さくら学院公開授業「歌の考古学~2014年度~」1限目@TFTホール500レポート 2015.MAR.14  さくら学院の今年度最後の公開授業が3月14日に東京・有明のTFTホール500で行われた。3度目の授業となる人気の「歌の考古学」の授業で、生徒たちはどんな曲を選びどんなプレゼン、そして歌を披露するのか? まずは1時限目の模様からレポートする。
さくら学院公開授業「歌の考古学~2014年度~」2限目@TFTホール500レポート 2015.MAR.14 14時から始まった1時限目。生徒は水野由結田口華磯野莉音大賀咲希、岡田愛の5人。担任の森ハヤシ先生は「1年の締めくくりに相応しい授業。五感を研ぎ澄ましてじっくり楽しんでください」と父兄たちにメッセージ。  ここで生徒たちの登場。水野は「9月の公開授業で、マツ毛が1本伸び続けてると言ったけど、この前とうとう抜けちゃったので今日は何か悪いことが起こりそう」と笑わせた。
田口は「今日の授業は最近では一番緊張してるけど、何があっても楽しみたいし、父兄さんにも一番楽しかったと思われるよう頑張ります」と気合いが入っていた。磯野は「今日、森先生がやっとミルクレープを差し入れてくれました」と嬉しそう。  大賀は「せーの、グッド!」「オーガニング!」とようやく自己紹介がバッチリ決まって拍手をもらう。「今の咲希の気持ちを皆さんに届けて、後輩のお手本にもなりたい」と成長したコメント。岡田は「さくら学院で一番歌唱力に問題があるので心配」と笑わせた。  そして本日の講師役である、さくら学院校長の倉本美津留先生の登場。
「生まれてから十数年しかたってないさくら学院の生徒たちに、生まれる前の素晴らしい音楽を知ってもらいたい、自分たちで発掘することによって知らなかった歌の素晴らしさを知ってもらいたい」と授業の趣旨を説明し、歌の素晴らしさをプレゼンした後、アカペラで歌うと授業の流れを説明した。  「歌の考古学」の授業初体験の岡田は「息してる? 顔が堅いよ」と森先生にツッコまれ、「だって緊張しちゃって~」と声を上ずらせた。そして早速プレゼンの開始。トップバッターは大賀ということで、「最初に爆弾があるわけですね」と森先生。緊迫した空気の中、発表が始まった。 ●大賀咲希 ZARD『Forever you』作詞・坂井泉水/作曲・織田哲郎 「1995年3月に発売されたZARDの6枚目のアルバムのタイトル曲です。
シングルカットはされていません……」と発表を始めた大賀。普段とは違った真剣な口調での発表に、客席にもピンとした空気が張り詰める。 「歌詞の世界に共感できる曲を探しました。曲を探すのに悩んでいたとき、お母さんが家にあったZARDの6枚のアルバムを持ってきて勧めてくれた。1枚目から順番に聞いて、6枚目のアルバムのこの曲に出会ったとき、咲希が今歌うのはこの歌しかないという思いが強く芽生え、その後の曲は聞く気持ちになりませんでした」と、真剣な中にも大賀らしい、クスリと笑わせる表現もあって会場を盛り上げる。 「咲希にはいつか、たくさんの人の心に届く歌を歌いたいという夢があります。
この歌を聴いたとき、10年後の咲希がこの歌を歌っている情景が浮かんできました。10年後にはこんな歌を歌えるように成長していたい。歌詞の中で坂井さんが懐かしんでいる昔が、15歳の今の咲希に重なって、この歌を歌おうと思いました」と続ける大賀。  そしてあらかじめ書いてきた「10年後の咲希へ」の手紙を朗読。25歳の未来の大賀に宛てた手紙は、夢に向かって真っ直ぐ進む今の大賀の純粋さ、真剣さがあふれ、周囲で支えてくれる人たちへの感謝の思いに満ちている。  アカペラで歌い始める大賀。
