『おかえりモネ』第4週「みーちゃんとカキ」
第16回〈6月7日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉

「種ガキがなくなったら日本からカキが消える」
美味しいカキに危機が訪れていた。カキを救おうと百音(清原果耶)の妹・みーちゃんこと未知(蒔田彩珠)が奮闘する種ガキを作るための自由研究活動。カキの養殖業のベテランのおじいちゃん・龍己(藤竜也)と未知のやりとりを百音は見守る。
【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第16回掲載中)
昼の天気予報番組に朝岡(西島秀俊)が登場、テレビを観ている耕治(内野聖陽)と「きの食べ」(『きのう何食べた?』)人気コンビの共演とSNSでは話題に。「百音はこういう人(朝岡)がタイプか」という耕治のセリフが意味深に聞こえた「きの食べ」ファンも多かったであろう。
三生、居候する
及川亮(永瀬廉)の「海風回ってきたなあ」の言葉とともにかかる劇伴が、本当に空を回っているみたいで、百音の心がふわりと螺旋を描きながら持ち上がるような感覚がした。登場からずっと何か思いつめているような百音だが、ゆっくりと心は動いている。浜で朝日を見た百音の同級生、亮、野村明日美(恒松祐里)、早坂悠人(高田彪我)、後藤三生(前田航基)と未知は送り盆の日にまた会うことにして別れる。その別れ方のあっさり具合が逆に親しさが感じられる。毎日学校で会って別れて。それを繰り返してきた当たり前な感じである。
悠人は『あまちゃん』に出てきた三陸鉄道を撮りに行くと言って朝ドラファンの心をくすぐった。第16回は、「きの食べ」ネタ、『あまちゃん』ネタとサービス、サービスゥ〜。
三生だけは実家の寺に戻れないので、帰る場所がない。亮に泊めてもらえないかと聞くもはぐらかされ、百音に頼る。百音の家は同級生たち4人も泊めることができるくらい広いから、三生ひとり泊めることになんの問題もない。
三生はいじられキャラとして、大いに機能する。彼がいるおかげで大人しくなってしまいがちな空気が弾む。龍己には「勘がいい」と褒められ、食事の前にはちゃんと手を合わせ、なかなかできた人物でもある。内野聖陽と前田航基のふたりで空気をあげていく。
未知、カキの赤ちゃんを育てる
ふだん何気なく食べているカキがどうやってできているか、未知の自由研究活動によって紹介される。未知は家の離れにある龍己の漁業用の小屋の一角に何やら本格的な研究場を作り、種ガキを作る研究をしている。
「種ガキがなくなったら日本からカキが消える」
石巻と松島から種ガキを購入し、養殖場で大きく育てて出荷していたが、震災で大変な被害を受けていた。それもあって、未知は種ガキを自家栽培しようと研究をはじめたのだ。気仙沼のみならず、日本の種ガキの8割を担う場だというから、日本のカキの未来が心配になる。美味しいカキのために未知、がんばれ。


「積算600度」「浮遊幼生」「原盤」……専門用語がいっぱい。
食事を摂る間も惜しんで研究に勤しむ未知。ついにカキの赤ちゃんが生まれる。それを、育てる原盤を海に入れるタイミングが難しい。気象データによれば来週がいいが、天気を熟知している龍己は今日がいいと言う。悩んだ末、未知はーー。
「漁業は基本ギャンブル」(耕治)、「だからおもしろいんですよね」(亜哉子) その言葉がここに繋がる。漁師は天気を予測する。今は科学が発達したけれど、昔は海での行動は勘まかせだった。獲物の獲得も生死も運任せであったわけで、若い頃はマグロ漁船に乗っていて、いまはカキの養殖をしている龍己には達観したたくましさがある。
海に出た船乗りの生命は運任せ。耕治は以前、「死ぬからね、漁師は」とさくっと言っていた(第6回)。
時に死をもたらすこともある自然の驚異。でも人間はあらかじめ自然の動きを予測することが可能だ。自然に完全に打ち勝つことは難しいとしても、自然を回避することができたなら人類は負けないのではないか。現に漁師をはじめとして太古から人間はどうしようもない自然の大きな力に対抗してきたのだから、人間って捨てたもんじゃないと思えてくる。龍己や未知の真摯な表情を見ていると、絶え間ぬ努力の力強さの尊さを感じる。
(木俣冬)
※『おかえりモネ』第17回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami