加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

加藤和樹、アーティストデビュー15周年を記念したフォトブック「K」を発売

男は顔やスタイルじゃありません。中身第一。いくら見た目が良くても仕事ができなきゃねぇ。
性格が良くなきゃねぇ。……などと口では言ってても、イケメンが嫌いな女子はおそらくいない。その証拠に、昔から少女漫画に出てくる男子は、みなイケメン。中身勝負なら、見た目があそこまで男前である必要がない。

やっぱり、なんだかんだ言ってもイケメンは夢を見せてくれるからありがたい。こ~んな素敵なシチュエーションで、こ~んなカッコいい人に、こ~んなこと言われたら……と、自分の容貌はスカイツリーのてっぺんまで上げといて、気分はヒロイン。
という妄想をイケメンは無理なくエスコートしてくれる。パリの街角、夜の浜辺、避暑地のコテージ、どこにでもなんの問題もなく溶け込み、望む形にストーリーを盛り上げる、なんとも頼もしい妄想パートナーなのである。

加藤和樹もそういう素敵な男性の一人と言えるだろう。身長181cm、ちょっと愁いを含んだルックスとクールなたたずまい、そして渋い声。その容姿で歌手に俳優に声優にと幅広いジャンルで活躍しているのだから、嬉しくなるほどイケメンポイントは高い。きっとマルチなパフォーマーとして順風満帆にステップアップしてきたお方なのだろう、と思っていた、この『加藤和樹アーティストデビュー15周年メモリアルフォトブック「K」』を読むまでは。


加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

この『K』はデビュー15周年を記念して出版された、写真集と書籍を合体させた全128ページからなる書籍だ。構成は大雑把に言うと、写真と文章がほぼ半々の比率になっていて、ビジュアルからも読み物からも加藤和樹の“これまで”と“今”が丁寧に捉えられている。

というわけで内容なのだが──。まず全体の約3分の1を占める撮り下ろしの写真は“今”を伝えてくれるブロック。俳優、歌手、声優と様々な顔を持つ加藤和樹を、バラの花とブラックスーツでキメたショットや街中でのラフなショット、プライベート感あるショットで端的に表現している。言うまでもなくそれらの写真は文句なしにダンディー。
加藤和樹のフォトジェニックぶりをたっぷり堪能させてもらえる。

すべてを赤裸々に話した、5万字超えのバイオグラフィー

その一方で“これまで”の加藤和樹にフォーカスを当てているのが、幼少期から今に至る表現者として歩んだ軌跡を語った5万字を超えるバイオグラフィー「This is what I have been doing.」。いやいや、これが圧巻。呼吸なしの仮死状態で生まれ、生命維持装置に入れられた出生時のことから幕を開けるのだが、どんな子ども時代を過ごして、どんな思春期を経て、何をきっかけに芸能界入りをして、いつ音楽に目覚めて……という今に至るすべてのことがわかるモノローグになっている。

加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

なかでも芸能界入りを決めるあたりからのことが興味深かった。やりたいことがハッキリしないまま事務所に所属して上京するも半年後に事務所が倒産、バイト生活をしながらオーディションを受ける日々が約1年半も続き、ようやく活動が軌道に乗ってからも演技や歌に納得がいかず、達成感を感じて当然の初の武道館ライブでさえ悔しさが残ったのだという。

とにかく懸命に努力するものの、なかなか満足できるような手応えを得られることがなかった、という苦悩や葛藤が正直に語られていく。
目の前には常に壁が立ちはだかり、ひと壁超えたら、またひと壁。その都度、壁の前で茫然自失して、思い直してはまた壁をよじ登ってきた。それが加藤和樹という人の15年だった。

けれども、そこにネガティブさが全くないところがいい。どんなに落ち込んでも、本気で悩んだ後は立ち上がる。きっと本当の前向きというのは、こういうことを言うのだろうと思った。
単に「前進あるのみ!」と言っているのは前向きでもなんでない。前を向くということは足元を見るということであり、足元を見るということは、過去もしっかり受け止めるということ。だからひとたび前を向いたら、同じ事では落ち込まない。加藤和樹の強さはそういうところにあると思った。

