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『ザ・スーサイド・スクワッド』アメリカという国の凄みを味わえ、アメコミ映画の多様性を見せてくれる傑作

(C)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

グロもゴアも、さらには中南米への介入を繰り返したアメリカ史すらも取り込んで、負け犬たちの血みどろの奮闘へとなだれ込む映画『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』。アメコミ映画の多様性を垣間見させてくれる、傑作である。

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仕切り直した『ザ・スーサイド・スクワッド』、メンバーも入れ替えて南米の島国に潜入!

タイトルこそ同じだが、2016年に公開されたデヴィッド・エアー版の『スーサイド・スクワッド』と本作は直接の関係はない。「スーパーマンとかバットマンで有名なDCコミックスのヴィランが集められ、ほとんど自殺のような困難な任務に送り込まれる」「ハーレイ・クインが出てくる」程度しか共通点もない。この映画からいきなり観ても全然大丈夫という親切設計だ。

舞台となるのは南米の島国コルト・マルテーゼ。長年独裁者エレラ一族によって支配されてきたこの島でクーデターが勃発し、支配者は犯罪王にして軍人のシルヴィオ・ルナ将軍へと交代した。まずいことに、コルト・マルテーゼにはナチスの残党が建設した研究施設"ヨトゥンヘイム"があり、そこでは謎の宇宙生物の研究が行われている。この研究施設で生み出された未知のテクノロジーにより、新たな独裁者によって指揮されたコルト・マルテーゼは、アメリカをはじめとする全世界の脅威となりつつあった。

『ザ・スーサイド・スクワッド』アメリカという国の凄みを味わえ、アメコミ映画の多様性を見せてくれる傑作
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この危機に際し、米国政府の高官であるアマンダ・ウォラーは凶悪犯罪者によって組織された舞台であるタスクフォースX、通称"スーサイド・スクワッド"を編成。コルト・マルテーゼへと潜入させ、ヨトゥンヘイムの破壊を企てる。メンバーとして選ばれたのは、凄腕の暗殺者ブラッドスポート、驚異的な運動能力と知能を持つハーレイ・クイン、同じく凄腕の暗殺者で「平和のためなら女子供も殺す」と断言するピースメイカー、水玉模様の服を着た陰気な自殺志願者ポルカドットマン、ネズミの群れを操るラットキャッチャー2、そして片言の人語を話し二足歩行するサメのキング・シャークら総勢14人。彼らは命令に背いたら即起爆する爆弾を首に埋め込まれ、コルト・マルテーゼに送り込まれる。

しかし第一陣としてコルト・マルテーゼのビーチに上陸したチームは敵軍に動きを察知されており、上陸直後にハーレイ・クインを残して全滅してしまう。

別地点から上陸したブラッドスポートらのチームは島への潜入に成功。海岸からジャングルへと分け入り、市街地を抜けてヨトゥンヘイムを目指す。全員初対面、さらに全員犯罪者、チームワークどころではない即席の特攻部隊は、果たして目的を達することができるのか。

『ザ・スーサイド・スクワッド』アメリカという国の凄みを味わえ、アメコミ映画の多様性を見せてくれる傑作
(C)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

『ザ・スーサイド・スクワッド』アメリカという国の凄みを味わえ、アメコミ映画の多様性を見せてくれる傑作
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今回の監督を務めたのは、ジェームズ・ガン。最近では「『ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー』の人」という印象が強いものの、もともとは80年代に隆盛したZ級映画の梁山泊、トロマ・エンターテイメントからキャリアをスタートさせている。というわけで、今回はその強烈なバッドテイスト趣味が炸裂。グロもゴアもスプラッタもギャグも山積みな内容となっている。

なんせ最初の上陸失敗シーンからヴィランたちの頭が吹っ飛ぶは火だるまになるわ溺死はするわで、「この映画はこういうテイストです!」という決意表明になっている。出てくるのがほぼ全員悪人とはいえ、一応アメコミ原作の映画でここまで徹底したゴア表現が可能とは恐れ入った。

基本的に全年齢が見られる内容となっているディズニーのマーベル映画に比べ、ワーナーのDCコミックス映画はダーティーなテイストや振り切った内容にシフトしている。本作は現状、その極北と言えるような内容だろう。

とはいえ、別にむやみに残虐な内容になっているわけではない。最後までちゃんと見れば、「人に忌み嫌われるような表現」が劇中のヴィランたちの行動や作品のテーマと噛み合い、いつしか謎の感動につながっていくことがわかると思う。あくまで、より効果的に「ならず者たちの奮闘」という主題を伝えるためのグロ表現であるあたりが、ガン監督らしいスマートさだろう。

『ザ・スーサイド・スクワッド』アメリカという国の凄みを味わえ、アメコミ映画の多様性を見せてくれる傑作
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まるでピッグス湾事件のようなストーリー、主題に絡む政治的要素の盛り込み

もうひとつ、この映画で気になったのが、ポリティカルな要素が随所に散りばめられている点だ。そもそも「反米志向の強い中南米の独裁国家に主人公チームが送り込まれる」というネタ自体が、レーガン政権期のアメリカ製アクション映画っぽい。

わかりやすいところで言えば、『プレデター』や『コマンドー』に出てきた架空の国、バル・ベルデのような雰囲気のある設定だ。こういった国を舞台にしたアクション映画が80年代に量産されたのは、当時レーガン・ドクトリンによってアメリカが中南米の社会主義政権や反体制ゲリラに対してタカ派な外交姿勢で関わっていったことと連動していた。『ザ・スーサイド・スクワッド』は、明確に当時の戦争アクション映画を意識している。


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