
選挙がはじまる
『帝一の國』、2017年4月公開の映画である。なぜ、今さら4年前の映画を紹介するのか。理由は一つしかない。
ところがどっこいである。翌2018年4月21日の土曜プレミアムの放送で、その超個人的な思い込み、且つ食わず嫌いな評価は180度ひっくり返される。実際は、ゴリゴリに尖ったエンタメ選挙映画で、社会が抱える問題と娯楽を共存させたメチャクチャ笑える大傑作コメディ映画だったのだ。
衆議院選挙を控えたこのタイミングに「センキョなんてキョーミない」という方々はモチロンのこと、家族、友人、同僚、お一人様、揃って観ていただきたい、そんな一本である。
野心みなぎる男「赤場帝一」の学園政権闘争コメディ
【あらすじ】主人公:赤場帝一(菅田将暉)、彼の夢は「総理大臣になって、自分の国を作ること」。その夢の実現のためには、日本一の超名門・海帝高校の生徒会長になることが絶対条件である。海帝でトップになった者は、将来の内閣入りが確約されているのだ。2年後の生徒会長選挙で優位に立つには、1年生の時の立ち回りが鍵となる。トップに上り詰めるためなら、靴を舐める覚悟の帝一。しかし、彼の前には想像を絶する試練が待ち受けているのであった。
国民の半分は選挙に関心がない
選挙の度に投票率の低さが話題になり、毎度のように50%前後をフラフラしている。つまり、国民の半分は選挙に関心がない。自分が収めた税金の使い道を決める人間を選ぶのが選挙である。可能な限り自分や周囲の人間の生活が豊かになるような使い方をしてくれる候補や党に入れようと思うのが一般的な考え方だと思うが、税金を払ったらそっから先は好きにお使いくださいという、太っ腹なのか忘れっぽいのか、どっちなのかわからない人間が2人に1人はいるのだ。
そのわりに、ツイッターは日々「暮らしが楽にならない。政府は何をやっているのだ」というツイートに満ち満ちていて、毎日のようにバズりまくっている。不思議の国ニッポンである。

だが『帝一の國』で描かれているのは、そんな選ぶ側(生徒)ではなく、生徒会内での奮闘と葛藤だ。派閥間の勢力争い、飛び交う実弾、選挙公約や理想などそっちのけで展開されるトップをめぐるドロドロの権力闘争。まるで、最近テレビがしこたま報道していた自民党の総裁選を見ているかのようである。
総理になりたい動機
総理大臣になって、自分の国を作るという帝一の野望は、劇中で明かされる超利己的な動機からくるものであり、国民が豊かに暮らせる国家を作ろうなどということはこれっぽっちも考えていない。そもそも裕福な官僚の家庭に生まれ、お坊ちゃんばかりの超エリート校育ちなので、一般庶民のことなどほぼほぼ見えていない。映画ならそれでも一切問題ないし、むしろキャラクターが誇張されて面白いのだが、リアルな首相がそういう人物だとコレは非常に問題である。
先進国とは名ばかりの爆安の国ニッポン
・平均賃金(年収)…G7中最下位・世界幸福度…ランキングG7中最下位
・相当貧困率…アメリカに次いで2番目に高い
・男女平等ランキング…G7中ダントツ最下位
・再生エネルギーの開発…G7中最下位
※G7…先進国というくくりの7カ国(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、日本)
何かにつけてライバル視する韓国にまで抜かれ、あれもこれも先進7カ国で最下位になってしまった日本。もはや先進国と名乗るにはおこがましいレベルにまで落ち込んでしまっている。
日本はこの30年賃金が上がっていない。先日ディズニーランドの値上げが話題になったが、フロリダのディズニーランドの入場料はその倍である。逆に世界から見れば、クオリティーの高いサービスを半額で受けられるし、遊べるし、買える。めっちゃコスパ良いじゃん!ジャパン!なのである。
コロナ禍以前、日本に観光客が押し寄せていたのは、日本が大好き!だから(だけ)ではない。爆安コスパ最強国家だったからだ。そりゃ爆買いもするだろう。しかし、それで良いのだろうか。このまま何の変化も起こらなければ、世界の基準からズルズルと後退しつづけ、子供は生まれず、年寄りばかりの時代遅れ国家と成り下がるのはもう目に見えている。
ボーナスはとっくに使い切った
日本の発展は、戦後のベビーブームによる人口ボーナスによって支えられてきたが、バブル崩壊により第三次ベビーブームは起こらず、格差は開き続け、昭和と平成を引きずったまま価値観はアップデートされず、自己責任と努力不足という言葉が呪いのように蔓延している。しかし、それでも人々は選挙に行かない。
ハロウィン総選挙

