『シンカリオンZ』プロデューサーが語る『エヴァ』コラボと今後「コラボもまだまだたくさん仕掛けてる」
『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』第21話では、主人公・新多シンの「シンカリオンZ E5ヤマノテ」と、碇シンジの「シンカリオンZ 500 ミュースカイ TYPE EVA」が「鬼エヴァ」と戦った

大好評のエヴァコラボ回についてネタバレトーク

9月17日(金)に放送され大きな話題を集めたテレビアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』『エヴァンゲリオン』シリーズとのコラボ回(第21話『出撃、シンカリオンZ 500 TYPE EVA』)。

【インタビュー前編】プロデューサー語る『シンカリオン』×『エヴァンゲリオン』3度目のコラボ「理想的な形になった」

前作『新幹線変形ロボ シンカリオン』での初コラボのときには、『エヴァンゲリオン』シリーズの主人公である碇シンジらの登場に多くのアニメファンが驚いたが、今回は、シンジの父親である碇ゲンドウも登場し、『シンカリオン』の世界でも碇親子の共演が実現。シンカリオンZ運転士の新多シンらとともに、敵の巨大怪物体「鬼エヴァ」と戦った。


『エヴァンゲリオン』のコラボにも深く関わっている「ジェイアール東日本企画」の鈴木寿広チーフプロデューサーと、「小学館集英社プロダクション」針原剛プロデューサー対談後編では、第21話の内容にも触れながら、エヴァコラボ回の裏側をさらに語ってもらいつつ、『シンカリオンZ』の今後の見どころなども語ってもらった。

バトル物として観ても、相当、見栄えがある

――第21話の内容に関して、グラウンドワークスさんとの打ち合わせは、どのように進められたのでしょうか?

針原 第21話の脚本を担当している佐藤(寿昭)さんと一緒に伺いました。最初の打ち合わせの段階で、ある程度までは形にした案を持って行ったのですが、この回で戦う敵をどうするのかは、まだ決まっていなかったんです。敵の巨大怪物体が「鬼エヴァ」で、京都の東映太秦映画村にある「エヴァンゲリオン初号機像」から生み出されるというアイデアは、グラウンドワークスさんの方からご提案いただきました。

――前編ではネタバレを避けながら話していただいたのですが、放送後ということで、ネタバレを気にせず、改めて第21話の見どころ、こだわったポイントを伺えないでしょうか。

針原 『シンカリオンZ』では、この回に限らず、総監督補佐の大畑(晃一)さんにがっつりバトルシーンを見ていただいていますが、コラボとか抜きにして、バトル物として観ても相当見栄えのあるシーンになっていると思います。

鈴木 前作のコラボでは、「シンカリオン500 TYPE EVA」は出たけれど、エヴァンゲリオン自体は出ていません。
でも、今回は鬼エヴァという形で、絵的にはエヴァンゲリオン初号機自体が出ているんですよ。それは、ファンとしても嬉しかったです(笑)。

――ゲンドウが「よくやったな。シン」と言ったりするパロディネタも満載でした。このコラボのことを考えて、主人公の名前を「シン」にしたわけではないですよね?

鈴木 もちろん、違います(笑)。名前が似ているのは偶然ですが、そういったところの言葉遊びも面白いものになりましたね。


針原 記憶違いでなければ、ゲンドウをこういう形で登場させたいというアイデアは、脚本家の佐藤さんから出たはずです。

『シンカリオンZ』プロデューサーが語る『エヴァ』コラボと今後「コラボもまだまだたくさん仕掛けてる」
碇シンジ、綾波レイ、アスカ・ラングレーのほか、前作のエヴァコラボ回には登場しなかった碇ゲンドウも登場。新幹線超進化研究所 京都支部の指令室からシンたちに指示を出した

――前編でのロボットアニメ同士のコラボが珍しいという話とも重なるのですが、JRの新幹線と、名鉄のミュースカイが合体するのも面白い展開だと思います。ミュースカイとのZ合体というアイデアは、どういった経緯で生まれたのですか?

鈴木 名鉄さんのミュースカイにも、『エヴァンゲリオン』とコラボしたラッピング車両があったんです(2020年1〜3月に期間限定で「2000系ミュースカイ エヴァンゲリオン特別仕様」を運転)。それありきのアイデアですね。アイデアが出てきた時点では、企業の違いといった事情は考えていませんでした。実際に、名鉄さんにご相談する段階では、(JRも名鉄も)お互いに大丈夫なのかなと思ったりはしたのですが、快諾していただけました。


針原 名鉄さんにも大変なご協力をいただきました。

鈴木 皆さん、本当に心が広い方たちばかりで、とてもありがたいです。



「『シンカリオン』だ!」と思う要素がだんだんと増えてくる

――今回のコラボに関して、現場サイドから特に強く「これをやりたいです!」といった提案などがあったことはありますか?

