『マイナビ Laughter Night』番組Pインタビュー

『キングオブコント2021』でチャンピオンに輝いた空気階段(水川かたまり・鈴木もぐら)。10月4日深夜に放送された彼らのレギュラー番組『空気階段の踊り場』(TBSラジオ 毎週月曜24:00〜)では、サプライズゲスト・峯田和伸(銀杏BOYZ)の生歌に多くのリスナーの心を震わせたが、その裏には、そんな彼らをいち早く見出し、ラジオの道へといざなった番組の存在があった。

その名は、『マイナビ Laughter Night(ラフターナイト)』(TBSラジオ、毎週金曜24:00〜)。
毎月およそ40組の若手芸人たちが番組オンエアを目指してライブに挑み、リスナーの投票によって勝者を決める番組だ。

空気階段は2016年10月、2017年10月のグランドチャンピオン大会で連続優勝。他にも歴代チャンピオンには『M-1グランプリ2020』ファイナリストオズワルド(畠中悠・伊藤俊介)など、賞レースで活躍する芸人たちの登竜門として注目を集めている。

空気階段をいち早く発掘 ラジオ番組Pが感じた“ブレイクの予兆”
『マイナビ Laughter Night』2016年第2回チャンピオン大会で優勝した空気階段(写真提供:TBSラジオ)

今回は番組プロデューサーを務めるTBSラジオ・志田卓氏にインタビュー。世間に先んじて空気階段に見出していた魅力をはじめ、10月16日に有楽町よみうりホールで開催される『マイナビ Laughter Night』第7回チャンピオンLIVEの見どころをたずねる。

■志田卓=プロフィール

TBSラジオ・24時台統括プロデューサー。『マイナビ Laughter Night』の前身番組『マイナビ Saturday Night Laugh』の立ち上げから番組プロデューサーを務め、『空気階段の踊り場』(TBSラジオでは毎週月曜24:00〜)『ほら! ここがオズワルドさんち!』(毎週金曜24:30頃〜)や、さらに毎週水曜24時放送の『24時のハコ』も立ち上げた。ポッドキャスト番組『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』『ヒロシ×阿諏訪の無骨ラジオ』なども手掛ける。

「お笑いというより、ドキュメンタリー」空気階段のブレイクを確信した2016年

──キングオブコント以前から『マイナビ Laughter Night』(以下、マイナビラフターナイト)で強烈な存在感を放つ存在であった空気階段ですが、番組での第一印象はいかがでしたか?

空気階段をいち早く発掘 ラジオ番組Pが感じた“ブレイクの予兆”
2020年『マイナビ Laughter Night』第6回チャンピオンLIVEに出演する空気階段(写真提供:TBSラジオ)

志田:空気階段は、番組ディレクターの越崎(恭平氏)が「よしもと∞(無限大)ホール」で見つけてきたコンビでした。彼らに感じた第一印象は、「単なるお笑いネタというより、一つのドキュメンタリー、ショートストーリーの雰囲気を持つ二人だな」と。

もぐらくんが演じるリアルで象徴的なおじさんキャラは特徴のひとつですが、コントのなかでは、その「おじさん」がネタを超えて、深く考えるメッセージすら感じました(笑)。

──空気階段のブレイクの兆しは、どの時点で感じていましたか。

志田:最初の頃は、かなり「通好み」なネタで、好き嫌いが分かれるけど、インパクトだけは強烈にあるコンビだなという程度にしか思っていなかったんです。
ただ、2016年に空気階段が最初にチャンピオン大会に出場してきたときのお客さんのウケ具合はすごかったですね。

一度チャンピオンになったあとにも、再び翌年、オンエア争奪ライブに出場して、またまた2回目のグランドチャンピオンを獲った瞬間あたりからは「正真正銘、誰もが面白いと思うコンビだな」と。この二人はここからまだまだ注目されるんだろうな、と思いました。

2回目にグランドチャンピオンを連覇したとき、得票数を見て「『また空気階段かよ』と言われるのでは……」と戸惑いすら覚えましたが、これが真実なんだし、本当に面白い結果なんだし、当然、結果を不正操作なんてするつもりもないから、受け入れるまで空白の時間があったことを今でも覚えています!

