【前編はこちら】矢吹奈子が大粒の涙で卒業発表、HKT48は“過渡期”から“歴史の大転換点”へと激変
【写真】矢吹奈子が卒業発表したHKT48のコンサート
まだ加入して半年足らずの6期生たちの活躍が目立ったHKT48の11周年記念コンサート『未来へのメッセージ』。それと同時にすでに卒業を発表していて、これが首都圏でのラストコンサートとなるメンバーが5人もいた。
この卒業ラッシュを異常事態のように伝えるニュースも結構あって、たしかに傍目から見たらそうなるんだな、と痛感したが、それはこれまでの11年間で他のグループとは比較にならないほど高い定着率を誇ってきた、という大前提をナシにした場合の印象ということになるのだろう。けっして異常事態ではないし、昨年の10周年記念公演からの1年間でゆるやかに、それでいてしっかりと体制が変わっていく様をリアルタイムで見ていた者としては、そこまでびっくりするような展開でもない。
コンサートを前に本村碧唯の取材をしたとき、彼女を中心に年内の卒業が決まっている下野由貴、坂口理子らが参加して6期生と一緒にレッスンをしている、という話を聞いた。たしかに1期生、2期生がみんな卒業してしまうと初期の楽曲のオリジナルメンバーは誰もいなくなってしまう。その前に6期生に細かいポイントを伝承していく……そんな話を聞いていたので夜の部で6期生が『スキ!スキ!スキップ!』と披露したときは、あぁ、このパフォーマンスには1期生と2期生の原点が注入されているんだな、と思うとグッときた。1期生最後のひとりになってしまった本村碧唯は、これからのHKT48のキーを握る重要な人物である。
そしてアンコールのあと、その本村碧唯が登場し、久々となるクラス替えをアナウンスした。今回はかなり大規模なもので、2023年2月からチームHとチームKIVの2チーム制に移行。
さぁ、ここから新しい第一歩、というタイミングで矢吹奈子がマイクを握り、HKT48からの卒業を発表した。
前述したクラス替えでもチームHの一員として名前を連ねていたため、観客にとっても、メンバーにとってもまさかの発表となってしまったが、どうやら彼女の卒業は来年2月の新チーム始動より後になるようで、新体制の立ち上げに関わり、再出発を見とどけるまではチームHの矢吹奈子、ということになる。
そういえばコンサート中に『12秒』のイントロで「よ!」という掛け声を発する権利を争うゲームがあり、矢吹奈子はその権利を武田智加に譲渡した(この日のアンコールで早くもバトンタッチ)。あまりにもお遊び色が強いコーナーだったので、そのときにはなんとも思わなかったのだが、ゲームに敗れた矢吹奈子がまったく抵抗することなく、あっさりと明け渡す姿にはちょっぴり違和感を覚えていた。まさか、それが卒業発表の伏線だったとは……とにもかくにも突然の発表だった。
いつまでもフレッシュメンバーのイメージがある3期生だが、今年の11月で9周年を迎え、いよいよ10年目に突入する。卒業するメンバーが出てきても不思議ではないし、事実、外薗葉月が12月に卒業する。センターを張るよりも舞台裏を変えていきたい、と彼女が熱望していたのも、ひょっとしたら新世代へ最高の形でHKT48を託すためだったのかもしれない。
ランドセルを背負ってHKT48に加入した女の子が、9年経って、HKT48の主役となり、大きなステージで卒業を発表する。アイドルの物語としては理想的ともいえるし、なによりも印象に残ったのは泣きながらファンに挨拶する矢吹奈子を見守る田中美久の表情だった。一緒に大泣きするのでは? と思っていたのだが、慈母のようなやさしい表情で静かに遠くから見つめていた。
HKT48が前回、幕張メッセでコンサートをおこなったのは8年前のこと。まだ加入したばかりの矢吹奈子はそのステージで同期たちと『覚えてください』を歌った。時代はめぐり、この日の昼の部では6期生たちが『覚えてください』を元気いっぱいにパフォーマンスした。この運命の交錯がのちに大きなドラマとして語り継がれるようになるかどうかは、これからの6期生の活躍ぶりにかかっている。
矢吹奈子は来年の春をメドに卒業する。
その前にはHKT48のメンバーとして最後のシングルがリリースされ、卒業コンサートも予定されているという。卒業後は本格的に女優として活動していくとのことなので、HKT48からの卒業=アイドルからも卒業、ということになる。あと半年間、アイドルとしてのラストランに注視していきたい。
1期生、2期生の卒業と6期生の躍進がクロスしたことで「過渡期」に突入したかのように思われたHKT48は、矢吹奈子の卒業発表で激動の半年間に放りこまれることとなった。11月には福岡で2本のコンサートが開催されるが、さらに来春には矢吹奈子の卒業コンサートという大舞台が追加されることとなった。この半年間でHKT48はどう変わり、誰が飛び出してくるのか? 未来へのメッセージはまだ誰にも解読できないし、半年間でもいくらでも明るい光に変えていくことができるのだ。