
シーズン2も作るよ!『ロキ』最終話
全6話が無事配信された『ロキ』。そのラストは、「え~!?」と言いたくなるようなクリフハンガーエンドだった。いや~、こうなっちゃったか……。【前話レビュー】『ロキ』第5話 子供ロキ、黒人ロキ、老人ロキ、ワニロキ……そして、そんなロキたちを呆れるロキ
とうとうラスボス戦! "在り続けるもの"とは誰か
前回ラストでクラシックロキに助けられ、無事アライオスの心を操作して退けたロキとシルヴィ。今回のオープニングロゴでは、過去のマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)の名台詞の数々と、現実世界の名言(グレタ・トゥーンベリの「よくもそんなことを!」が流れたのはびっくりした)がオーバーラップし、最後に『ワンダヴィジョン』での「嘆くのは、愛を貫いている証拠では?」というセリフが被せられた。MCUでの時間軸と現実の時間軸を重ね合わせた、『ロキ』の最終話らしいオープニングである。とうとうラスボスの住む砦にたどり着いたロキとシルヴィ。中に入った二人を待っていたのは、TVAのマスコットであるミス・ミニッツだった。彼女はここでは"在り続ける者"という人物の案内係を務めており、ロキとシルヴィに「"在り続ける者"はあなたたちが望む世界を与えてくれると言ってます」と告げる。ソーに勝利することも、サノスを殺すことも、幸せに過ごすことも可能……。そんなオファーを二人は蹴り、「在り続ける者」のところへと殴り込む。
ついに"在り続ける者"と対面したロキとシルヴィ。その人物は、なんだか余裕綽々でヘラヘラした黒人男性だった。「自分は単なる生身の人間に過ぎない」と話す"在り続ける者"。しかしシルヴィの刃は彼を捉えることができない。驚愕する二人に対し、"在り続ける者"はとある書類を突きつける。

一方、TVAに戻ったメビウスは、自分の上司にしてメビウスを"剪定"した女であるラヴォーナと再びの対面を果たしていた。友人だと思っていたのに剪定されたことへの悲しみをラヴォーナにぶつけるメビウス。さらにメビウスは2018年のオハイオ州、F・D・ルーズベルト高校に洗脳から目覚めたB15を向かわせ、高校の教師として勤務しているラヴォーナの姿をTVA職員に見せることで、ラヴォーナもまた変異体であることを知らせていた。追い込まれたラヴォーナは、「二人でよりよい組織を作ろう」というメビウスの申し出を無視し、タイムドアを開いて姿を消す。
最終話に入って怒涛の展開が続き、今までの疑問が一気に解かれていった第6話。"在り続ける者"によって語られた「31世紀に生きていた自分の変異体である科学者がマルチバースを発見、他の時間軸の自分との交流を初めてそれぞれの宇宙が発展した」「しかしその中で他の宇宙を征服しようとする変異体が現れ、複数の宇宙にまたがる戦争が起きた」という話は、第1話でのTVAについての説明とほぼ変わらない。しかし話しているのが当の変異体本人であり、さらに"在り続ける者"を演じるジョナサン・メジャーズは2023年公開予定の『アントマン&ワスプ:クアントゥマニア』でヴィランの"征服者カーン"を演じることになっている。"在り続ける者"の変異体のうちの一人が、"征服者カーン"である……という展開が予想されるキャスティングだ。
物語の枠組みとヴィランの関係を、うまく捉えた作品
とにかくややこしい話が続く第6話だが、最後にロキとシルヴィにはふたつの選択肢が出される。「ここで"在り続ける者"を殺し多数の時間軸を解放、自由な時間軸間の闘争を放置する」もしくは「"在り続ける者"の跡を継いで時間軸を統制し、現在の神聖時間軸を守る」という二択だ。これは言い換えれば、「キャラクターが自由に動いているように見えて、実は台本が存在する世界」を逸脱するか、それとも今まで通り台本のある世界をキープするかという二択である。このMCU全体に関わる非常に重い選択を巡って争うのが、ロキというヴィラン二人であるというのがなかなかメタ的。どちらもヒールで物語の枠外に逃れることができるキャラクターであるからこそ、「今後も台本に従うか否か」という争点を巡って争うことができる。おそらく"在り続ける者"も、ベビーフェイスであり物語の枠組みそのものであるキャラクター(例えばキャプテン・アメリカ)を自分の後継者に据えようとは考えないはずだ。ロキを主人公にしたドラマだからこそ可能になった展開である。
このシルヴィとロキの戦いはなかなか悲しい。お互いに理解しあっているはずなのに、時間軸全体から追い詰められて育ったために相手を信じることができないシルヴィ、そして裏切りを重ねた結果ギリギリのところで信用されないロキ。最後の最後ですれ違った二人の死闘、そしてその顛末はなかなかビター。まさか単独作で、こんなに切ないことになっちゃうロキを見ることになるとは……。

そして第6話は驚天動地の結末、そして「シーズン2も作るよ!」という告知で幕を閉じる。
正直、終わってみれば「今後のMCUはこういう感じでやっていきます」という壮大なプレゼンだったな……という気持ちになったのも事実。ドラマ単独で終わらず、映画とドラマを往復することでストーリーを展開するのが『エンドゲーム』以降のMCUの新たなスタイルということなのでこうなるのもわかるのだけど、もうちょっとプレゼン臭さがなければよかったかな……という気もしないでもない。
ただ、「物語の枠組みを外れることができるひねくれたヴィラン」を主人公に据えるということの意味をしっかりと考えて作られた作品であることは間違いない。なにより、「多元宇宙間の戦争」という壮大なビジョンを提示してくれたところも意義深いものがあると思う。小ネタも色々と仕込まれているし、シーズン2のスケジュールが発表されるまで見返して、いろいろとディテール発見するのが楽しみだ
(しげる)
作品情報
『ロキ』Disney+(ディズニープラス)にて配信中
(C)2021 Marvel

Disney+(ディズニープラス)
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全6話配信中!
しげる
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。
@gerusea