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70分ではなく30分を2本にわける、という選択肢もあったと思う。しかし、分割しないことで緊張感を持ち、没入しながら『刀鍛冶の里編』の行く末を見届けることができる。18日の夜は最高に贅沢な時間を過ごせるはずだ。
『鬼滅の刃』シリーズは、これまでも30分という一般的な放送時間の枠からはみ出すケースが珍しくない。2期の『遊郭編』の第1話は1時間、最終回は45分に拡大している。第1話は『無限列車編』のその後が描かれており、命を燃やして炭治郎達を守った煉獄杏寿郎という人物がメインの話。各話30分の2話にわけると杏寿郎への気持ちの高まりは区切られてしまう。しかし、30分にまとめると駆け足になる。1時間にしたことで、杏寿郎が抱えた葛藤、その勇敢さをしっかり感じられる内容になっていた。
また、最終回は、上弦の陸の妓夫太郎と堕姫を打ち取ったところから始まる。戦闘シーンはなく妓夫太郎と堕姫の兄妹の過去が軸で、正直派手さはない。
このエピソードも45分にしたことで、妓夫太郎と堕姫という“人間”を理解でき、『鬼滅の刃』シリーズに一貫して見られる「罪人はいるけど悪人はいない」というメッセージを感じられるものとなった。
『鬼滅の刃』だけではなく、現在放送中のテレビアニメ『推しの子』の1話は90分という映画並の長さ。その長さだけでなく、作画の素晴らしさも大きな話題を呼ぶ要因となった。さらに、ストーリーは雨宮吾郎が殺された後にアクアに転生して、ラストではアイが殺害される、という目まぐるしいもの。
ただ、90分だったことでその展開感や疾走感を楽しめる内容であり、だからこそラストでアイが殺害されるシーンの衝撃度は高かった。30分を3話に分ける内容であれば、3話まで辛抱強く視聴してくれる人は少なく、アイ殺害のインパクトも弱まり、ここまでの注目作になっていなかった可能性もある。
やはり毎話30分という決められた枠で制作していては、作品の面白さを100%表現できないように感じる。実際、Netflixやアマゾンプライムなどで配信されているドラマは各話で時間が異なるケースは珍しくない。話題の韓国ドラマも、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』や『サンクチュアリ -聖域-』といった日本ドラマも毎話の尺はバラバラ。
例えば、全8話の『サンクチュアリ -聖域-』は7話は64分、8話は31分とその幅がとても大きい。しかし、同作を見た人であればわかってもらえると思うが、7話は64分、8話は31分がベストだった。
こういった自由度の高さが、話題作が動画配信サービスから生まれやすい要因になっていないか。実際、『鬼滅の刃』や『推しの子』は毎話配信後、すぐさまランキング上位に入り、国内にとどまらずに海外のファンも獲得している。
日本動画協会は調査結果によると、日本アニメの市場は2020年に国内市場(1兆1867億円)を海外市場(1兆2394億円)が超えた。海外市場の上昇は著しく2010年(2867億円)の約5倍で、右肩上がりは続きそうだ。テレビ放送を前提としているため、各話で尺を変えることは難しい。それでも今後は国外を意識して、尺の長さ、さらには11~12話の一般的な話数など、従来のパターンを変える必要もあるのではないか。
『鬼滅の刃』や『推しの子』のように、尺の自由度が高まれば、今以上に面白いアニメは増えるだろう。加えて、日本が誇るアニメ文化を海外の人達に今以上に注目してもらえるかもしれない。
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