力強く、心の内を丁寧に込めて歌う姿は、いつもより大きく感じる。倉本校長は「未来の自分へのメッセージが面白かった」と評し、森先生は「好奇心が強くていろんな周囲の人や家族に迷惑ばかりかけていたって歌詞が大賀にピッタリあてはまる」と爆笑させた。  緊張が解けた大賀は、次の岡田に「いつも努力してるメグなら絶対できる」と上から目線のアドバイスで笑わせた。水野は「10年後の咲希を見たくなった」と感想をもらした。 次ページは、磯野が同期・田口に伝えたい気持ちとは岡田、初めての歌の考古学は、自分の体験を照らし合わせて発表 ●岡田愛 中島みゆき『空と君のあいだに』作詞/作曲・中島みゆき  94年発売のシングル曲で、安達祐実主演のドラマ『家なき子』の主題歌として有名。岡田は「ママが小中学生のころ、聴いていた歌手から探しました。
中島みゆきがいいんじゃない? と勧められて。テレビ番組で懐かしのドラマベスト30とかの企画でよく出てました」と可愛らしいイラストでプレゼンを進める。 そして歌詞の「君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた」を取りだし、突如「さくら学院に転入したメグを泣かせたあいつの正体」を発表し始める岡田(笑)。その一『ベリシュビッッ』の「勇気出してほら~」のとこの振り付け。その二、寒すぎた茨城県でのMV撮影とエピソードを披露して沸かせた。  そして、レッスンがつらくて、くじけそうな岡田を心配して新幹線で上京途中の両親にさくら学院の職員室の先生から電話があり、「今メグはすごく頑張ってます。でも一杯一杯の今お母さんに優しい言葉をかけられたら、メグはもう戻ってこないかも知れない。だからわざと突き放してほしい」と母親にお願いしたという話を後日母から聞かされた岡田は、「あの時悔しくて悔しくて、でも乗り越えられたから、メグは今も父兄さんの前にいます」と、歌詞の「君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる」に重ね合わせて語った。  そんな岡田のアカペラ。甘さのある清々しい色気が既に感じられる声質。発声や音程はまだ荒削りだけど、サビを感情込めて歌う部分などは、将来性が感じられる。倉本校長は、「歌詞に自分の体験を重ね合わせて自分をリンクさせていったのはよかった」と褒めた。中島みゆきの歌をもっと聴いてみたいと語る岡田に倉本校長は「その年でちょっと早いかも。あまりのめり込まないように」と釘を刺して笑わせた。田口は「一生懸命なところが可愛いな」と感想を述べた。 ●磯野莉音 TOM★CAT『TOUGH BOY』作詞/作曲・TOM  1984年にデビュー曲「ふられ気分でRock'n' Roll」でブレイクしたTOM★CATの87年発表の6枚目のシングル。アニメ『北斗の拳2』の主題歌として知られ、新日本プロレスのオカダ・カズチカが初期のころ、入場曲として使用していた。  磯野は今回、「誰に何を伝えるか」という視点でこの曲を選んだという。曲名を発表すると場内からはどよめきが。知る人ぞ知る曲である本作を磯野が選んだ理由とは。オカダ・カズチカと言えば、田口華。磯野は「華とは同期で感謝とかいろいろ伝えたいけど、直接言うのは照れくさいので、この曲に乗せて伝えたい」と語った。  続けて「莉音が転入したときは小等部5年がひとりだけ。自分は誰に心を開けばいいのかわからなかったとき、6年の最愛と由結と華が、この4人は呼び捨てで呼び合おうって言ってくれて、この3人になら心を開けると思っていろいろ相談してきた。華は背中で努力を見せてくれる人。自分も頑張らなきゃと思えたきっかけになった人です」とプレゼン。客席からは感動した空気が伝わってくる。そして、今回歌う2番の歌詞「拳を握りしめ僕らは出会った」が、田口と磯野を連想させることがお気に入りとアピールした。  アカペラを披露するに当たって小道具を用意したと磯野。TOMばりのサングラスをかけ場内を沸かせる。「誰かに似てません?」と問いかける磯野に大賀は「白Aさん?」