3度目の『シンカリオン』と『エヴァ』シリーズのコラボが実現
4月から放送中のテレビアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』。実在する新幹線をモデルにしたロボット「シンカリオン」と、運転士の子供たちの活躍を描く人気作の第2弾で、舞台は前シリーズから数年後の世界。妖怪や霊などオカルトが大好きな新多シンをはじめとする新たな世代のシンカリオン運転士たちが、「Z合体」という武装強化合体機能を備えた「シンカリオンZ」に乗り、謎の敵「テオティ」との戦いを繰り広げている。前作『新幹線変形ロボ シンカリオン』の放送中、作品のファン以外も巻き込む大きな話題の1つとなったのが第31話での『エヴァンゲリオン』シリーズとのコラボ。『エヴァンゲリオン』の主人公・碇シンジが、かつて実際に運行していたエヴァンゲリオンラッピング仕様の「新幹線 500 TYPE EVA」をモデルにした「シンカリオン 500 TYPE EVA」に乗って登場。『シンカリオン』の主人公と共闘した。
テレビシリーズ放送後に公開された劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』でも実現したエヴァコラボが、大人気放送中の『シンカリオンZ』でも実現。9月17日放送の第21話に、碇シンジと「シンカリオンZ 500 TYPE EVA」が登場する。
『エヴァンゲリオン』と『シンカリオン』。ロボットアニメ同士の異色の大型コラボはなぜ生まれ、最新作『シンカリオンZ』でも実現することになったのか? 前作から続いてエヴァコラボにも深く関わった「ジェイアール東日本企画」の鈴木寿広チーフプロデューサーと、「小学館集英社プロダクション」の針原剛プロデューサーに、その経緯などを語ってもらった。
ロボットアニメをやるからには、やっぱり『エヴァ』を意識
――お二人はそれぞれ、どのような形で『シンカリオン』シリーズに関わっているのですか?鈴木 プロデューサーって、何でも屋さんですから(笑)。
針原 雑用係みたいな感じです(笑)。
鈴木 (製作委員会の)幹事会社のプロデューサーという立場なので、制作・宣伝など全体を見ているのですが、その中でも、特にビジネス面を意識している形になります。逆に針原さんは、アニメの制作を中心に見ていただいています。
針原 僕が所属している小プロ(小学館集英社プロダクション)は、『シンカリオンZ』のプロジェクトですと、商品化の窓口と制作統括という立場なんです。ただ、小プロはアニメスタジオではないので、一旦、ウチが請け、そこから弊社子会社でCG制作会社のSMDE(小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント)さんや、(アニメ制作会社の)OLMさんに発注しています。
――では、前作から続いている『エヴァンゲリオン』とのコラボ企画に関しては、どのような経緯で生まれ、お二人は、どのような形で関わっているのでしょうか?
針原 最初のコラボのきっかけはjeki(ジェイアール東日本企画)さんというか、鈴木さんなんです。
鈴木 もともと、僕が『エヴァ』を大好きなんです。エヴァンゲリオン世代ですし。だから、ロボットアニメをやるからには、やっぱり『エヴァ』を意識するところがあって。前作の『シンカリオン』を立ち上げるときは、針原さんの前任の方と僕でいろいろやっていたのですが、当初から何かの機会やきっかけがあれば、『エヴァ』とコラボができないかなとは思っていました。
そんなとき、たまたま、JR西日本さんの500系新幹線がエヴァンゲリオンのラッピングをして運行するという企画があり、「きっかけできたじゃん!」ということになりまして(笑)。これは、『シンカリオン』も『エヴァ』とコラボするしかないという感じで動き始めたのが最初のきっかけです。だから、エヴァコラボに関してのスイッチを押したのは僕たちかもしれないけど、その後は、針原さんの方で具体的に進めてもらいました。
針原 具体的なコラボの内容やクオリティに関わる話、本編監修などは、僕の方でやっています。最初にコラボの話を持ちかける前から、(『エヴァンゲリオン』のライセンス管理などを担当する)グラウンドワークスさんとの繋がりがあったことも大きかったかもしれません。
鈴木 もともと、タカラトミーさんから「500 TYPE EVA」のプラレールを発売するという企画が進んでいたので、そのルートからご相談を入れさせてもらいました。
――具体的にコラボ企画を進めて行く中、難しかったこと、細かな調整が必要だったことなどはあったのでしょうか?
