【写真】デビュー前の松田聖子の歌声が収められた実際のデモテープ
「キャンディーズは1972~1978年に活動していましたが、当時はピンクレディーの人気が凄まじく、どうしても勝てなかった。マネジメント側もなんとか売り出そうと策を講じており、その中でメンバーカラーを割り振るようになりました。メンバーカラーもそうですが、キャンディーズは今では当たり前の“センター”も導入した最初のアイドルグループです。当時は誰が真ん中で歌おうがあまり気にされてなかったのですが、圧倒的に人気のあった伊藤蘭さんをセンターに据え、メンバーカラーを赤にすることでプロモーションを図りました」
メンバーカラーを取り入れた背景については「正確なことはわかりませんが、目立つ赤色を担当した伊藤さんをセンターに据えているので、1975年から1977年に放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』の影響を受けたのかもしれません」と予想。
また、キャンディーズは現在のアイドル文化の基盤を作ったアイドルグループだったと振り返り、「センターやメンバーカラーをはじめ、今では当たり前の“曲間コール”や“ファンクラブ”などはキャンディーズが最初と言われています。キャンディーズの“スーちゃん”こと田中好子さんの葬式で秋元康さんは『キャンディーズがいなければ、おニャン子クラブもAKB48もなかった』という旨の発言をしていることからもわかる通り、その影響力は凄まじいです」と語った。
赤色は明るい、青色はクールというように性格から色を決めているのだろうか。メンバーカラーの割り振り方として、「もちろん性格も要因と考えられます。加えて、色白の人は白い衣装が、色黒の人は蛍光色が映えるように、ビジュアルの影響も大きいです」としつつ、「事務所がプッシュしたい人を赤色のような目立つ色に割り振って青色や黄色などは脇役に、というケースも珍しくありません」という。
次にメンバーカラー制のメリットを聞くと、「まずファン目線で言えば、ライブ中に推しを見つけやすい」と説明する。
「また、“同担拒否(同推し拒否)”の人もいるため、メンバーカラー制であれば誰を推しているのかがわかりやすく、ファン同士の余計なトラブルが生まれにくい。一方、同じ色のTシャツやタオルなんかを持っている他のファンを見つけることで、シンパシーが生まれたりコミュニケーションのキッカケにもなったりします。ちなみに、“推しを見つけやすい”は裏を返せば、アイドル側も“ファンを見つけやすい”というメリットにもなります。しかし、それは“ファンがいかに少ないか”という事実を突きつけることにもなり、アイドルはモチベーションの低下につながる、というリスクも含んでいることを忘れてはいけません」
さらには、事務所目線でのメリットとして、「グッズを売りやすくなります。例えば、サイリウムもメンバーカラー制が無ければ一色しか売れません。メンバーカラーがあれば複数のサイリウムが売れます。同じデザインのTシャツでも色を変えて販売できるため、事務所としてはありがたいです」と解説した。メリットデメリットは表裏一体ではあるが、それでもメリットが多いことから、今では一般化したのだろう。
カラーを割り振ることのメリットはわかった。しかし、どのアイドルグループもメンバーカラー制を導入すると、アイドルグループ間で没個性化してしまわないだろうか。植田氏は「メンバーカラー制は運営もファンも望んでいるため、今後はメンバーカラー制を前提としたうえで個性を発揮する必要があるでしょう」と話す。
とはいえ、メンバーカラー制をあらゆるアイドルグループが導入すれば、アイドルに興味のない人からすればあまり違いがわからない。
「松田聖子やモーニング娘。など一昔前は誰もが知るアイドルが存在しました。その理由はテレビや雑誌などメディアが限られており、誰もが知るアイドル以外のアイドルを知る術がなかったことが大きい。ですが、今ではメディア自体が多様化して、自分自身の推しを探せるようになりました。やはり人間は押し付けられることを嫌います。マスメディアがプッシュした情報しか知り得なかった時代に戻りたいと思っている人は少ないのではないでしょうか」
メンバーカラー制が前提となった現在のアイドル戦国時代の中で、どういった個性を発揮するアイドルグループが登場するのか今後も楽しみにしたい。
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