先月23日に発売された書籍『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)。
自身もSDN48のメンバーとして活動していた経験を持つ大木亜希子が、AKB48グループ8人の卒業生にインタビューしたこの本がSNSで話題になっている。この本を48グループの卒業生が読むとどんな感想を持つのか……。現役時代、自身の薄毛をネタにする破天荒キャラで親しまれ、先月2日にSKE48を卒業したばかりの松村香織に本の感想を寄稿してもらった。元AKB48が読んだ元AKB48本ーー。
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Twitterでこの本の感想やネットニュースの記事がツイートで流れてきて、ずっと気になっていた一冊でした。アイドルをやめた後みんなはどうしているんだろう。何をしているんだろう。

仲の良い卒業生とは近況を話したりお互い相談したりもします。もちろん情報も入ってくるけれど、姉妹グループを含めての48グループでは、あまり接点もないまま卒業していくメンバーが沢山いるのでその後を知ることはほとんどありません。

そして私もつい最近9年間活動してきたSKE48を卒業したからなおさら気になるのです。今は事務所には所属せずフリーで活動しています。アイドルと同じ芸能界という場所で活動している以上、今回の本で取り上げているアイドルのセカンドキャリアには、私は当てはまらないかもしれません。


でもこの本を読んで一人ひとりに物語りがあって、アイドルのその後の人生を知ることができました。一人ひとりのエピソード全て魅力的でしたが、特に興味深かったのはやはり同じグループで活動してきた3人についてです。

すーちゃん(佐藤すみれ)はTwitterでお仕事を拝見しているから、ポップアップショップを出したり、パフェやスイーツを監修している様子を見ていて、自分の好きなことを仕事にしていてすごく充実しているなって思っていました。本を読んでみても実際充実している様子をうかがえて納得。でもSKE48に来る以前のエピソードはほとんど知らなかったことなので、びっくりしたことが多かった。

そして研究生として一緒に活動してきた藤本美月ちゃんと菅なな子ちゃん。この二人の当時の心境だったり状況を知って卒業を決意した本当の気持ちを知ることが出来て良かったです。2人とも卒業するにあたりグループ的にも惜しまれていたし、今このタイミングで辞めてしまうのかと少し不思議に思うこともあったので。

当時、深く理由を聞いたりはしなかったけれど、ちゃんと次の人生を考えて決めていたんだと分かりました。

卒業から1カ月、元SKE48松村香織が読んだ『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』

佐藤すみれ(クリエイター・元AKB48/SKE48)

菅なな子ちゃんは「もしSKE48に入らず普通の高校生として地道に勉強していたら、中だるみして名古屋大学に入ることはなかったですね」と語り、「アイドルの時に、私も自分自身の価値を人に見つけてもらって救われたので」と広告代理店を希望就職先に選びますが、私の場合もSKE48に入ったからこそ出会えた人もいるし巡り合ったこともたくさんあります。SKE48に入ってなかったら今の競馬のお仕事に出会えてなかったと思うので、本当にきっかけはどこにあるか分からないなって思います。

藤本美月ちゃんはもう一つの夢、保育士を目指してSKE48を卒業しますが、その時、スタッフさんが美月ちゃんの夢を理解し背中を押してくれます。
私の場合、最初に卒業を考えた時、スタッフさんに「今じゃない」と言っていただき、考え直すきっかけになりました。卒業を考えた時、仲のいいメンバーやスタッフさんに相談することは多いと思います。相談された方は本人の意志を尊重することが多いですが、やはり本人の口から卒業の話を聞くのは悲しいですね。

もちろんこの3人以外にもアイドルとして活動していた期間にいろんな出会いや人間模様があって、アイドルの自分としての分岐点が見えた時に、だからグループからの卒業を決めたのか!と一人ひとりの決断に納得することが出来ました。だからこそそれぞれが次の舞台で今、輝けているのかと納得し、自分への刺激にもなりました。

