先日、世界最大級のオーディオブック&音声コンテンツ配信サービスのAmazon オーディブルが、2023年に最も聴かれた人気作品ランキングを発表した。ポッドキャスト部門では、『佐藤と若林の3600』が第1位に。
続く第2位が『放送室チャンネル』、第3位は『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』という結果となった。

『佐藤と若林の3600』は、今年3月、「ポッドキャストアワード」の大賞も受賞した、どきどきキャンプ佐藤満春オードリー若林正恭によるトークポッドキャスト番組。『放送室チャンネル』は、ダウンタウン松本人志と放送作家の高須光聖による伝説的ラジオ番組『放送室』を初めてデジタル配信したもの。TOKYO FMとJFN系列で放送されていた人気番組の復刻に多くのファンが歓喜した。

そして、『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』は、現在もTBSラジオで放送中の宮藤官九郎がパーソナリティを務める人気番組のポッドキャスト版。このように、芸人ラジオや人気ラジオ番組のアーカイブ的なものが上位を独占した形だ。


近年のラジオ人気にも引っ張られて、ポッドキャスト番組を楽しむ人が増えている。朝日新聞とオトナルの調査結果によると、日本国内のポッドキャスト利用率は15.7%と増加傾向にあり、中でも、いわゆるZ世代では、28.1%もの人が利用しているそうだ。

ラジオ番組同様に、移動中やいわゆる"ながら聴き"のエンタメコンテンツとして楽しんでいる人、リラクゼーションコンテンツを求める人、英会話など教養コンテンツで学習している人など、楽しみ方は人それぞれ。そして、そうした多様なニーズに応えるポッドキャストコンテンツが続々と誕生している。

今回は、ほんの一部のダイジェスト的な紹介にはなるが、人気のポッドキャスト番組をいくつかピックアップしてみたい。まずは、「ラジオ番組派生型」の典型、TBSラジオのポッドキャスト番組『OVER THE SUN』だ。


2020年10月に配信がスタートし、毎週金曜17時に更新中のこの番組は、コラムニストのジェーン・スーとフリーアナウンサーの堀井美香がパーソナリティを務めるトーク番組。推し活、離婚、閉経、VIO脱毛、中高年の恋愛…といった切り込んだテーマも取り上げ、2人が自由に、かつ、軽快にトークする姿に多くの女性リスナーが共感。番組では、リスナーを「互助会員」と呼び、番組公式互助会本の出版、グッズ販売、イベント開催など立体的な展開も見せており、来年1月には、東京のLINE CUBE SHIBUYAでの2日間のイベント開催も決定している。

ジェーン・スーには、『生活は踊る』という地上波の人気番組があるとは言え、ポッドキャストの番組イベントがLINE CUBE 2DAYS開催というのは驚きだ。

ちなみに、TBSラジオでは、もうひとつ面白い動きがあるので紹介しておきたい。毎週日曜23:30から放送中の『脳盗』。
ラッパーのTaiTan(Dos Monos)とミュージシャンの玉置周啓(MONO NO AWARE)がパーソナリティを務めるレギュラー番組なのだが、ポッドキャストが、地上波ラジオのアーカイブやスピンオフ的な役割として位置付けられることが多い中、こちらは、完全に逆の発想。

ポッドキャストで大人気番組となった『奇奇怪怪明解事典』が、地上波ラジオ番組の方へと進出して来た異色の番組である。しかも、提供スポンサーも獲得し、番組改編も乗り越え、レギュラー番組として定着して来ている。癖のあるラッパーとミュージシャンによる本音トーク。『脳盗』と『奇奇怪怪明解事典』を聴き比べてみるのも面白そうだ。

もちろん、TBSラジオ以外のラジオ各局もポッドキャストには力を入れているので、各局のホームページなどでチェックして欲しいのだが、昨今、ラジオ局のみならず、様々なメディアも続々とポッドキャストに参入して来ている。
中でも、音楽専門チャンネルのスペースシャワーTVが手掛ける対談番組に注目したい。タイトルは『ハナシはこれから。』。

今年1月にスタートしたこの番組は、毎回アーティストが話したいゲストを指名して対談するという内容。そして、指名されたゲストは、次の回のホストとなり、新たなゲストを招いて対談をしていく…というリレー形式となっている。

スペシャが手掛けるということで、ミュージシャン同士のアツい対談が多い中、GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーとジャルジャル、MOROHAのアフロと俳優の東出昌大といった異業種対談、さらには、松井五郎といしわたり淳治という作詞家対談など、興味深い組み合わせにも注目だ。
こちらの番組は、Spotify限定配信で毎週木曜日に更新されている。

また、異業種対談と言えば、『ぴあ presents クリープハイプ尾崎世界観とラランド ニシダのダブルスタンダード』も今年5月にスタートして、話題を集めた。小説家としての顔も持つ尾崎と読書家のニシダ。意外性もあるが、ある意味、納得の組み合わせと言ってもいいのだろう。こちらは、お笑いラジオアプリGERAで聴くことが出来る。

そして、最後にもうひとつ。
ちょっとシュールというか、謎の番組『たぬきゅんのなかよし放送局』という番組もオススメしたい。元でんぱ組.incの夢眠ねむがプロデュースするミントグリーンのかわいいたぬきのキャラクター"たぬきゅん"によるトーク番組。

たぬきゅんが人気者になるために、色んな大人とお喋りして学んでいくというコンセプトなのだが、ナント、2021年には地上波ラジオにも進出。『太田胃散 presents たぬきゅんのぽんぽん放送局』として、TOKYO FMで放送されたのだ。たぬきゅんがメインパーソナリティとして、ゲストのスチャダラパーのBOSEやファーストサマーウイカとの軽快なトークやおしゃれな曲紹介を展開したかと思えば、太田胃散の生CMや提供クレジットも読む…というとてもシュールな番組だった。

『たぬきゅんのなかよし放送局』の方は、現在更新がストップしているようだが、56ものエピソードが公開されているので、聴けば必ず癖になる!?たぬきゅんのトークに触れてみて欲しい。

さて、今回は、数多あるポッドキャスト番組の中から、ラジオ好きの筆者が注目する番組をいくつか紹介したのだが、最近では「ラジオ好き」に加えて、「ポッドキャスト好き」を公言するリスナーも増えている。ポッドキャストには、ラジオ局のような番組表があるわけではないので、サブスクサービス上での偶然の出会いにも期待できるし、自分でどんどん掘っていって、お気に入りを探しに行くという楽しみ方もある。

大型イベントや大作映画、特番など魅力的なコンテンツ盛り沢山の年末年始に、たまには、1人じっくりとヘッドフォンで音声コンテンツと向き合ってみてはどうだろうか。あなたの知らない世界がそこには待っている…かも知れない。これからは是非ポッドキャストの沼にもどっぷりハマってみて欲しい。

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