──グランドチャンピオンの特典として放送された冠番組『空気階段のRADIO ESCALATOR』を皮切りに、レギュラー番組『空気階段の踊り場』と、ラジオの分野でも大きな存在感を発揮した空気階段ですが、番組プロデューサーとして、二人のラジオに対するポテンシャルをどう感じましたか。

志田:『空気階段のRADIO ESCALATOR』での好評をきっかけにレギュラー化へと進んだのですが、特番の時点から、二人はさっそく、かなりのラジオ愛を見せつけてくれましたね。

もぐらくんは、その生活柄ゆえ自宅にテレビがなく、ラジオ中心の生活だったということもあって、自然と「ラジオ的な企画」に取り組んでくれました。
自ら「足」で取材して、街の人の声を聞く企画も積極的に行ってくれたんです。

かたまりくんも、引きこもり時代にラジオを聴いて芸人を目指したっていうくらいなので、特番のために「ラジオ」を題材にしたコントを複数作ってくれました。それを全部聴くと、「もはやこれはひとつのドラマだ」と感動すらしてしまう内容で。たんなる自己満足ではなく、ラジオが持つ特性を存分に活かして、リスナーさんもしっかり巻き込む内容を、盛りだくさんでやってくれました。

こうした二人のラジオに対する真摯な姿勢は番組の評価としてもハッキリあらわれて、特番後にTBSラジオの幹部からも「面白い」と高評価をもらい、レギュラー番組へと発展しました。

「ガチの面白さ」を追い求める空気が、未来のブレイク芸人を作り出す

──前身の番組を含め、一貫してプロデューサーとして関わっている志田さんですが、立ち上げにおいてはどのような思いがありましたか。

志田:もともと2015年にこの番組を立ち上げたとき、私はニュース番組をメインに担当していたんです。
お笑いというカテゴリーに対しては「場違い」な立場で、正直声がかかったときには「なぜ自分なんだろう」と不思議な気持ちでしたが、「あえて畑違いの自分にお笑い番組をやらせることで、何か変革を起こそうと思ったのでは」と勝手に解釈して、自分なりの思いを込めて番組作りに取り組みました。



──いまラジオは、若手芸人が頭角を現す場所として大きな存在になっていると感じます。志田さんは、マイナビラフターナイトにおいてどんな点を大切にしていますか。

空気階段をいち早く発掘 ラジオ番組Pが感じた“ブレイクの予兆”
2020年『マイナビ Laughter Night』第6回チャンピオンLIVEで優勝したオズワルド(写真提供:TBSラジオ)

志田:番組を作る上で明確にしているのは、とにかく若手芸人のみなさんの「チャンスの場」にしよう、ということです。

この番組を通じて、観覧に来たお客さんやリスナーは、知らなかった芸人に出会うことができ、いきなりお笑いライブに行くのは勇気が出ないという人には、気軽にお笑いを見てもらえる。さらに業界の人には、「こんな芸人がいるのか」と知ってもらえる──。
そんな、いろんな立場の人たちにとってきっかけになる番組にしようと思っています。

空気階段をいち早く発掘 ラジオ番組Pが感じた“ブレイクの予兆”
『THE W』に先立ち「女性審判」ネタをいち早く披露していた吉住(写真提供:TBSラジオ)

──ラジオというメディアは、なぜいち早く若手の才能を発掘できるのでしょうか?

