7月5日~7日に富士急ハイランドにて開催される欅共和国2019。開催まで1週間をきり期待は高まるばかりだが、そのカウントダウン企画として、5月9日~11日に日本武道館で開催された欅坂46「3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE」を振り返った対談を特別公開する。
ほぼノンストップで繰り広げられたパフォーマンスの舞台裏を、欅坂46のダンス力を支える齋藤冬優花佐藤詩織の2人が語る。(『月刊エンタメ』7月号掲載)
──日本武道館でのアニバーサリーライブはほぼノンストップのセットリストで、体力的にかなり大変なものだったと思います。

齋藤 確かに疲労はあったんですけど、いつもだったら燃え尽きてしまうのに、今回は意外とそうでもなくて。むしろ自分の中で「どうなるんだろう?」って考えることが多くて。いつもならライブの動画を見返す気力もないぐらいだったのに今回は真剣に動画を観て、「ここはもっとこうできたかな?」とか考える心の余裕があったので、いつもと違った感じでした。

──何が違ったんでしょうね?

齋藤 二期生も入って一緒にライブを作るようになって、グループの雰囲気も変わってきた部分もあるし、自分たち自身もこれから欅坂46がどうなっていくんだろうっていう未知の部分を感じていたので、そういったところが大きかったのかなと思います。

──佐藤さんは3日間を終えて、いかがでしたか?

佐藤 大阪のセトリは明るめの曲がメインで、終わったあとも「あれ、まだ行けるぞ?」みたいな感じだったんですけど、今回は2日目に朝起きたら首から下の力が入らないぐらいになっちゃって(笑)。でも、メッセージ性の強い楽曲の側面を見せられるセトリであり、1つの劇みたいな構成だったので個人的にはうれしくて。そういうライブを欅坂46でずっとやりたいなと思っていたので、今まで以上に「やってやるぞ!」っていう気持ちを持って頑張りました。

──でも、そこを乗り越えられたのも3年の積み重ねあってこそですものね。では、日本武道館という会場についてはどうですか? 欅坂46は2018年1月に日本武道館単独公演が中止となっており、メンバーやファンにとっても念願の場所かと思います。

齋藤 私は正直、会場にそこまでこだわりがなくて。
どこに立ちたいというよりも、いかに曲を伝えられるかっていうところが大事だと思っているんです。確かにファンの方から「武道館に立ってほしい」と言って頂けたこともあったし、昨年1月に立てなかったことに自分もちょっと情けないと感じてもいたし。たとえどんな会場でも自分たちのマックスというか、最大限の欅坂46を見せなくちゃいけないという思いでした。

佐藤 まず日本武道館ってすごく由緒ある場所じゃないですか。そういう場所に立てるのは、欅坂46にいるからこそだと思うので本当にありがたく感じていて。あと、武道館の天井にある日本国旗を見たときにちょっと鳥肌が立って、「ここに欅坂46を刻んでやるぞ」と思いました(笑)。

──では、そんな日本を代表する会場で実際にライブをした感想を教えてください。

齋藤 最後まで全員で出られるといいなと願っていたんですけど、実際にやってみて体力的にも精神的にも強くなったのかなと感じることも多くて。特に自分がうれしかったのは、スタッフさんに「曲の中でペース配分をちゃんと考えてやってね」と言われた中で、「本気なのでどこでそうしたらいいか分からない」って言うメンバーが多かったこと。それって、みんなが曲を大事にしている証なのかなと思って。そういう言葉を聞けてうれしかったですし、自分も「みんなが頑張っているからもっと頑張ろう」って思えました。

佐藤 でも私は、通し稽古のときに自分の体力がなさすぎるって感じました(苦笑)。
そのときはレッスン着で、水も普通に飲める状況なのに結構つらくて。だけど、二期生の子たちは大阪公演が終わったあとにおもてなし会をやっていて、それが終わってこっちに来て、すごく疲れているはずなのに一生懸命やっている。その姿を見て「自分もやらなくちゃ!」って感化されたので、すごくありがたかったです。