加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

そうした心情的なことにフォーカスを当てた“これまで”部門が「This is what I have been doing.」であるなら、デビュー以来の足跡を視覚的に追った“これまで”部門が「LIVE Chronicle」と「STAGE Chronicle」だ。こちらは時系列にライブや舞台の写真がまとめられているため、髪型の変化やパフォーマンスの違い、役柄による衣装のあれこれなど、見た目にも楽しい構成になっている。


コラムも充実! もちろん“加藤二郎”もございます

さらにこの書籍、コラムも非常に充実している。母上が24のレシピを手書きしてくれたカフェメニュー顔負けの「加藤のレシピノート」、上京当時に書き綴った「加藤の日記・歌詞ノート」、思い入れのある漫画を集めた「加藤の本棚」、普段聴いているお気に入りの曲を紹介する「加藤のプレイリスト」、スマホに保存されている写真を披露する「加藤の写真館」は、いずれも加藤和樹のプライベートが垣間見える作り。かと思えば「今だから笑える加藤を襲った衝撃の事件簿」は今でも笑えない事件のオンパレード。クールな見た目と裏腹な、ちょっとポンコツな一面があることに驚かされた。

そしてファンの間ではお馴染みのネタ“加藤二郎”も、もちろん今回エントリー。“ラーメン二郎”の味に魅せられた加藤和樹、ついには自分でスープストックから作るようになり、加藤流ラーメン二郎(=加藤二郎)を自身の定番メニューにするほどにまでに進化。その加藤二郎を中川晃教城田優にふるまいつつ、それぞれと対談。料理上手な加藤の手際も要チェックな企画となっている。

この他、井上芳雄、尾上松也、山崎育三郎をはじめ親交のある人たちから届いた26のメッセージ「Congratulations Kazuki !」、デビュー以来の「Discography」、15年の全活動を一望できる「加藤和樹 活動の記録」もあり、実に盛り沢山な1冊としてまとめられている。

加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

奇しくも15周年を迎える今年、『ローマの休日』のジョー・ブラッドレー役『BARNUM /バーナム』のフィニアス・テイラー・バーナム役の演技で第46回菊田一夫演劇賞 演劇賞を受賞。これからのミュージカル界を背負って立つ俳優の一人として大きな期待が寄せられている加藤和樹だが、9月に日生劇場、10月上旬にフェニーチェ堺 大ホールで上演を予定しているミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」では、アンダーソンとジャックという二役に挑戦。そして、12月に日生劇場で上演される「ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』」(人気マンガ「北斗の拳」のミュージカル化)に主人公ケンシロウの兄・トキ役に抜擢されている(小野田龍之介とのダブルキャスト)。

さらに、9月15日に15周年記念アルバム『K.KベストセラーズII』をリリースし、11月から初のピアノライブ、12月にはライブツアー『Kazuki Kato 15th Anniversary Special Live “GIG” Tour 2021-REbirth-』の開催も決定した。山も谷も持ち前の粘り強さで乗り越えてきた加藤和樹、ちょっと目を離せない今後の展開になりそうだ。
(前原雅子)

書籍情報

加藤和樹アーティストデビュー15周年メモリアルフォトブック「K」

加藤和樹=順風満帆なマルチ・パフォーマーという先入観を覆す、自叙伝とも言うべきメモリアルフォトブック
(C)東京ニュース通信社

発売日:2021年6月21日
定価:3,600円(税込)
撮影:トヨダリョウ

発行:東京ニュース通信社

アニメイトで購入する<メイキングDVD付>Amazonで購入する<Amazon限定表紙版>楽天ブックスで購入するタワーレコードで購入するセブンネットショッピングで購入する

CD情報

15周年記念アルバム
『K.Kベストセラーズ』
2021.09.15リリース



関連リンク

■加藤和樹 オフィシャルサイト
■加藤和樹 オフィシャルTwitter
■加藤和樹 レーベルサイト


Writer

前原雅子


フリーライター、音楽系が多い。読書、ジャンクから高級物まで広く食するお菓子、気の向いたときにする家事が趣味。