SKE48須田亜香里が11月1日をもってグループを卒業する。「握手会の女王」としてファンと共にAKB48総選挙を勝ち上がり“神7”入りを果たし、近年ではソロでバラエティ番組でも活躍していた。
明るい笑顔がトレードマークの彼女だが、同じグループで活動したメンバーからはまた別の顔も見えてくるという。今年4月に卒業するまで約8年にわたってともにSKE48で活動したグループOGの大場美奈に、「隣で見た須田亜香里の姿」を特別寄稿してもらった。

【写真】卒業コンサートで歌う須田亜香里【11点】

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皆さんは須田亜香里と聞いたら何を思い浮かべますか?

テレビやステージでの彼女を見ている人たちからは「神対応」「明るい」「元気」「笑顔」「愛嬌」そんな言葉が出てくるのかなと思う。だが私はそのどれも当てはまらない。

私が思い浮かべるのは「正義感に溢れている、でも、か弱くて繊細な女の子」である。メンバーとして出会い、同じグループで過ごしてきたからこそ近くで見てきた「SKE48の須田亜香里」の姿について綴っていこうと思う。


デビュー日も同じく、年齢も近いながら、お互い近すぎず、遠すぎずな距離感で関わっ てきた。現場での須田亜香里は“ストイック“な部分が他のメンバーより多く感じられた。私語のしすぎで準備が遅れるなんてことはないし、他人のペースに流されず、あくまで自分のペースで仕事に臨める人だった。

SKE48界隈ではお馴染みの“MV撮影で号泣“や“歌番組で可愛く映れなくて泣く“なんてエピソードもストイックさ故なのかと思う。見慣れてない人たちは驚くだろうが、私たちはもはや泣く前兆が分かる程になっていた。赤ちゃんが泣き始める時とそっくりなのだ。


明らかに落ち込んでメイク直しに向かい、口がへの字になり、そしてそのまま泣く。もはやここまで素直なことが可愛い。メンバー、メイクさん、マネージャーさん、スタッフさん、総出で「可愛いよ」と励ます。だがそれに納得することはできず、でもみんなの優しさに立ち直り、本番に向かう。この姿が、一番ファンの人に見せてあげたいと思うほどに可愛い。

こんな平和な可愛い涙を流すこともあれば、悔しい涙もたくさん見てきた。
メンバーやスタッフの入れ替わりが激しいグループ故に、当時の振付を知ってるメンバーがそれこそ須田亜香里を含めて数名になった頃だった。毎回のレッスンで、だーすーはメンバーに細かく振りを教えていた。ソロ仕事も常に忙しい状況の中で、我々メンバーのチェックもしつつとなると相当な疲労に繋がる。かといってそこを妥協できないのがだーすーだ。

そんな時、レッスン中に、あるメンバーとだーすーでちょっとした認識のズレが生じたことがあった。どちらも一生懸命取り組んでいたが、認識の違いで問題が起きた。
そしてあるメンバーが泣き始めてしまい、他のメンバーたちが必然的に慰めに向かった。そうなると構図的には良く見えない。そしてその場面をだーすーも目撃してしまった。

少し経って私の元にだーすーが来て思いの丈を伝えているうちにポロポロと涙を流し始めた。正しいことをしているはずなのになぜか伝わらないもどかしさや、あの時どうしたらよかったのかという悔しさを聞いた。そして涙を流すだーすーを見て気付かされた。
認識のズレをそのままにした周りの私たちも悪かったと。二人だけに任せず、介入することもこの時は必要だったのではないか? それに気づき、申し訳なくなりだーすーに謝った。

だーすーはレッスンの時によく細かく確認ごとをするタイプだった。これくらい自分で後で練習すればどうにかなるかな、と思うことでも全員できちんと確認する。普通にできるようなことを全体の動きを止めて確認するというのは申し訳なさが勝ってしまいなかなかできない。でも、だーすーは「必要だと思うことはやった方がいい。
やらないで問題が起きた方が迷惑になる」 と常日頃から私たちに教えてくれていた。

あのときも、その教え通り、徹底的に確認するように促せばよかった。私は関係ないし、という気持ちがどこかにあったのかもしれない。全員で確認すれば防げたことだったとも思う。いつもそういう確認はだーすーがしてくれるからと、甘えていたのかもしれない。それはメンバーの私たちもだし、ダンス講師もマネージャーも。