──二期生の存在はかなり大きそうですね。

齋藤 そうですね、だいぶ変わったかなと思います。だんだんと卒業生が増えて、パフォーマンスする人数も減っていき、最初は自分たちだけで何とか頑張るぞと思っていたんですけど、それにも限界があって。人数が減ってしまったことで、最初に表現していたものがだんだん伝わりにくくなってしまっていたのかもしれないです。そこに二期生が加わったことで作品がちゃんと伝わる人数に増えたんです。やっぱりパフォーマンスは人数が多ければ多いほどいろんなことに挑戦ができるし、やれることの幅も広がるので完成度が高くなると思いました。それに二期生一人ひとりがすごく強い思いを持っているので、一緒に踊っていて刺激を受けることも多いんです。リハーサルの休憩中も一生懸命練習をしている姿とか。

佐藤 あと、癒しの存在でもあるんです。
本番が終わると、疲れを残さないためにアイスバスに足を入れているんですけど、それに武元(唯衣)ちゃんも付き合ってくれて。そのときもキャピキャピというか、すごく元気だし明るいし癒されるんですよ。

齋藤 うん。癒しだよね、二期生は。本当に可愛い(笑)。

──お2人は、ライブ中盤に披露された影絵パフォーマンスにも参加していました。楽曲のリハーサルに加え、さらに影絵の練習もあって、とても大変だったと思いますが、あれにはどういうテーマが込められているんですか?

佐藤 影絵の次の曲が『キミガイナイ』だったんですけど、『キミガイナイ』の歌詞に沿って主人公が“キミ”がいない世界で葛藤している様を描いていて。その前に『二人セゾン』を披露していて、そこから『キミガイナイ』につないでいくので、まず最初に影絵で木を作ったんです。

──『二人セゾン』の最後の木になる振付けにつながっていると。

佐藤 と、私は解釈しています。そこから、主人公の“僕”が“キミ”の存在である森の妖精に出会って、ちょっと心を動かされるけどある日パッと消えてしまう。キミがいない世界……自由の女神とかタージマハルとかピラミッドとかいろんなものを作ったんですけど、世界中を巡って探したけどどこにもいなくて。
キミがいない世界は悲しいという、そういう曲につながるストーリーでした。

──なるほど。あのパフォーマンスは影絵の角度など自分ではどう見えているのかが分かりにくいと思いますが、何を指針に完成を目指していったんですか?

齋藤 平手(友梨奈)が本番前のリハーサルでみんなを集めて、「影絵で全身を使ったパフォーマンスをやることで、アイドルだってこんなことができるんだってことを私は証明したい」と伝えてくれて。だから、本当に自分ができるところまで、みんな自分の見え方とかも気にせずに励みました。“僕”を演じる平手と森の妖精を演じるしーちゃん(佐藤)以外はみんな髪を結んで水泳帽に全部入れて、上も下も体のラインが分かるピターッとした、言ったら全身タイツみたいな服を着て。アイドルになって自分がこんな格好をするとは思わなかったけど(笑)、そんなことよりも完成度の高い作品を作りあげたいという気持ちが強かったから、みんな一丸になれたのかなと思います。

──ステージ上ではシルエットだけなので、表情も見えない。となると、佐藤さんが森の妖精を演じる際に意識することも普段のパフォーマンスとは違ったのかなと思います。

佐藤 目標とするお手本の映像があったんですけど、表情も見えない影絵なのに感動するんですよ。影一色なのに何でこんなに心を動かされるんだろうって。それと同じぐらいと言ったらあれだけど、自分たちができるところまで感動させられるものを届けたいなっていう思いは強かったです。平手が男の子役で私が女の子役だったので、2人で「どうしたらより男の子に見えて、より女の子に見えるんだろう?」って相談もしました。
例えば手の運び方とか、ちょっと顎を上げるだけでも女の人って分かるかなとか。

──欅坂46は言葉だけじゃなくてパフォーマンスでも何かを伝えることを重視してきたグループだと思うので、3周年を記念するライブでこういった表現にトライしたことに感動を覚えました。そこに二期生が加わったこともあり、個人的にはこの先が楽しみになるライブだったと思います。