私は今年の5月2日に29歳3ヶ月でSKE48を卒業しました。現役のアイドル時代、「卒業後は具体的にこうなりたい」とセカンドキャリアについて考えることはあまりありませんでした。ただ、ここ3年ぐらいはずっと卒業を意識していました。それはコンサートや普段の生活を通して後輩が育っていくのを感じて、ここでずっと甘い蜜を吸うのはアイドルとしてではなく、自分の成長につながらないのではないかと感じ始めたからです。その頃には怖い先輩もいなければ怒られることもなくなっていたからです。

卒業してから今、ちょうど1ヶ月経ちました。事務所には所属せずに一度、自分だけでチャレンジしてみようと思っていたので、今まではもらったこともなかった名刺を積極的にもらうことにしました。
卒業したら必ず連絡しますと言って。

卒業から1カ月、元SKE48松村香織が読んだ『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』

菅ななこ(広告代理店社員 元SKE48)/藤本美月(保育士 元SKE48)

在籍中は個人的な名刺をもらうことは禁止されていたし、そもそもタレントに渡されることはほとんどなくて、取材や撮影に同行しているマネージャーさんが名刺交換をしていました。だから「名刺ください」て言うとだいたいびっくりされたけれど、これから1人でやる自分としてはその名刺は何かキッカケが生まれるかもしれないチャンスの塊なので、絶対にもらいたかったんです。

そうやって集めた名刺に改めて卒業のご挨拶と名古屋から都内に拠点を移して活動していくことの報告メールを送りました。返信してくれる方が大半ですが、返信が返ってこない方ももちろんいて。現役時代に距離が近いと自分で思っていた方から返信が返って来なかったりしたのは、ちょっと傷つきました(笑)。自分の文章が響かなかったわけだし、もっと工夫しなければと反省。SKE48に入る前に務めていたキャバクラ時代の営業メールをふと思い出したりしました(笑)。なんかちょっと似てるなと。

でも同時にこれがビジネスというものなんだと思いました。今まではマネージャーさんやスタッフさんがやってくれていた先方とのメールでのやり取り、スケジュール管理、打ち合わせ、請求書などを全部1人でやっていますがとても楽しいです。ギャラ交渉も本人が直接するわけですから、先方もきっとやりづらいだろうなと感じることもあるけれどそれも含めて楽しんでいます。
それらすべてをやることが大変で、1人では回らなくなり、誰かスタッフさんを雇わなきゃと思う日が来たら、それはフリーランスとして1つの成功なのかもしれません。

私の元アイドルとしての人生は始まったばかりです。元アイドルというのが邪魔をしたり十字架になったりする日がもしかしたら私にもやってくるのかな?(ほぼ無いと思うけれど)

今はSKE48に入ったことを後悔していないし、このグループに出会えて本当に良かったと心から言えます。この先グループにどんなことがあってもここで活動出来たことを誇りに思いますしその思いは変わらない自信があります。

そしていつか私の話も数年後に大木さんに文章にしてほしいなって思いました。恥ずかしながら普段本をあまり読まない私ですが、今回このような機会を頂いて読んでみましたが、とっても読みやすくて一人ひとりの人生が分かりやすく表現されていて、すらすら読むことが出来ました。ぜひみなさんも読んでみて下さいね。

▽松村香織
1990年1月17日生まれ、埼玉県出身。2009年にSKE48 第3期オーディションに合格。Google+の動画番組で当確を現し、2012年にはAKB48の「ぐぐたす選抜」に選ばれる。自身の薄毛やメイド喫茶勤務の過去をネタにする破天荒キャラで人気に。2013年にはソロ曲『マツムラブ!』、須田亜香里とのユニット曲『ここで一発』を発表。
2015年の総選挙では13位にランクインし初のAKB48シングル選抜メンバーとなる。2019年5月2日にSKE48を卒業。以降は芸能事務所に所属せずフリーとして活動している。Twitter:@kaotan_0117
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