最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
「DAY1」「DAY2」ともにアンコールでは、その公演の全出演者がステージに立ち、にじさんじ3周年記念プロジェクト「PALETTE」で発表された全体曲『Wonder NeverLand』を熱唱した

2daysライブ『LIGHT UP TONES』をダイジェストでレポート

7月31日(土)と8月1日(日)、人気バーチャルライバー(VTuber)グループ「にじさんじ」が、配信とライブビューイング限定の完全AR生バンドライブ『にじさんじ AR STAGE "LIGHT UP TONES"』(以下、『LIGHT UP TONES』)を開催した。

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本公演は、にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社が開発した最先端のAR技術により、バーチャルライバーとミュージシャンが同じ空間で共演。樋口楓、緑仙、花畑チャイカ、町田ちま、ジョー・力一、夢追翔、レヴィ・エリファ、加賀美ハヤトが出演した「DAY1」と、月ノ美兎、剣持刀也、叶、ドーラ、魔界ノりりむ、葛葉、椎名唯華が出演した「DAY2」の2公演あわせて、全42曲を披露した。


レヴィ&夢追のデュエットで最先端のARライブが開幕

公演約3週間前の7月9日、突然、開催が発表された『LIGHT UP TONES』。プレスリリースに書かれた「にじさんじ初の完全AR生バンドライブ」というワードから、バーチャル空間の視覚情報を現実世界に重ね合わせて映像化する「AR(拡張現実)技術」を活用した音楽ライブであることはわかる。しかし、どのような形で、バーチャルな存在であるライバーと、我々と同じ現実世界で活動するバンドメンバーが共存するのか。開演まで、はっきりとはイメージができていなかった。

「DAY1」の幕が開け、最初に登場したのは「バーチャルシンガーソングライター」の夢追翔と、今回が念願の初ライブとなるレヴィ・エリファ。歌唱力が高く声の相性も抜群の二人は、アニメ『ポケットモンスター』主題歌「1・2・3」を歌い始める。『LIGHT UP TONES』全体のトップバッターという大役を任されながらも、プレッシャーを微塵も感じさせないパフォーマンスからは、このステージで歌える楽しさが伝わってくる。


最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
トップバッターとして登場し、現実世界のステージで躍動する姿で視聴者を驚かせた夢追翔&レヴィ・エリファ。空間に歌詞を表示する配信限定ライブならではの演出もこの1曲目から随所で見られた

正方形のステージは周囲が階段状になっており、ステージよりも少し低い周辺エリアで、4人編成のバンド(ギター、ベース、キーボード、ドラム)が演奏。複数のカメラも、ステージを取り囲むように設置されている。しかし、ステージとステージ外の間には次元を阻む境界もなく、ライバーの二人は歌いながらステージを下り、至近距離でカメラアピールもしていた。

さらに、光沢のある黒いステージの表面には、スポットライトなど照明の光が反射しているのだが、ライバーの影も落ち、シルエットも映り込んでいる。

色鮮やかな照明や影も、ライバーの実在感を強調

2番目に登場したのは、にじさんじイベントの常連でエンターテイナーの花畑チャイカ。1曲目とはガラリと変わって照明を暗く落としたステージで、UVERworldの「儚くも永久のカナシ」を熱唱。

スポットライトがインパクト抜群の身体を照らすと、強い光は反射し、巨体で光が遮られた場所には自然な影が落ちる。
カメラを通して配信される映像のすべては、バーチャルな存在であるはずのライバーがバンドメンバーと同じ現実空間のステージに立ち、躍動していることを伝えているようだった。

ライブは、5曲を1ブロックとしてMCを挟みながら進行(最後の第4ブロックは6曲)。既存のユニットだけでなく、このライブで初めて実現する組み合わせのコラボが数多く実現した。そのどれもが魅力的で『LIGHT UP TONES』だからこそ観られたものだが、各メンバーが1曲ずつ披露したソロのパフォーマンスも非常に印象的だった。

最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
高い歌唱力だけでなく、同じ曲を8時間以上歌い続けるなど、企画系の配信でも人気の高い町田ちま。多くのファンが待ちわびた初ライブでも、アンコールを含む6曲で神々しいほどに澄み切った歌声を披露した

特に、デビュー当時から歌唱力の高さを評価されてきた初ライブ組の初めてのソロ、町田ちまの「give it back」と、レヴィ・エリファの「カワキヲアメク」は、できれば現地でその歌声を直接、感じたいと思うほどのパフォーマンスだった。



また、VTuber界を代表するボーカリストの一人でもある樋口楓は、アニメ『100万の命の上に俺は立っている』第2期主題歌の「Baddest」をライブ初披露。
所属ライバーの歌うオリジナル曲が全国放送中のアニメの主題歌である事実に、改めて今の「にじさんじ」の大きさを実感した。

最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
1stソロライブ『KANA-DERO』をはじめ、リアル会場で開催されたライブでも会場との一体感が抜群だった樋口楓も、『LIGHT UP TONES』のステージでは、過去のライブとは異なる実在感を放っていた

「DAY2」では、可愛い小悪魔のりりむがライブデビュー

「DAY2」の出演メンバーの中では唯一、「にじさんじ」の大型音楽イベントへの出演経験がなかった魔界ノりりむは、5曲目で初登場。椎名唯華との「おしぃりぃ」でアイドルユニットCY8ERの「はくちゅーむ」をカバーすると、MCを挟んだ6曲目では、P丸様。の人気曲「シル・ヴ・プレジデント」をソロで披露。ニコニコ生放送のコメント欄と同じく「かわいい」という感想しか出てこないほど、動きもダンスもかわいかった。

10曲目では、にじさんじでも屈指の人気を誇る男性ユニット、葛葉の「ChroNoiR」がOfficial髭男dismの大ヒット曲「宿命」をカバー。二人はステージの中央で背中合わせに立って歌っていたが、2番に入ると、叶がステージの端へ移動。
階段上になった部分に座って歌い始める。すると、叶を追いかけるように移動してきた葛葉がその隣へ。

最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
ChroNoiRとして、数々のライブやイベントでも共演してきた葛葉と叶。『LIGHT UP TONES』のステージで見せた姿からは、表舞台に立っているときではない二人の雰囲気も垣間見えるようだった

バーチャル空間ではなく現実世界に現れた葛葉と叶が、部屋の中で寛ぐようなラフな姿勢で座り、お互いの背に手を回し合ったまま歌う姿は、きっと多くの「ChroNoiR」ファンが観たかった光景だろう。

15曲目では、メジャーデビューもしている月ノ美兎が1stアルバム『月の兎はヴァーチュアルの夢をみる』収録曲の「みとらじギャラクティカ」を先行披露。ステージ上にラジオブースの書き割りを置き、DJパートはそこで歌うという演出もユニークで、「委員長」らしい個性豊かなパフォーマンスだった。

最先端のAR技術で人気VTuberグループ“にじさんじ”が現実世界のステージで生バンドと共演
『みとらじギャラクティカ』の『LIGHT UP TONES』限定バージョンを披露した月ノ美兎。曲中の「ギャラクティカ!」という合いの手は、ステージ外に控えている共演者が全員で叫んでいたそうだ

「にじさんじ」誕生前からVTuber界を追いかけてはいるが、ARなどの技術的知識には疎い筆者にとっては、謎だらけで魔法のようなライブだった『LIGHT UP TONES』。
これまでに、さまざまなライブやイベントで、VTuberが「そこにいる」と強く実感したことは何度もあったのだが、現実世界のステージで自由に動く姿が放つ実在感は、未知の感覚だった。

記事の中で掲載している静止画(スクリーンショット)だけでは、その感覚がしっかりと伝わるとは思えない。未見の人は、ニコニコ生放送で約2週間公開中の配信アーカイブをぜひ観てほしい。冒頭6曲目までの無料パートだけでも、次元の壁を消し去った最先端のAR技術のすごさと、歌い踊るライバーたちのバーチャルな存在とは思えない実在感は感じられるはずだ。

現実世界のステージへようこそ。バーチャルライバー。

(丸本大輔)

有料配信<ニコニコ生放送>情報

【配信ページ】
・DAY1
https://live.nicovideo.jp/watch/lv332174089
・DAY2
https://live.nicovideo.jp/watch/lv332174107

【チケット料金】
・各日チケット:6,250円(税込)
※「Go To イベント」適用により 5,000円(税込)で販売
・通しチケット:11,000円(税込)
※「Go To イベント」適用により 9,000円(税込)で販売

【購入期限】
・DAY1:2021年8月13日(金)23:59
・DAY2:2021年8月14日(土)23:59

【タイムシフト視聴期限】
・DAY1:2021年8月14日(土)23:59
・DAY2:2021年8月15日(日)23:59
※視聴期限までは何度でも視聴できるが、視聴期限を過ぎるとタイムシフト視聴中でも視聴不可になります

【イベント公式サイト】
https://event.nijisanji.app/arstage_lightuptones/


Writer

丸本大輔


フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。

関連サイト
@maru_working