佐藤 でも私、あんまりこの先のことが想像つかなくて(苦笑)。欅坂46はずっと、この先どうなるんだろうって常に思っているし、とりあえずこのライブを終えられたけど、これから何が待ち受けているんだろうって気持ちがいつも大きいです。

齋藤 1年後どころか、1カ月後にどうなっているかも想像つかないし。でも、それも楽しさじゃないけど、どうなるんだろうっていうワクワクもあります。

──今回のライブには卒業を発表した長濱ねるさんも参加しましたが、もしかしたらこの武道館公演が長濱さんと一緒にパフォーマンスする最後の機会だったかもしれないです。そういう点でも感じるものがあったんじゃないでしょうか?

齋藤 本人にも伝えたんですけど、ライブ中に同じステージに立つからこそ見えるメンバーの姿というのがあって。私的には『二人セゾン』でねると(渡邉)理佐とぺーちゃん(渡辺梨加)が前に出てくるところが好きで。その前に私としーちゃんと鈴本(美愉)と(守屋)茜の4人で歌うんですけど、いつも3人が後ろで待機しているんですよ。で、その3人が歌っているときに私たちは後ろを通って、いつも3人の様子を見ていたんです。
その真ん中で歌っているねるの姿をもう見られなくなるのかなと思うと、やっぱり悲しさもありました。

──なるほど、それはメンバーならではのシチュエーションですね。

齋藤 はい。あと、これも本人に言っていたんですけど、ねるって結構、力を使って支えるポジションが多いんですよ(笑)。例えば『アンビバレント』では側転する平手を支えて、『キミガイナイ』でもぺーちゃんを担いでいたり、『手を繋いで帰ろうか』で倒れてくるメンバーを受け取ったりと、本当にみんな重要なポジションばかりなんです。それもねるがいなくなったら「これからどうしていくんだろうな?」とか考えたし、今回のライブでそういうねるの姿を見られるのが最後かもしれないと思ったら、やっぱり寂しかったですね。

──佐藤さんはいかがですか?

佐藤 『危なっかしい計画』の2サビのあとに、上手と下手のメンバーが交差して、また1列を作るところがあるんです。そこでねるが真ん中に1人残っているので、移動するときにいつもねるが見えるんですよ。今回のライブでそのねるを見て、感極まるというか……本当に欅坂46にとってすごく大きな存在で、ずっと頑張ってきてくれたメンバーなので、そういう姿を思い出したら、やっぱり悲しいなって。

──この1年の成長を見せる場であると同時に、様々な意味での節目のライブでもあったのかもしれませんね。

佐藤 特に今回、一期生はみんなオリジナルのフォーメーションの位置にいて、卒業した子たちのポジションに二期生が入ってくれたんです。それこそ自分が3年前にこのポジションでどういう気持ちで踊っていたかとか、いろんな思いがよみがえってきて感慨深かったです。

齋藤 実は今まで作ってきた21人のフォーメーションじゃなくて、全曲を今いる全員でやるという話も上がっていたんですけど、やっぱり最初に作った人数で伝えるのが一番じゃないかっていうことに決まって。それに、1列目の子も2列目の子も3列目の子もみんな、自分のポジションに誇りを持っていると思うんです。今回のライブでこのフォーメーションをできたのが本当にうれしかったです。
▽齋藤冬優花(さいとう・ふゆか)
1998年2月15日生まれ、東京都出身。O型。157センチ。一期生。ニックネームは「ふーちゃん」。メンバーを優しくも強く支える欅坂46の大黒柱。二期生メンバーからも慕われており、松田里奈とは仲がいい。

▽佐藤詩織(さとう・しおり)
1996年11月16日生まれ、東京都出身。A型。161センチ。一期生。ニックネームは「さとし」。幅広い表現力の持ち主で『黒い羊』のMVでの演技が話題に。クールかと思いきや、笑いのツボも浅く、常に笑顔が絶えない。
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