岡田健史 硬派な思考を堂々と伝える、令和の大物俳優の高いコメント力
イラスト/おうか

令和の大物俳優・岡田健史のコメント力

話題になった俳優は名演技をすればいいだけではなく、見出しになるコメント力も求められる。なかには演技はピカイチながらインタビューで気の利いた話が出ない人もいるが、それはそれで個性なのでいい。ただSNS時代、見出しになるコメントが言えることはひとつの武器になる。


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2018年、教師と恋愛する中学生というセンセーショナルなドラマ『中学聖日記』で颯爽にデビューし、瞬く間に人気者となった岡田健史はそのデビュー神話だけでも十分保つ俳優である。さらにそこへ今年2021年の第44回日本アカデミー賞で『望み』『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』『弥生、三月 -君を愛した30年-』の3作によって新人俳優賞を受賞した際の受賞スピーチが注目されてネットを踊った。

「かの有名な落合博満氏はこう言いました。ダイヤモンドを回っている瞬間には、ダイヤモンドを回っているのは過去のことだ。だからガッツポーズはしないのだと。大変光栄なことではありますが、目の前の刹那と向き合える役者でありたいです。
最後になりますが、僕と一緒に戦ってくださったみなさま、本当におめでとうございます」

先日、NHKの情報番組『あさイチ』に出演したときもこのスピーチが取り上げられていた。話題にしたくなる力の漲(みなぎ)った言葉だったから当然だろう。

映画賞の授賞式で野球選手を例に出す意外性。その硬派な考えを堂々と語る姿は眩しい。近頃は等身大の、日々の生活に溶け込む線の細い俳優が多いなかで、これほど骨太で高らかにスピーチできる俳優は貴重である。

筆者が『望み』(20年)のパンフレット用の取材をしたとき、彼の役はほぼネタバレだったため、パブリシティ用の取材では語れないことばかりだった。
パンフレットだけが唯一ネタバレOKの場で、彼は「ほかの雑誌(媒体)でしゃべれなかったことをしゃべりましょう」と開口一番そう言って、ニコリと笑った。繰り返すが、眩しい。

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燃える油でなく燃える水のようであれ

岡田健史には久々に登場した大物という印象がある。1999年福岡県生まれ。学生時代は野球をやっていたが、演劇部に誘われて出演した公演で芝居に目覚める。芸能デビュー作が代表作になり、いま、ドラマに映画にひっぱりだこだ。

野球部でキャッチャーをやっていたからこその、遠くまで見つめる視線と遠くまで届く言葉。
こんなにも健やかな青年だが、デビュー作では最初、中学生が教師(有村架純)に恋するなんてありえないと違和感を覚える視聴者もいた。ところが、こんなにも健やかで真っ直ぐな人物が演じるからこそ、次第にその恋愛がとびきりピュアなものに見えるようになっていったのだ。途中で役が中学生から高校生に成長したから許容できるようになったという説もあるが、それよりも本人の資質ではないだろうか。

1月期のドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(NTV / 21年)では隠れオタク役。大学では漫画が大好きであることを隠してチャラいモテ男を演じた。どうでもいい子にはチャラく振るまうが、本当に好きな相手には紳士的。
むしろ奥手に見えるほどおずおずと大切に扱う。そんな岡田の演技によって、彼と浜辺美波とふたりで演じるオタクの恋人未満友情以上の関係は多くのキュンとなる名場面を生み出した。ヒロインのそばに常にいる姿は白熊のようにピュアホワイトで、長い手足に囲まれた広い懐。“この人なら必ず守ってくれる”という絶対的な安心感。

コロナ禍のなか木皿泉が描き下ろしたショートドラマ『これっきりサマー』(NHK / 20年)では、高校野球がコロナで中止になってしまって、心身ともに持て余す高校生役をリアリティーをもって演じ、わずか10分のミニドラマだったが、それこそ“刹那”を感じさせるものだった。

岡田健史の清潔感は恋愛ものに限らない。
刑事ドラマでも生かされる。『MIU404』(TBS / 20年)、『桜の塔』(テレビ朝日 / 21年)で彼が演じる刑事は、決して正義だけではない警察のなかで汚れのない者であってほしいという願いを一身に受ける役である。

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『桜の塔』の第1話で、「キャリアに染まるなよ」と広末涼子演じる先輩に声をかけられていた。本当にそうで、警察に限らず芸能界だって、いや社会全体が、そこに身をおくと様々な汚れをかぶっていくもので、どれだけそれをはねのけることができるか、精神の戦いである。

岡田健史は、スポーツマンにありがちな日焼けしてギラギラしたところがなく、高い志が透明である。大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)では、主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の親戚、尾高家の末っ子・平九郎役。
栄一や兄たちインテリ農民に憧れを抱き、追いかけて、戦に巻き込まれていく。文武両道の美青年という設定は岡田にぴったり。

もちろん俳優なのだからいろんな役を演じたいであろうから、勝手な枠に当てはめてはいけない。ただ、一途に常に全力で燃え尽きる勢いで演じ続けてほしい。燃える油でなく燃える水のようであれ。それが令和の日本の希望になる。

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★「岡田健史」出演作品★
※2021年4月20日時点で視聴可能な作品
中学聖日記(2018年)
ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―(2020年)
弥生、三月 君を愛した30年
青天を衝け(2021年)

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★「岡田健史」出演作品★
※2021年4月20日時点で視聴可能な作品
博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?(2019年)
ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―(2020年)
ウチの娘は、彼氏が出来ない!!(2021年)
【特別映像集】劇場版『奥様は、取り扱い注意』(2021年)

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

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@kamitonami