今回の衆議院選挙の投開票日は、10月31日。ハロウィンである。当日に投票できない人には、期日前投票がある。進学で引っ越して、選挙人名簿に登録されていないという大学生には不在者投票がある。投票所入場券を持っていなくても、本人確認ができるものを持っていれば投票できる。


もはや、投票しない理由は「めんどくさい」しか残されていないくらい投票できる要素が揃っている。この先の日本を誰に託すか、どの党に託すか、そのカードを握っているのは国民1人1人だが、投票用紙をただの紙クズに換えるのも、今よりいささかマシな未来への希望のチケットとするのも我々次第である。

選挙のためのLINEスタンプ作りました
というわけで、ここで宣伝をブチ込みます。選挙の話をLINEでするのはちょっとハードルが高い。だったら、スタンプがあった方がいいんじゃないかしらん?と選挙盛り上げLINEスタンプを作りました! しかし、選挙とか投票とかいう文言がLINEの審査に抵触しリジェクト(却下)されてしまい、別の言葉に入れ替えた結果……
謎の箱と紙切れで、未来を変えようとするネコのスタンプ(全40種)が爆誕!

(↑こちらからDLできます。)
今回の衆院選だけでなく、学校の生徒会選挙から、自治体の首長選まで選挙と名のつくものなら幅広くご活用いただけます。
総選挙という名の国家フェス
考えてみれば、選挙というのは箱と紙切れで未来を変える国家規模のイベントみたいなものだ。かつては、そのイベントに参加する権利が与えられたのは大金持ちの男性(全人口の1%)だけだった。それが批判され、大正時代にやっと25歳以上全ての男性に与えられ、女性に与えられたのは戦後になってようやくである。そう、女性は戦争で旦那や子どもが死んでも、国政に対し投票という形で意思表示することさえできなかったのだ。
世界中のディズニーランドへ行けるチケット
『帝一の國』ではある人物が、白票が投じる。しかも、その票を投じた本人のスピーチで、それが何かちょっとカッコいいことのようにも感じさせるシーンなのだが、決してそんなことはない。ただの丸投げだ。自分の理想と100%マッチする政党や候補者などまず現れない。我々は結局、ボートマッチなりなんなりで未来がマシになりそうな方を選んで投票するしかないのだ。
投票しない人はとことん選挙に行かないが、ちなみに単純に投票率を倍にする方法がある。『投票に行く人間が、投票に行かない人間を、ガチで選挙に連れていく』である。

というわけで10月31日に行けない方は、お誘い合わせの上、期日前投票に行きましょう。
(ウラケン・ボルボックス)
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作品情報
『帝一の國』2017年4月29日公開
出演:菅田将暉 野村周平 竹内涼真 間宮祥太朗 志尊淳 千葉雄大 永野芽郁 鈴木勝大 萩原利久 岡山天音 三河悠冴 井之脇海 / 木村了
榎木孝明 / 山路和弘 真飛聖 中村育二 吉田鋼太郎
原作:古屋兎丸『帝一の國』(集英社ジャンプコミックス)
監督:永井聡
脚本:いずみ吉紘
音楽:渡邊崇
主題歌:クリープハイプ(ユニバーサルシグマ)
製作:フジテレビジョン 集英社 東宝
制作プロダクション:AOI Pro.
(C)2017フジテレビジョン 集英社 東宝
(C)古屋兎丸/集英社
生徒会長に、僕は、なるッ!絶対!どんなことをしてでも、なってやるッ!!
日本一の名門校、ライバルは800人の秀才たち。
大波乱の権力闘争…
命がけの[生徒会選挙]がついに幕を開ける!!
全国屈指の頭脳を持つ800人のエリート学生達が通う、日本一の超名門・海帝高校。政財界に強力なコネを持ち、海帝でトップ=生徒会長をつとめたものには、将来の内閣入りが確約されているという。
時は4月、新学期。大きな野心を持つ男が首席入学を果たす。新1年生・赤場帝一。彼の夢は「総理大臣になって、自分の国を作る」こと。その夢を実現するためには、海帝高校の生徒会長になることが絶対条件。「ライバルを全員蹴落として、必ずここでトップに立つ…そのためならなんでもする…どんな汚いことでも…。
誰よりも早く動き始め、野望への第一歩を踏み出した帝一。待ち受けていたものは、想像を絶する罠と試練!友情と裏切り!究極の格付けバトルロイヤル!いま、命がけの「生徒会選挙」が幕を開ける!!
ウラケン・ボルボックス
東京から福岡に移住した映画好きのイラストレーター。主な著書『なんてこった!ざんねんなオリンピック物語』JTBパブリッシング、『侵略!外来いきもの図鑑もてあそばれた者たちの逆襲』PARCO出版。
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