それをきっかけにメンバーもスタッフも意識を改めようと話し合った。 大きなグループともなると、メンバーみんなに意見を伝えることはとても労力のいることである。 でも、だーすーはそれをどんな時も諦めなかった。だから私たちも積極的にやっていこうと。そのおかげでSKE48は大きなコンサートのタイミングで全体で意識の共有ができるようになった。

メンバーとスタッフ、みんながだーすーから学ぶことは多かった。

そしてだーすーはグループのために積極的に運営に話を聞きにいくようにもなった。「どういう意図があってこの仕事をするのか」「今回の戦略はどう考えているのか」など……。メディアに毎日出演しているだーすーが、そんな姿を見せるのはグループにとってとてもプラスなことだったと思う。

私とだーすーがグループについて話す関係になったのはSKE48が新会社に所属した頃だった。新しいSKE48になるために運営はどんなことを考えていて、それに対してメンバーはどうしたらいいのか気になっていた。グッズのデザインやライブのセットリスト、MCについて、まずは自分たちが理解していないと表に発信できない。自分たちが思っていることだけではなく、後輩メンバーが感じていること、自分がファンだったら疑問に思うこともぶつけたい。そんな意識が共通していた。

一度だーすーに声をかけられ、二人で一緒に話を聞きに行ったことがある。その時は涙ながらにメンバー側の意見を伝えるだーすーの姿を見て私も涙ぐんだ。あれだけの多忙なのに、グループのことを深く考えている姿に感動した。

これまでもいろんな涙を流してきただーすー。明るい笑顔がトレードマークの彼女だが、メンバー側からすると、見てきた姿は笑顔と涙、半々ぐらいなのではと思ったりもする。

涙の話が多くはなったが、普段裏ではめちゃくちゃいじられている存在だ。そして意外と後輩にいじられている。あと意外とこれって本人に言っちゃダメかな? みたいな話も笑いに変えて話せる人でもある。代表的なのは「『美しい稲妻』の番手問題」だ。

AKB48とSKE48、兼任し始めた私が5番手でだーすーが12番手で、MV撮影中にだーすーが「なんであかりが12番手なの!?」と泣きながら怒ったことがあった。その時は気まずくて話のネタになんてできなかったが、月日が経ち、だーすーが確実に実力をつけて登ってきたからこそ、そのエピソードも生かされるのではと思いライブのMCで話すと大爆笑だった。

本人だけではない。須田亜香里ファンもこの話を100%受け止めてくれる確信があった。寛大な人たちが多い印象だったからだ。きっと「あかりんらしいなぁ」とか「うちのあかりんがすいません」って言ってくれる姿が想像できた。そして実際にその通りだった。須田亜香里とファンの間ってきっと私たちには計り知れない想いのやりとりがあって、固く頑丈に結ばれているのだろうなぁと思う。

握手会レーンを隣で長いことやってきたが、須田亜香里の握手術だけは盗めなかった。聞き耳を立ててみた事ももちろんあるがそう簡単には解き明かせなかった。きっとあのレーンに並んで真っ正面から須田亜香里を体感しないと感じられない魔性の列なのかなと思う。

改めて思うがこれほどまでに喜怒哀楽がたくさん出るアイドルという存在もなかなかいないと思う。そして何よりこれほどまでにグループを愛している存在がいたというのはとっても大きい。

つい最近会った後輩メンバーが「須田さんみたいにはっきりしっかり言ってくれる存在がいるだけでグループの空気感が違う」と言っていた。時には厳しい先輩ではあるが、それがグループのまとまりの象徴にもなっていたのだ。そしてそれを今の後輩たちはしっかりと感じ取っている。大変だったこともあるかもしれないが、それら全てが繋がって後輩たちに伝わっているということだ。

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本当、お疲れ様。あと少し怒涛のラストスパート楽しんでね。 思い出を振り返ってて思ったけど、私、意外と“須田亜香里“の面倒見てきた方だと思うわ。結構大変だった気もする。でもそんな人ほど愛おしいし可愛いのよね。だから最後の卒業コンサートでみんなに愛されてる姿を見て自然と泣けたわ。幸せな時間に溢れてて、今まで我武者羅に頑張ってる姿見てきたから、本当によかったねと心から安心したわ。

だーすーが考えることって私が思い付かないことで面白くて個人的にすごく好き。多分、私とだーすーって性格が真逆なんだろうね。そして意外と私よりも世間知らずなこともあったりするから普通に心配。だからご飯行って、これから何したいのか、最近のことだったり、普通の話がしたいな。30代の友として、ね。

(文/大場美奈)

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