけているということは推して知るべし。

そして、ここへ来て、これまで何度も会話のなかに出てきた、現馬がこれまで組織の規則を何回も破っていたことが状況に影響を及ぼすという流れににやりとなる。

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

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番組情報

テレビ朝日系
『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜

番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/
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