針原 いつもは池添(隆博)総監督の中に明確にやりたいことがあって。周りと一緒にそれを形にまとめていくのですが、第21話に関しては、逆だったかもしれません。メインスタッフ全員が好き勝手に「あれやりたい。これやりたい」と言うことをどうまとめるのか、というところで、池添さんには気をつかっていただいたような気がします

鈴木 そこに関しては、僕の立場からだと申し訳ないなと思うところもあるんです。本来、監督やライターの皆さんって、あくまでも『シンカリオンZ』を作るために参加してくださっているわけじゃないですか。
なのに、他の作品とのコラボなどでご負担をかけるというか……。

――クリエイターにとっては、考えることは増えるのかもしれませんね。

鈴木 それでも、いつも前向きに取り組んでいただけているのは、本当にありがたいことです。

針原 そうですね。ただ、脚本家の佐藤さんは、相当エヴァが好きな方なので、楽しんでもいただけたのかも。いろいろなネタを散りばめていただいています。


『シンカリオンZ』プロデューサーが語る『エヴァ』コラボと今後「コラボもまだまだたくさん仕掛けてる」
新幹線超進化研究所 京都支部 指令長代理の本庄や、オペレーターの明石が「勝ったな」「鬼エヴァ、完全に沈黙しました」など、『エヴァンゲリオン』の名セリフのパロディを披露

――第21話のエヴァコラボをきっかけに、『シンカリオンZ』という作品を知り、気になっている人に向けて、作品の魅力をさらにアピールするとしたら、どのようなことを伝えたいですか。

針原 お子さんには、シンプルにかっこいい変形や戦闘のシーンを観てもらいたいですね。大人の方に関しては、前作の頃からドラマの部分にも力を入れている作品なので、その面白さを楽しんでほしいです。

あと、『シンカリオンZ』の前半は、「オカルト」の要素を立たせるため前作に比べて「鉄分」というか鉄道要素が少し薄く感じられる部分もあったかもしれませんが、ここからはどんどん増えていきます。鉄道の知識に限らず、マニアックなネタとか、ちょっと勉強になるネタとか、前作からのファンの方も「ああ、『シンカリオン』だ!」と思うような要素がだんだんと増えてくると思うので楽しみにしていてほしいです。前作を観ていた人は必ず面白いと思いますし、初めて観る方も、「何これ? 面白いじゃん」という感じにはなるはず。


――まさに『シンカリオン』が始まったとき、多くの視聴者が抱いた感想ですね。

鈴木 子供から見たら、当然、ロボットアニメなんですけど、たぶん、大人が観たら単純なロボットアニメではないと思います。針原さんも言ったように、ドラマはこだわっている部分でもあるので。

前作では、親子の関係をかなり重視していましたが、『シンカリオンZ』では、どちらかというと、友情とか仲間というものを意識したドラマになっています。観る人によっても、いろいろな捉え方ができるアニメではありますが。一般的に、キッズ向けアニメって、どちらかと言えば表現が直接的というか……。

――観れば理解できるというシンプルな作品も多いですね。

鈴木 本来、それがキッズ向けのアニメだと思うんですけど。『シンカリオン』シリーズはたぶん、そうではなくて。作品の中に子供では分からないようなこともいっぱい出てくるわけですが、それをきっかけに親子の会話が始まるんじゃないかなと思っていいます。例えば、エヴァコラボも、『エヴァンゲリオン』を知らない子供が観たら、よくわからないと思うので、それがきっかけに親子の会話が始まったらいいなと思いますし。『シンカリオン』だけでなく、『エヴァンゲリオン』にも興味を持ってもらえれば、それも嬉しいです。

――前作でテーマだった「対話」は、今作でも大きなテーマになっている印象です。

鈴木 『シンカリオン』シリーズって、キャラクター同士の深い会話、お互いのかなり深いところまで突っ込んでいく会話が多い気がして。そこが物語性やドラマ性に繋がっているのかなと。そういうところもぜひ観てほしいなと思います。

針原 視聴いただく子供に対しても、手を抜かず真剣に向き合っているということかと思います。もちろん、子供だけでなく、大人のアニメファンが観ても楽しんでいただけるのかなと。

鈴木 やっぱり、僕の意識のベースに『エヴァンゲリオン』があるのかもしれませんが、ただわかりやすいだけのアニメにはしたくなかったんです。池添さんやライターさんも、そういった作品を目指して作ってくださっているのは、ありがたいことです。