と笑わせるが、磯野は「違う、最近の流行の……」とヒントを出すが、8.6秒バズーカーの名前が出てこない父兄たちに、磯野は「これがジェネレーションギャップ?」と痛恨の言葉を浴びせて爆笑を誘った。  アカペラで歌う磯野の歌声は、実に可愛らしくリズミカルな乗りが心地よい。北斗の拳やプロレス入場曲の雰囲気とはひと味違った仕上がりだが、田口をはじめとする卒業生に気持ちは伝わったのではないだろうか。  感想を求められた田口は「莉音は毎年笑顔で卒業生を送り出して、莉音は強いなって……」と言うと堪えられずに涙をこぼす。森先生「えー!? 早くない?」と言えば、磯野は「こんなアップテンポの曲で?」と続け笑わせる。「この流れで次、田口の出番だけど大丈夫?」と心配顔。田口は「大丈夫じゃないです」と泣き声だ(笑)。磯野はそれよりも、サングラスがタモリに似てるのか8.6秒バズーカーに似てるのかが気になるようだ(笑)。 次ページは、いよいよ中3の2人が最後の発表へ田口と水野が卒業を前に、それぞれの想いを歌に乗せる ●田口華 山口百恵『いい日旅立ち』作詞/作曲・谷村新司  磯野に泣かされて緊張感が多少解けた田口(笑)。「今年も田口はプロレス関係の歌だろうと思った父兄さん、残念でした」と切り出した。虎姫一座の舞台を見て昭和歌謡に目覚めた田口がハマったのが、山口百恵の『プレイバックPart2』。だけど最後の歌の考古学の授業で「馬鹿にしないでよ」はやめた方がいいかなと思って、『いい日旅立ち』にしたと説明する田口。  1978年11月21日に発売された、山口百恵24枚目のシングルは、当時の日本国有鉄道による旅行誘致キャンペーンのキャッチコピーとして使われたが、初めて国鉄を知ったという田口にジェネレーションギャップを感じた父兄たちはドヨドヨ(笑)。  そして田口は作者である谷村新司が、この歌に関して「歌詞をよく見て下さい。この唄は(結婚式や卒業式など)祝いの席に歌うような、いい意味の曲ではありません」と語っていることや、「歌は聴く人の理解の多層を保障すべきもの。歌う側が唯一の回答を準備すべきではない」という言葉が印象に残ったようだ。  歌詞を読みながら、さくら学院の卒業を控える自分の今の気持ちになぞらえた解釈を読む田口。「私を待ってる人がいる」に、「待ってろよ、バカヤロー!」と率直な気持ちをぶつけて笑いを取った。そしてサビでは「いい日旅立ち スーパーレディになるために 母校さくら学院で学んだことを道連れに」と重ね合わせると、場内からはすすり泣きの声が聞こえてきた。「卒業は寂しいけど、いい日旅立ち。私もさくら学院卒業生として、スーパーレディになります!」と高らかに宣言した。  田口のアカペラは、全体的に感情が上手くこめられていて、しっとりと歌い上げられ、聞く者の胸を打つ歌となった。いつのまにこんな、人の心を揺さぶる歌が歌えるようになったのだろうと、ビックリさせられた。一際大きな拍手が会場を包む。  倉本校長は、凄く伝わったと絶賛。こんなに歌えるとは思わなかったと驚いた様子だ。岡田は森先生に、今の曲、知ってたかと聞かれ「知ってる!」といつもの調子で笑わせた。水野は「え!?」と緊張でそれどころじゃない様子(笑)。「何の歌、歌ってた?」と森先生に聞かれ、一瞬詰まってから「待ってろよバカヤロー!」と答えて爆笑させた。 ●水野由結 シンディ・ローパー『トゥルー・カラーズ』作詞/作曲・トム・ケリー、ビリー・スタインバーグ、シンディ・ローパー  1986年に発表された、シンディ・ローパーの同名のセカンドアルバムからのファーストシングル曲。  今回はさくら学院を卒業する自分にピッタリの曲として、この曲を選んだという水野。「今年度はBABYMETALのYUIMETALとして色々な国に行きました。