鈴木 細かな調整はあるものの、いざご相談を入れてみると、けっこうあれよあれよでした。
針原 エヴァ側というか、グラウンドワークスさんって、コラボに本当に寛容なんです。基本的には、こちらからのご提案内容に「ノー」がほとんどなくて、熱をもって「やりたいです!」とお願いしたことは何でもやらせていただけるくらいでした。
鈴木 グラウンドワークスの神村(靖宏)代表とお話をしいて、「なるほど」と思ったことなんですけど。『エヴァンゲリオン』のコラボやタイアップって、自分たちの『エヴァンゲリオン』のキャラクターなどを相手に貸し出すのではなくて、相手の作品などに寄り添って一緒に作っていくというスタンスなんです。
しかも、基本的にネガティブなことは仰らないし、やろうとしていることが間違ってなければ、どんどん後押ししてくれる。それどころか、いろいろなアイデアも提案してくださって、本当にすごく助かりました。おかげさまで、とても理想的なコラボになったのかなと思います。
針原 まさか、劇伴(BGM)も貸してもらえるとは思わなかったです。
――作中で『エヴァンゲリオン』の劇伴が流れたことも話題になりました。作品やキャラクターの権利とは別に、曲単体の権利もあるので、本来は難しいことだと思います。
鈴木 僕らの方からは畏れ多くて言えないことですからね(笑)。グラウンドワークスさんの方から「こういうのは、どうですか?」と提案してくださったのは、本当にありがたいことでした。
前作の世界観を継続してやるかどうかの議論は白熱
――エヴァコラボから少し話は変わって、『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』の作品自体のお話も少し聞かせてください。大人気作『新幹線変形ロボ シンカリオン』に続く第2シリーズとして企画を立ち上げる際、特に意識した事や大切にしたことなどはありますか?鈴木 『シンカリオン』のフィロソフィーみたいなものはあるんですよ。ただ、それは感覚的な部分もあるので、具体的に言葉にするのはすごく難しいし、スタッフそれぞれによっても少しずつ違うのかもしれません。でも、ずっと一緒にやってきた我々の中では、たしかに共有されているものがある。だから、新しいスタッフさんが入ってきたとき、それを説明しようと思うと、なかなか難しいんです。
針原 難しいですねえ。
鈴木 かといって、「まずは、一度やってみてください」とお願いすると、『シンカリオン』が理想としているものではなかったりもする。だから、具体的に言えなくて申し訳ないのですが、大事にしているものは確実にあります。
それとは違う話になりますが、僕の立場的に考えたのは、子供のファンの層の変化にどう対応するかです。前作、劇場版、『Z』と続いていく中、子供のファンの年齢自体は上がってくるじゃないですか。
――前作の放送開始は2018年1月なので、3年以上経っています。
鈴木 でも、前作を観てもらった子供たちには、また観てほしい。そして、強いて言うなら、ビジネス面にもその成果を反映させなきゃいけない。
あと、『シンカリオン』には、新幹線というリアルなものを扱って、リアルなものを描いているアニメだからこその魅力があると思うのですが、そのことによる難しさもあって。リアルなものを題材にしているからこそ、前作の(主人公の速杉)ハヤトくんは、もう出せなかったですし。
――基本的に、シンカリオンの運転士は、大人になるにつれてシンカリオンとの適合率が下がり、やがてシンカリオンに乗れなくなるという設定があります。観ている子供たちと一緒にハヤトたちも成長しているのだから、続編を作る場合、新しい世代の新しい主人公が必要ですよね。そういった方向性は、企画の初期段階から固まっていたのでしょうか?
鈴木 その方向性は、かなり最初から固まっていました。
針原 劇中で、舞台は何年とか明言してはいないんですけど、だいたい現実とほぼ同じぐらいの現代だと考えているので、前作から『Z』にかけては、劇中の世界でも何年か経過しているという設定です。
ただ、その方向性に決まる前に、ハヤトたちがいる世界の先の物語を描くのか、まったく別の世界を描くのかという議論は、結構白熱しました。結果、プロジェクト的にもまだ2作目なので、前作の世界観を継続してやる方がいいだろうという結論になりました。
鈴木 新シリーズになって、いちばん難しかったのは、やっぱりロボット(シンカリオン)のデザインです。
針原 元になっている新幹線は同じだから、見た目の変化がなかなか出せないんですよ。
――いわゆる主人公機のモチーフになっている新幹線は、前作も今作も「E5系はやぶさ」ですし、その他の運転士が乗るシンカリオンのモチーフも前作とほぼ同じです。
鈴木 前作のシンカリオンのデザインって、タカラトミーさんやSMDEさんたちにいろいろと考えてもらった、ある種、究極のデザインなんですよ。それから大きくイメージを変えたデザインを作るのは、かなり難しかったです。
その印象を大きく変えるアイデアとして出てきたのが、在来線が変形した武装強化車両「ザイライナー」との「Z合体」でした。
ミュースカイとのZ合体や敵の「鬼エヴァ」にも注目!
