
2歳でデビュー、今年28歳! 神木隆之介のキャリアを振り返る
子役時代が輝かしい俳優ほど大人の俳優になるにあたって困難がつきまといがちである。俳優とはいろいろな役がやりたいものなので、子供の役だけでは飽きたりないにもかかわらず、他者からはいつまでも子供の役を期待され、そのギャップに苦しむのである。【関連レビュー】『コントが始まる』トリオであり親友――緊張と緩和の聖域を輝き生きる芸人の姿を菅田将暉・仲野太賀・神木隆之介が巧みに演じる
俳優に限ったことではなく、どんなに大人になっても親からは子供扱いされ、なんだか居心地が悪い体験は誰しもあるだろう。
最初に見たものを母と思い込んでしまう雛鳥のように、2歳でデビューし芸能界で活躍してきて現在28歳、26年もの芸歴はすでにベテランといってもいいくらいの神木隆之介に、私たちが今なお“少年”のイメージを持ち続けてしまうのである。
1993年生まれの神木は2年後には30歳になる。そろそろ“少年”と呼ぶのも憚(はば)られるかなと思っていた矢先、『コントが始まる』(日本テレビ / 土曜よる10時〜)で目を見張った。
『コントが始まる』は春斗(菅田将暉)と潤平(仲野太賀)と瞬太(神木隆之介)がトリオ芸人・マクベスとして活動していたが、芽が出ず解散する決意をし、解散公演を間近に控えたときの物語。高校の同級生の彼らは二十代後半を迎え、夢を追い続けていいものか迷いはじめる。
第1話で彼らの馴れ初めが紹介され、菅田、仲野、神木の3人は役の高校生だった10年前を演じる。神木が演じる瞬太はぷよぷよの大会で全国1位になって注目を集め、高校卒業後はプロゲーマーとして活躍。だがやがてゲームの腕が若手にはかなわなくなって、菅田演じる春斗と仲野演じる潤平のコンビ芸人に参加して3人で活動するようになったという設定だ。
菅田も仲野も総じて演技派ではあることに異論はない。そんななかでも神木隆之介の“高校生”は絶品だった。大人になった神木が演じる瞬太は金髪で、高校時代は黒髪という見た目の明らかな違いも功を奏していたかもしれない。
そのとき思い出したのは、2019年に神木が主演した『鉄の骨』(WOWOW)に関するインタビューを行ったときの彼の回答だった。このドラマで社会人4年目の会社員を演じた神木に、「少年役はそろそろ卒業でしょうか」と聞くと、福山雅治の楽曲「生きてる生きてく」のなかにある、<子供のころは大人になんてなれないのに 大人になれば「ときめく」だけで いつでも子供になれる>という歌詞に共感する、と神木は答えたのである。
年齢を経ると制服が似合わなくなることを気にしたり、話題になることを意識したりして、制服卒業を高らかに宣言する俳優たちもいるなかで、神木は大人になっても少年を演じたい意思を見せた。
あれからまた時間が経過したので今はわからない。けれど、『コントが始まる』の瞬太の高校生姿はまだまだ神木が少年役現役であることを感じさせた。神木は少年の経験を大人の俳優になっても生かし、いつでも少年に変化(へんげ)することができる稀有な俳優になる可能性をもっている。神木が演じてきた少年たちの歴史を振り返ってみよう。
神木が演じてきた少年たちの歴史
神木隆之介は1993年5月19日、埼玉県生まれ。芸能界デビューは95年。俳優デビューは99年。屈託のない善良な少年、理想の息子のイメージがあるが、俳優デビュー間もなく出演した2000年『QUIZ』(TBS)では、いたいけな少年が犯罪に手を染める難役に挑んでいた。ピュアゆえに悪に傾く少年の危うさを演じ、かわいいだけの子役ではなく、俳優としての貫禄を見せていたのである。こうしてみると、意外にも、初期の神木は屈折した役を多く演じているのである。映画『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』(2009年)では壮大な物語の鍵を握る少年役をピンポイントながら鮮烈に演じ(筆者が撮影現場を見学したとき、ある瞬間すっと表情を変える顔筋の動きがCGかと思うくらいなめらかで驚いた)、映画化もされた連ドラ『SPEC』シリーズでは“この世界の王”を称し、邪魔な者は消していくSPEC(特殊能力)保持者を演じた。
恵まれた才能を生かし、いささか尊大になってしまうような突出した人物を軽やかに演じていた神木が一転して、スクールカーストの底辺にいる地味な少年を演じたのは映画『桐島、部活辞めるってよ』(2012年)だった。この作品で彼が演じた、たとえ校内では地味で顧みられなくても好きな映画を撮り続ける少年には多くの人が共感を覚えた。天使のような天才少年が少しだけ地上に降りてくれたようであった。
アニメーション映画ではすでに『サマーウォーズ』(2009年)で内気ながら数学の才能があり、世界の危機にその能力を発揮し成長する少年の声を担当。その後、『君の名は。』(2016年)でも、とんでもない出来事に巻き込まれていく極めて善良な少年役(声)と、こういう役が十八番になったと言っていい神木が、公開中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ではまさかの大役(声)に大抜擢された。
長らく少年役を多く演じてきて、まだこれからも少年を演じられそうではありながら、 徐々に大人の役にシフトしているこの時期に、少年と大人の微妙なニュアンスが必要な役をやることはとても興味深く、セリフは少ないながら重要な役割を担っている。
神童、地上に降りた天使、子供と大人を行き来する妖精のような存在……と少しずつ姿を変えていく神木隆之介。
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インストール(2004年)
お父さんのバックドロップ(2004年)
妖怪大戦争(2005年)
遠くの空に消えた(2007年)
連続テレビ小説どんど晴れ 総集編(2007年)
ピアノの森(2007年)
サマーウォーズ(2009年)
11人もいる!(2011年)
とある飛空士への追憶(2011年)
桐島、部活やめるってよ(2012年)
SPEC~零~/警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿(2013年)
るろうに剣心 京都大火編(2014年)
東野圭吾「変身」(2014年)
バクマン。(2015年)
太陽(2015年)
君の名は。(2016年)
屍人荘の殺人(2016年)
3月のライオン(2017年)
メアリと魔女の花(2017年)
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章(2017年)
屍人荘の殺人(2019年)
集団左遷!!(2019年)
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SPEC~零~/警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿(2013年)
劇場版 SPEC 〜結(クローズ)〜漸(ゼン)ノ篇(2013年)
劇場版 SPEC 〜結(クローズ)〜爻(コウ)ノ篇(2013年)
東野圭吾「変身」(2014年)
学校のカイダン(2014年)
太陽(2016年)
3月のライオン(2017年)
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木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami