僕はアイドル現場が大好きだけど、具体的に何が楽しいかっていうと、そこにはかなりの割合で「アイドルヲタ」の存在が含まれていると思います。彼ら、彼女らのパワーが独自の熱狂を生んでいるのは間違いないでしょうね。いつも僕は会場後方でメモを取っているけど、実はアイドルだけじゃなくてヲタの人の動きもチェックしているくらいですから。
ヲタってすごいなって本気で感動するのは、たとえば生誕祭のとき。メンバーの誕生日を祝うため、入り口のところで有志が他の観客にサイリウムを配っているわけですよ。「アンコール1曲目のイントロになったら、一斉に点灯させてください」とか言ってね。予期せぬサプライズ演出に号泣するメンバー。「頑張れ~!」と応援する声。高まる会場のボルテージ……もう最高じゃないですか! しかもライブが終わると、人が少なくなった会場では使い終わったサイリウムを回収する有志の姿が。ロックでもスポーツでもお笑いでもいいけど、他ジャンルの応援では絶対にありえないスタイルですよ。本当にすべてが素晴らしすぎる!
ヲタ芸、フリコピ、MIX、ガチ恋口上……。アイドルの応援って、いろんなスタイルがありますよね。
僕の場合、アイドルを観始めた頃はAKB48劇場に通ってたんです。あそこは席に座って応援するシステムですから、他のアイドル現場に行ったとき、少なからずカルチャーショックを受けました。だってヲタ芸を夢中でやっている人なんて、必死すぎてアイドルのステージに背中を向けているんだもん。「なんなの?」って思うじゃないですか。一種、異様な光景ですよ。
でも個人的には、そういうのも全然アリだと思う派。楽しみ方は、それぞれ自由であるべきですからね。最近のアイドル現場は女性ヲタも増えてきたから、可愛い子がアイドルに合わせてフリコピしている姿もよく見かけますよね。すごく微笑ましいなって感じます。だけど一方で同じことを男ヲタがやっていると、「キモい!」とか言われるんですよね。
会場をウォッチングしていて「あれ?」って思うのは、同じグループでも何回か顔を出さないと応援スタイルが変わったりすること。ちょっとしたコールの入れ方とか、今までと微妙に違ったりするんですよ。おそらくそれは、一部のヲタが「このコールを流行らせたい」とか考えて浸透させたんでしょうね。もうこうなると猿山のボス猿が交代したも同然で、反主流派が天下を獲るわけです。トランプの大富豪でいうところの「革命」が起こった状態。
でも、そこで肝心のアイドルが「あの口上、よかったな」とかブログで書いた日には、一気にそれが正義になってしまう。いくらヲタ同士のバトルに勝利したところで、アイドルの意見は絶対ですから。強権発動で前のコールに戻ったりもする。こうやって現場ではヲタ社会の複雑な人間模様が観察できるから、僕はそこも楽しんでいるんです。悪趣味?
僕がヲタの人たちに望むのは、とにかくみんなが仲よくしてほしいということ。ガチ恋の人たちは「俺の嫁」みたいなことをすぐ言い出すけど、そのアイドルは俺の嫁であると同時にみんなの嫁でもあるんですから。いいですか? アイドルは「逆一夫多妻制」なんです。
それとこれは声を大にして言いたいんだけど、アイドルを応援することを辞めないでほしい! 僕、アイドルの応援って青春そのものだと思うんです。人を本気で好きになって、本気で応援する。そこに一切の打算もない。それを辞めちゃうなんて、もったいなさすぎる!
推しの子が辞めたのなら他のメンバーを推せばいいし、グループ自体が解散しても妹分グループを推せばいいだけでね。アイドルはやがて卒業するかもだけど、あなたの青春まで卒業させる必要はないんだから。
(『月刊エンタメ』2019年4月号掲載)
クロちゃんの「このアイドルに注目だしん!」
海女さんアイドル WHiTE BEACH

歌って、踊って、拾って、潜れるアイドル。僕が出ている番組に自薦で来たんですけど、すごくピュアな子たちでした。リアルに海女さんに憧れていて、船舶か何かの免許を取ろうとしているんです。そもそも『あまちゃん』ブームが終わってから何年も経つのに、今これをやるかっていう衝撃。まさに「じぇじぇじぇ!」ですよ。毎年7月に開催される「白浜海女まつり」というフェスが、彼女たちの晴れ舞台。
クロちゃん
お笑いトリオ安田大サーカスの一員。1976年12月10日生まれ。 広島県出身。大のアイドル好きで、忙しい合間をぬって アイドルライブへと足を運ぶ。