【写真】日本上陸したラーム・チャラン主演『ランガスタラム』場面写真
〇ストーリー
1980年代半ばのアーンドラ・プラデーシュ州中部、ゴーダーヴァリ川沿岸の田園地帯、ランガスタラム村。チッティ・バーブ(ラーム・チャラン)は、モーターを使って田畑に水を送り込むことを生業にする労働者。難聴で、他人の声がよく聞き取れない障碍を持っているが、さほど気にせずに毎日を楽しく暮らしている。彼は近所に住むラーマラクシュミ(サマンタ)に惚れて、調子はずれな求愛をする。
一方、村は「プレジデント」を自称する金貸し兼地主のブーパティ(ジャガパティ・バーブ)によって牛耳られている。チッティ・バーブの兄で中東ドバイで働いているクマール・バーブ(アーディ・ピニシェッティ)は、プレジデントが好き放題にする故郷の村の有様を帰省した際に見て心を痛め、州会議員ダクシナ・ムールティ(プラカーシュ・ラージ)の力添えで、村長選挙に立候補して政治家として村の生活を改善していこうと思い立つ。
〇おすすめポイント
『RRR』で日本でも人気爆発中のラーム・チャランの役者人生の中で転換点といわれる作品『ランガスタラム』がついに日本公開される。
プレジデントと呼ばれる地主によって独裁的支配下におかれたランガスタラム村を舞台に、難聴をかかえるチッティが奮闘する物語で、前半は比較的コミカルなタッチで描かれるが、後半は血生臭いバイオレンス映画へとトーンが変化する。そんなコメディとシリアスの絶妙なバランスも見所のひとつだ。
本作はラーム・チャランの転換点といわれる一方で、実はヒロインのラーマラクシュミを演じるサマンタにとっても転換点といえる作品だ。
普段はやり過ぎなほどに誇張された演技をしているが、この作品を境にシリアスな演技が多くなったサマンタ。同年に公開された、カンナダ映画『危険なUターン』(2016)のテルグリメイク『U Turn』ではスリラーヒロインの座も確立した。
近年はドラマシリーズなどでも活躍しており、『ファミリー・マン』のシーズン2では悲しい運命のテロリスト役を演じたほか、『シダテル』のスピンオフ『シダテル:インディア』でも主要キャラクターを演じる予定だ。
また音楽の視点からは、ポップスからテクノ、ロックまで幅広い音楽ジャンルを使いこなすテルグ映画音楽界のカリスマ、デーヴィ・シュリー・プラサードが今作の音楽を担当していることに注目してもらいたい。
舞台である80年代、そして地域性を活かしたドメスティックなサウンドは、デーヴィの才能を再認識するのだが、他にも『RRR』の「ナートゥ・ナートゥ」のラーフル・シップルガンジやヴィジャイ、ラミシュタ・マンダナ主演映画『Varisu』(2023)の「Rajithame」のヒットも記憶に新しいM.M.マーナシーといった、南インドではお馴染みのアーティスト、プレイバックシンガーも多数参加しており、サウンドトラックも魅力的な作品だ。
〇作品情報
原題:Rangasthalam
2018年/インド/テルグ語/シネスコ/5.1ch/174分
映倫申請中(インドでの区分はPG12相当)
字幕:加藤 豊
配給:SPACEBOX
(C)Mythri Movie Makers
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