――再び、エヴァコラボの話に戻らせてください。『シンカリオンZ』の企画がスタートした時点で、前作で大好評だったエヴァコラボを今回もやりたいという案は、出ていたのですか?針原 いいえ、そういう話は全然なくて。シンカリオンのCGモデルの制作ラインナップなどでも全然想定はしていませんでした。でも、急に鈴木さんが「やりたい!」って言い出したんです(笑)。
鈴木 あはは(笑)。いや、別に改まって「また、やろう!」とか言うことでもないと思っていたんですよ。
――鈴木さんとしては、当然、今作でもやると思っていた?
鈴木 そうです、そうです。「あれ? やるでしょ? なんでやらないの? 逆にやらない理由ってあるの?」みたいな感覚でした(笑)。
――鈴木さんの提案に対して、針原さんや他のスタッフさんは、どのような反応だったのですか。
針原 正直、その時点では、第1期でのコラボで、やれることはやりきったと思っていたので、最初は「何をやるの?」って感じでした。
鈴木 どちらかと言えば、少し否定的な空気でしたね(笑)。
――では、鈴木さんの説得で、その空気が変わったのですか?
針原 説得というか……。「絶対にやるんだ」という意志がかなり頑なでしたよね(笑)。
鈴木 「交渉の余地なし」という雰囲気だったかもしれません(笑)。
――結果、本作でもエヴァコラボが実現することになったわけですね。しかし、すでにCG制作のラインナップは決まっていたと仰っていましたが……。
鈴木 それがいちばん大変でした。
針原 SMDEさんには「できません!」と何十回も言われたのですが、何とか対応していただきました。
鈴木 本当に心強く、有難いです。
――では、いよいよ、9月17日に放送される第21話に関して、注目のポイントを教えてください。
鈴木 やっぱり、『シンカリオン』のデザインです。前作の「シンカリオン 500 TYPE EVA」から、「シンカリオンZ 500 TYPE EVA」に変わっているんですけど、今回もカッコいいです。これは前作のコラボからそうだったのですが、普通、『シンカリオン』が『エヴァンゲリオン』とコラボするとなったら、顔は『シンカリオン』のままじゃないですか。でも、『シンカリオン』の場合、顔を『エヴァ』にしちゃってるんですよ(笑)。
――エヴァンゲリオン初号機の顔そっくりのデザインです。
鈴木 普通、顔を変えてしまうと、デザイン的には「何だっけ?」ってなるものだと思うのですが、『シンカリオン』のデザイン自体が特徴的だから、顔が『エヴァ』になっても『シンカリオン』が『エヴァンゲリオン』とコラボしているとわかるんです。自分たちで言うのもおかしいかもしれないですが、それはすごいことだと思いました。だから、そのデザインのカッコよさを観てほしいですね。SMDEさんに、無理をお願いして頑張っていただいたので。
あとは、さっき針原さんも言っていましたが、たしかに前回のコラボでかなりやり尽くしていたので、正直、今回は何をやるのかけっこう悩んだんですよ。それがどうなったかは、放送前にはネタバレできないみたいなのですが、前回よりもさらに……という形のコラボになっています。また、グラウンドワークスさんからも面白いアイデアをいただきました。『エヴァンゲリオン』ファンの人にも、より楽しんでもらえるのではないでしょうか。
針原 前回のコラボからの変化といえば、「ミュースカイ」とのZ合体かなと思います。前作を含めて、『シンカリオン』に私鉄の車両が登場するのは初めてなので。あとは、今回の敵である「鬼エヴァ」のデザインもかなりカッコいいので、そこにも注目してほしいです。
鈴木 「500 TYPE EVA」の新幹線は新大阪と博多の間を走っていたんです。一方、名鉄さんのミュースカイは名古屋の在来線。本来、相まみえないはずの2つの車両がどうやってZ合体するのか? そこも楽しみにしてください。
【後編を読む】『シンカリオンZ』プロデューサーが語る『エヴァ』コラボと今後「コラボもまだまだたくさん仕掛けてる」
TV放送情報
TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』第21話2021年9月17日(金)19時25分〜テレビ東京系6局ネットで放送
公式サイト
https://www.shinkalion.com/
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丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working