コラボもまだまだたくさん仕掛けてあります

――今後の『シンカリオンZ』で、特に注目してほしいポイントを教えてください。

針原 やっぱり、「アブトはどうなっちゃうの?」ということに尽きるかもしれないですね。

――ダブル主人公のひとり・碓氷アブトが、「ダークシンカリオン」の運転士として、敵対する状況になっています。

鈴木 アブトの件を含めて、これ以降、物語がけっこう大きく動き出していきます。というか、すでに動き始めていますね。

針原 普通、王道の子供向けアニメを作るとき、ダブル主人公のひとりが敵側に行っちゃうって、タブーだと思うんです(笑)。でも、それをあえてやっちゃうのは、まさにドラマとして面白い方向になった気がします。その中で生まれる感情の揺らぎとかは、「本当に子供向けのなの?」という感じですけど。



『シンカリオンZ』プロデューサーが語る『エヴァ』コラボと今後「コラボもまだまだたくさん仕掛けてる」
シンカリオンZとの適合率が足りず運転士にはなれなかったアブト。しかし、行方不明の父・トコナミを探すため、シンたちの前から姿を消した後、「ダークシンカリオン」の運転士となっていた

――以前、メインキャストの座談会で、アブト役の鬼頭明里さんが「アブトが(整備士で)シンカリオンZに乗れないのはショックだったけど、まだ諦めてません」と仰っていたのですが、まさか、敵になってシンカリオンZに乗れるとは(笑)。

針原 きっと、鬼頭さんも驚いたと思います(笑)。あと、今後はドクターイエローが登場して活躍する回もありますし、コラボや遊びもまだまだたくさん仕掛けてあります。作品同士のコラボだけではなく、ちょっとネタ的なものとかもあるんです。

鈴木 本当は、前作でよくやっていたJRのCMコラボを今回もやりたいのですが、入れる隙間がないんです。

――それだけ、物語の密度が濃いのですね。

鈴木 はい。遊んでいる暇がないんです。

針原 ドラマを描くだけでもパンパンなところに、すでにいろいろなコラボを詰め込んでいるので。つい最近も、この先の話数でCMネタを入れようとしたんですけど、尺の関係で最終的にはボツなりました(笑)。

鈴木 でも、すごく有名なCMは、前作でほとんどやっちゃってるんですけどね。

――お二人にとって、『シンカリオン』シリーズという作品は、どのような存在ですか? あるいは、今後、どのような存在になっていくと思いますか?

鈴木 難しいですね。

針原 最後に深い質問が来たなあ(笑)。どう答えたらいいのかな……「日常」とか?

鈴木 針原さんにとっては、本当に「日常」かもしれないね(笑)。

――大げさに言えば、365日、ずっと『シンカリオン』のことを考えているような?

針原 たしかに頭の片隅にはいつもあるかもしれませんね。

――前作の放送が終了してから、『シンカリオンZ』の企画が始動するまでの間には、ゆっくりできた時間も?

針原 シリーズとしては劇場版もありましたし、第2期についても当然、決定するまでには会社の決裁を通したり、スタッフを集められるのかという調整をしたりと、制作とは別のところでバタバタする期間がありました。なので、そんなにゆっくりではなかったですよね。

鈴木 なかったですね。だから、制作現場の皆さんも、本当に休みはなかったかもしれないです。考えてみたら、僕にとっても『シンカリオン』シリーズは「日常」。オリジナル物ではあるけれど、新幹線を題材にしているので、ある意味、新幹線が原作みたいなものなんですよね。

そして、通常の漫画原作やゲーム原作のように、流行り廃りがあるわけでもなく、常に世の中に存在している新幹線が題材だからこそ、長く続けようと思えば続けられる。というか、続けていくべきものとして始めているので、これからもずっと存在させたいし、させないといけない。そう考えるとやっぱり日常かな。そして、皆さんにとっても日常となっていれば、嬉しいなと思います。

――新幹線に乗っているとき、ふと『シンカリオン』のことが頭に浮かんだりすることはありますか?

針原 めちゃくちゃあります(笑)。

鈴木 新幹線や電車に乗っているときに限らず、しょっちゅう考えていますし、急にアイデアが浮かんだりとかは、普通によくあります。

針原 あとは新幹線を見たらやっぱりテンションが上がりますし、何度見てもいいなぁって思いますね。これがロボに変形したら、そりゃあカッコイイなと(笑)。
(丸本大輔)

【インタビュー前編】プロデューサー語る『シンカリオン』×『エヴァンゲリオン』3度目のコラボ「理想的な形になった」

TV放送情報

TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』第21話
毎週金曜19時25分〜テレビ東京系6局ネットで放送

公式サイト
https://www.shinkalion.com/

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Writer

丸本大輔


フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。

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