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ドラマの原案は、「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。全8話からなる本作は、入念なリサーチに基づき、3つの異なる視点から事故を克明にとらえた重層的なドラマ。「あの日、あの場所で何があったのか」を、政府、会社組織、そして原発所内で事故に対峙する者たち、それぞれの視点から描いた実話に基づく物語。
企画・脚本・プロデュースは、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズなど大ヒット作を手掛ける一方、『白い巨塔』、『はだしのゲン』といった骨太な社会派ドラマを世に送り出してきた増本淳。『コード・ブルー』シリーズの監督として増本と長年タッグを組んできた西浦正記と、『リング』シリーズの中田秀夫がダブル監督を務める。
世界配信開始後、日本を始めとする77の国と地域でTOP10入りを果たし、その後も3週連続でTOP10入りをキープし続け、3週目には世界4位に順位を上げた。
会見では、日本外国特派員協会会員向けに第1話、第3話が試写上映された後、主演の役所とプロデューサーの増本が登場。先日行われたカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した、世界の役所がスーツ姿で登壇すると会場は大きな拍手で包まれた。役所と増本は、以下の海外メディアからの熱い質問の数々に丁寧に応えた後、最後は笑顔でフォトセッションに応じた。
<海外メディアからの質疑応答>
Q.4年の構想を経ての公開となったそうだが、このドラマを作ることになった経緯は? 被災地へのボランティアにも行ったそうで、その経験がきっかけになったのか?
増本 地震から一か月後くらいにボランティアに行き、惨状を目の当たりにした。その時すぐにドラマにしようと思いついたわけではなく、月日が経って、何か震災と関われることを考えたとき、果たすべき役割を問い続けた結果としてこの作品が生まれた。
Q.これまで多くの実在する英雄を演じられてきたと思うが、なかでも今回の吉田所長は非日常的な状況におかれた普通の男性。
役所 吉田所長のことは知っていたし、音声などはSNSで聞いていたから、表面的にはイメージはもっていた。今回、原作と脚本があり、この作品における吉田所長というのは、撮影現場に行って、現場の職員たち、東電本店、永田町とのやりとりを演じながら、その心中を自分の中に落とし込んでいった。
今回は歴史上の人物として演じるには、事後の経過も短く、観客も生々しさが残る中での演技。エンターテイメントしすぎない、演じすぎないようにと役者全員が、おそらくこんな気持ちで苦しんだのではないかと、ドキュメンタリーに近い方法で作り上げていった気がする。
Q.ドキュメンタリーのような気持ちで演じたとのことだったが、ドラマ的要素を感じた。ハリウッドのティザスタームービーにも近いし、『シン・ゴジラ』的な演出要素もあった。こういった出来事を作品にすることで、事故のトラウマを乗り越えるときにどういった役割を果たすか?
増本 乗り越えるための役割ということには明確な答えはない。これを観てトラウマを乗り越えるというより、12年経って忘れかけている、当時子どもだったから知らなかった人たちに事故を知ってもらい、傷ついた人たちの助けになるかどうかは分からないが、少しでも手助けになればと考えて作った。
役所さんが先ほどされたドキュメンタリーに近いという話については、観る人に「このシーンは感動的」だとか「これは英雄譚」といった感情の押し付けをしないように作っていったという部分だと思う。ドラマ的な部分は、若い人、興味がない人が視聴を脱落しないよう、エンターテイメントとして見てもらうための手法を使った。
Q.同じ原案で作られた作品は渡辺謙主演『Fukushima 50』に続く2作目。映画の後に更に同じ原作で改めて撮ろうとした経緯、理由を教えてほしい。
増本 大前提として、新しく作ろうとしたのではなく、映画と同時期に撮り始めだが、8時間の映像が必要で、コロナ禍があり、撮影が一年半中断した。この前提で述べる。
映画は残った69人の作業員の英雄的行動を作品にした。我々は、『THE DAYS』と銘打っているように、原発で起こった“あの日々”を描きたかった。残った人たちだけではなく、官邸、東電、ニュースを見た人々など、思想を排除して多角的に描こうとした。いろんな視点で、描く出来事も多いため8時間のドラマというスタイルを選んだ。
Q.門田さんに取材し、『Fukushima 50』も観た。どの作品でも、この数日間、ひとつ決断を間違えば大変な事態になる状況を描いている。12年たった今でもあの原発事故の影響は残っている状況。プロジェクトを終えた今、原発についてどのような考えをもっているか。
増本 難しい問題だから簡単には答えられない。原発の是非を問う前に、皆さんに関心を持ってもらうべきだと考えて作った。
役所 もちろん地震や津波があって事故が起こったりと、原発は怖いもの。それは皆さんわかっていると思うし、それ以外で電力が手に入る方が良いに決まっている。この出来事をエンターテインメントとして描いていいのかという不安はあった。
増本プロデューサーの、あの時、あの場所で何が起こっていたのかを伝えていかなきゃいけないのではないか、また、この後の過程も描いていきたいという強い思いを聞き、これは第一シーズンに参加したいと思った。
エネルギーについては、誰もが考えていかなければいけないことで、原発については国民が答えを出さなければいけないことだと思っているので、この『THE DAYS』という作品を見て考えるきっかけになっていけば。
Q.配信で楽しむ文化が広がっているが、日本のドラマの在り方にどんな影響を与えたか。
増本 リサーチしてないので分からないが、なぜ作るのか、日本人が作る意味を考えるようになった。これまでは日本人に向けていたが、Netflixなどによって、世界に伝えたいメッセージかどうかを真剣に考えるようになった。『THE DAYS』は、我々日本人の手で作り、最後まで責任を持って向き合いたいというメッセージを伝えたいと考えて作った。
役所 この作品は、まず地上波のドラマでは内容的に100%通らないと思う。内容を伝えるための自由度も高い配信は有効だ。増本プロデューサーはそういう思いもあり、フジテレビを退職して第一作目として地上波ではできないこのドラマを作ったのだと思う。配信の浸透によって、我々の表現の場は広がったと思っている。
Q.このような作品が問題を知るきっかけとなった。増本さんにシーズン2の構想を聞きたい。
役所 この出来事を描き続けるには、増本さんが生きている間には表現できないドラマになると思っています。そのために世界中で観ていただいて、今後も描いていけるようにみなさんのお力をお借りしたい。自分が演じた吉田所長は、残念ながら存命ではないが、自分が演じられる役があれば出たい。
増本 役所広司さんは吉田さんが亡くなっているとお話されたが、エピソードゼロの可能性もあるから、ぜひオファーしたいと思っている。
今もまだ福島第一原発の事故は全く終息していない。最終話でも語ったように、数百トンあるデブリはまだ排除されず、まだ何万人もの人たちが家に帰れていない。
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