
SNSで話題を読んだエッセイを書籍化
突然、自らの意志で命を絶った大切な友人「君」への手紙として綴られた、あさのますみの随想録【著者インタビュー】亡き友人への手紙を綴りSNSで大きな話題を集めた作家あさのますみの随筆『逝ってしまった君へ』
「二〇一九年一月。私は、古い友人の一人を失った。
新年の挨拶と思い何気なく開いた共通の友人からのLINEで、「君」の死を知らされた著者。「なぜ」「どうして」という答えの返ってこない問いかけが頭の中を堂々巡りする日々を過ごす中、「行き場のないを気持ちをどうしても吐き出したくて」、「君」に宛てた手紙を書き、SNS「note」で公開。喪失の哀しみや淋しさだけではない、さまざまな思いを記した4000字弱の手紙は大きな反響を呼び、前編書き下ろしの「少し長い手紙」として本書が刊行された。
「君」の死を知らされて以降、著者が経験した様々な出来事を時系列に沿って回想しながら、心の変化や新たな気づきを記している本書。並行して、大学時代に出会った初めての恋人だった「君」との思い出も語られていく。聡明な「君」の優しさやポジティブさは、当時、経済面や親子関係に悩みを抱えていた著者を支え、恋人としての関係が終わり、特別な友人に変わった後も常に大切な存在だったのだ。
「君」が深刻な不眠に苦しみ、死の1カ月前には鬱病と診断されていたことを知らされた後も、当然、その哀しい選択を受け入れられない著者。
「親しい人が自ら逝ってしまった、と聞いたとき、まず感じるのは哀しみじゃないんだと、私ははじめて知りました」
そんな正直な思いを装ったりすることなく語りかけていく。
そして、受け入れられない哀しみから逃れるために距離を置くのではなく、自分の知らなかった「君」をもっと知ることで気持ちを理解したいと、スマホに遺されたメモを読んだり、遺品整理を手伝ったりしたことで「君」への思いも変化。「君」がいなくなった世界でも変わらない温かな思いに、気づくことになる。
「大切な人」を失った哀しみを抱えたまま生きるのは苦しいが、忘れてしまうことも怖いといった遺された人だからこその複雑な感情も、繊細かつ実直に綴られた著者の言葉によって理解できる。もちろん、著者の境遇や体験に重なるところもある人ならば、より一層深く感じられることもあるはずだ。
書籍概要
『逝ってしまった君へ』
定価:1650円(税込)
発行:小学館
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丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working