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2024年1月から始まった冬ドラマも、いろいろな意味で“攻めまくった”内容の作品が目白押しとなっているので、今からでもチェックすべき注目作を3本取り上げていこう。
■ネット上で激論を巻き起こす『不適切にもほどがある!』
『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、日本のエンタメ界を代表する脚本家・宮藤官九郎と三枚目俳優の雄・阿部サダヲによる「グループ魂」タッグが贈るコメディドラマ。阿部扮する中学校教師の小川市郎が昭和から令和にタイムスリップし、波乱を巻き起こしていくという設定だ。
第1話の冒頭から、一人娘・小川純子(河合優実)を現代ではありえない語彙で罵倒していくという衝撃の幕開けで、その後も“容姿イジリ”を始めとした時代錯誤な言動のオンパレード。学校の教室やバスのなかで喫煙したり、野球部の練習中に水を飲むことを禁じたりと、いかにも昭和的な行動を見せつけていく。極めつけは、短めのスカートを履いた令和の女子高生に「痴漢してくださいって言ってるようなもんだぜ」と言い放ち、ドン引きされるシーンだろう。
視聴者への配慮として、「この作品には、不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが、時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み、1986年当時の表現をあえて使用して放送します」というテロップが冒頭に掲げられるのだが、同じ文言が中盤でふたたび表示されるユーモラスな演出も話題を呼んだ。
“昭和のおやじ”のデリカシーのなさをコミカルに描く一方、コンプラや多様性を重視する令和の価値観をぶった斬るような側面もあり、どんな方向に転がっていくのか分からないスリルが同作ならではの魅力と言える。しかし「昭和を持ち上げて令和を風刺することが目的のドラマなのではないか……」と警戒する視聴者も多いようだ。また第3話では、セクハラ問題をめぐる展開があり、SNS上で激論を巻き起こすきっかけとなっていた。
とはいえ、宮藤自身は『週刊文春』で連載中のエッセイ「いまなんつった?」にて、あくまで「認識のズレ」を描こうとするドラマであり、昭和おやじの主張を真理だとする意図はないと語っている。NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』などで日本の近現代と向き合ってきた脚本家でもあるので、その筆にはたしかなバランス感覚が宿っているはずだ。
■不倫疑惑を逆手にとった配役に驚き『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』
キャスティングの意外性という点で注目が集まっているのは、『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)だ。同作は妻に不倫されて離婚を決意した主人公・岡谷渉(伊藤淳史)が、男親には困難とされる娘の親権を得るべく、あの手この手で証拠を掴むために奮闘する物語となっている。
そこで衝撃を呼んだのが、渉の妻・岡谷綾香役に元「AKB48」篠田麻里子が抜擢されていたことだった。2022年末から2023年にかけて不倫疑惑が報じられたばかりの篠田が、まさかの不倫妻を演じることとなったのだ。しかも“元アイドル”というそのものズバリの設定であることも判明し、大きな話題を呼んでいる。
たんなる話題作りでは終わらず、不倫相手役を務める小池徹平との濃厚な濡れ場など、熱の入った演技によって視聴者を魅了しており、いろいろな意味でハマリ役と言えるだろう。そんな彼女の功績か、TVerにおける見逃し配信の再生数は1話から3話までで累計1,000万回を超えるほどの絶好調を記録している。
■日本ドラマ史上初の快挙を達成!『Eye Love You』
『Eye Love You』(TBS系)は、日本の恋愛ドラマに新しい風を取り込む作品になるかもしれない。なにせ同作は第1話から日本のNetflixで「今日のシリーズTOP10」の初登場1位を獲得したばかりか、韓国のNetflixでも「週間TOP10」で4位に入っており、日本ドラマ史上初の快挙と話題を呼んでいる。
そうした好調の要因として挙げられるのが、主人公の恋愛相手として韓国人俳優のチェ・ジョンヒョプを起用した点だろう。ジョンヒョプは2022年に「KBS演技大賞」で新人俳優賞に選ばれており、韓国ドラマ界では次世代のスター候補として有力視されている。
そんなジョンヒョプ扮するユン・テオは韓国人留学生という役柄で、ネイティブな日本語を話せるわけではない。
侑里は目を合わせた人の本音が読めるのだが、テオの心から聞こえてくるのは韓国語。そうした相手に初めて出会ったことをきっかけに、恋へ落ちていくことになる。たんに韓流人気に便乗するのではなく、脚本や設定をしっかり練り込んであるところが同作の魅力と言えるだろう。地上波放送の視聴率では苦戦するスタートとなったものの、配信人気は高いので、口コミ人気が爆発的に広がっていくことを期待できる。
はたして2024年冬ドラマの“覇権”を獲るのは、どの作品なのか。中盤以降の盛り上がりにも注目していきたい。
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