志田:べつに「ラジオだから」ということでもないのかなと思っています。制作側としては、ラジオであまりにもわからないネタにだけはならないよう、芸人のみなさんに意識してもらうくらいで、とくにラジオ業界に「若手発掘のプロ」がいるということでもありません。

ただ確かなのは、ラジオリスナーのみなさんが持つ、お笑いに対するアンテナの高さはものすごいということですね。

この番組は、リスナーのオンエア後の投票や、オンエア争奪ライブの観覧時の評価が柱となっていますが、その過程を見ていても「今人気だから」とか「カッコいいから」という理由ではなく、「ガチで面白い」と思うネタが選ばれていることがわかります。

──リスナー、芸人ふくめて「ガチの面白さ」を追い求める空気が生まれているのですね。


志田:リスナーが追い求める「ガチさ」を、ある種芸人のみなさんや、事務所の人たちも理解していただけたからこそ、たくさんのエントリーをしていただけるようになったのではないかと考えています。

メイプル超合金、カミナリ、ニューヨーク、横澤夏子、平野ノラ、ANZEN漫才、ぺこぱ、納言、ぼる塾…… さらっと振り返るだけでも数多くの人気芸人たちが、これまで舞台に上がってくれていました。

いま巷でブレイクしている芸人の、まだまだ初々しい頃の姿を数多く見ることができるのが、マイナビラフターナイトという番組の大きな魅力です。

「第二の空気階段」誕生の瞬間に立ち会うチャンピオン大会は観覧・配信で参加可能

──10月16日に開催される『マイナビ Laughter Night』第7回チャンピオンLIVEの内容について教えてください。

志田:このたび開催のライブには、2020年10月から2021年9月までの月間チャンピオンが出場します。

空気階段をいち早く発掘 ラジオ番組Pが感じた“ブレイクの予兆”

出場者は、スーパーニュウニュウ、ナイチンゲールダンス、シシガシラ、キュウ、ママタルト、令和ロマン、TCクラクション、そいつどいつ、サスペンダーズ、金の国、演芸おんせんの11組(※9月チャンピオンは、新型コロナウイルスの影響によるライブ中止のため不在)。観客投票で優勝した芸人には、TBSラジオで冠特番を放送する権利が与えられます。


MCを務めるのは、南海キャンディーズ山里亮太さん。ゲストには昨年のチャンピオン、オズワルドが登場します。

今年も、会場での観覧かオンラインライブ配信を選べる「選択可能チケット」と、配信のみの「ライブ配信チケット」の2種類を発売しています。

──最後に読者のみなさんへ、マイナビラフターナイトの“見どころ”をお願いします。

志田:「狙い撃ち」で好きな芸人を見るのも楽しいですが、マイナビラフターナイトでは、予想外の芸人に出会ったときの「鳥肌が立つような瞬間」に立ち会うことができます。チャンピオン大会では、その後すぐにブレイクする可能性を秘めた芸人が数多く集まります。「第二の空気階段」になるかもしれない、サクセスストーリーの“最初の瞬間”に、ぜひ立ち会っていただければうれしいです。

さらに毎月、昼夜の2部にわけて行われるオンエア争奪ライブもあります。コロナ禍で例年よりも少なめではありますが、各部ともに約20組ものネタを無料で見られるチャンスは、なかなかありません。ぜひ、ふらっと「ながら聴き」でもいいですし、「争奪ライブ」も注目してみてください!

イベント概要

TBSラジオ『マイナビLaughter Night』第7回チャンピオンLIVE
日時:2021年10月16日(土)開演16:00
会場:有楽町よみうりホール
料金:「客席観覧/ライブ配信選択可能チケット」4000円、「ライブ配信チケット」2000円
チケットぴあで発売中

<出演者>
MC:山里亮太(南海キャンディーズ)、若林有子(TBSアナウンサー)
ゲスト:オズワルド
出場芸人:スーパーニュウニュウ、ナイチンゲールダンス、シシガシラ、キュウ、ママタルト、令和ロマン、TCクラクション、そいつどいつ、サスペンダーズ、金の国、演芸おんせん

公式サイト:『マイナビ Laughter Night』


Writer

天谷窓大


ライター・構成作家。エンタメ媒体で芸能人インタビューを多数行うほか、音声配信アプリを主戦場にラジオ番組の企画構成を手掛ける。焼き芋アンバサダー・熱波師としての顔も。著書に「サラリーマンは早朝旅行をしよう!平日朝からとことん遊ぶ『エクストリーム出社』」(日本エクストリーム出社協会名義、SB新書)

関連サイト
@amayan