夏はワールドツアーで夏休みの半分を海外で過ごし、レディー・ガガのサポートやイギリスのメタルフェスで5万人の前でパフォーマンスするなど、普通では考えられない貴重な体験をしました。  TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)に出られなかったのは今も悲しくて申し訳ない気持ちだけど、その反面さくら学院を世界中に広められたし、色々なことを吸収できました。音楽は国境を越えて世界を一つにできること。BABYMETALの歌詞は日本語だから、言葉の意味はわからないはずなのに、海外のファンは興味を持ってくれて、今ではBABYMETALをきっかけに日本語を学んでくれている人もいます。逆に日本のファンで、海外のライヴを見に行ったことがきっかけで海外の友人ができた人もいて、嬉しい気持ちになった。音楽に国境なんてないんだと、身をもって感じることができました。  礼儀正しさなど日本人の良い面にも気づけたし、海外の人が個性を尊重していて、自分の意見をしっかり持ってるのもわかりました。そして海外に行くたび、英語を話してきちんとコミュニケーションしたいと強く感じるので、今は一生懸命英語を勉強しています」と、理路整然としたプレゼンを進める水野。中学生の発表とは思えないレベルで、観客もしんとなって聞き入っている。  というわけで、今回は英語の歌に挑戦しようと決めた水野。大好きなアリアナ・グランデの記事から遡ってシンディ・ローパーを知り、歌詞が一番ぴったりときた「トゥルー・カラーズ」に決めたという。真実の色・個性という意味のタイトル。「周囲に合わせなくてもいいよ、無理しなくてもいいよ」と語りかける歌詞が、水野には勇気をくれる応援歌として響いたという。  水野の歌唱は素直で伸びやかで、意外なほど声量も多い。さくら学院やBABYMETALでの歌唱とはひと味違う、女性らしい強さの感じられる歌声だ。  歌い終えた水野が語る。「卒業を前に将来のことをよく考えるんですけど、スーパーレディってどんな色なんだろうって」。水野はそこで、アルゼンチンの空港で欠航が相次いで騒動になったとき、たまたま居合わせたシンディ・ローパーが、アナウンスのマイクを奪ってミニコンサートを開き、騒ぎを収めたエピソードを引用して、「本当のスーパーレディって、常識にとらわれずどんな困難にも諦めない人なんだろうなって思いました。由結も自分にしかできないことで勇気やパワーを届けられるスーパーレディになりたいと思います」と締めて大きな拍手をもらった。  倉本校長も「水野由結成長したな!」と驚きの表情。磯野は「由結の新しい一面が見れた」と絶賛。倉本校長にさらに褒められると、トマト君の口調で「ありがとうございます」とやって沸かせた。  全員の発表が終わり、田口は「公開授業はいつもあっという間。3年になって特に楽しみになってた。父兄さんに思いが伝わっていればいいけど」と語り、大きな拍手をもらった。水野は「トマトです」と笑わせ、「最近こういうこともやっとできるようになって、公開授業が最近楽しすぎて、時間よ止まれと思うけど最後になっちゃって。最後までやりきれたのも父兄さんのおかげなので、これからも応援よろしくお願いします」と笑いと拍手を浴びた。  最後に森先生は「公開授業では問題児だった水野と田口が、楽しかったと言いながら最後は物真似で挨拶しちゃって、これも成長だと思います」と感想を披露し、「今日はヒマだったので父兄さんたちの方を見てましたけど、みなさんもいい父兄さんになりましたね」と笑わせた。  5人それぞれが目一杯のプレゼントとアカペラを発表してくれた今回の授業。特に中3の2人はプレゼンもアカペラも完成度が高く、卒業に向けていよいよ準備万端だなと感じることができた。2時限目の発表にも大いに期待が持てそうだ。竹崎清アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。